経済協力で地域に貢献

2020-04-09 12:03:29

吉林大学経済学院院長 李暁=文

新型肺炎は今年初めに中国で急速に拡大してから、予想を超える速さで世界中に広がった。初期に感染拡大が起きた中国はすでに情勢を基本的にコントロールしているが、依然として再発や海外から持ち込まれる「2次発生」の危険がある。より深刻なのは欧米諸国の感染拡大の情勢がいまだに頭打ちになっておらず、アフリカなどでも流行が始まっていることだ。

世界恐慌の危機も

感染症のまん延は、もともと成長が鈍化していた世界経済にとって傷口に塩であり、「灰色のサイ(起こる確率が高く、大きな影響を及ぼすが、軽視されがちな問題)」が「ブラックスワン(起こる確率は低いが、市場に大きな影響を与える問題)」に出会ったといえる。典型的な外的ショックとして感染拡大が各国と世界の経済に与えた連鎖的なダメージは未曽有のものだ。米国株式市場では3月9〜18日の10日間でサーキットブレーカーが4回発動され、十数カ国の株式市場や株価指数先物の取引が停止された。市場の激しいパニックに直面し、米連邦準備制度理事会(FRB)は前例のない緊急措置を取り、金利をほぼ0%まで下げ、7000億㌦規模の量的緩和政策(後に無制限に拡大)を打ち出した。また、コマーシャルペーパー(企業が短期資金調達などのために発行する無担保の約束手形)の直接購入など、多様な短期流動性供給プログラムを発動した。さらに3月末、トランプ大統領は2兆㌦規模の経済対策法案に署名した。これらの措置の目的はただ一つ、市場に流動性を直接注入して実体経済を救済することで、金融機関の連鎖的なリスクの発生を防ぐことだ。

世界的な感染拡大と各国の予防・治療(特効薬やワクチンの研究開発、使用など)の具体的な状況に基づき、将来の世界経済の見通しに対して三つの判断を下すことができる。一つ目は、世界的な感染拡大今年の第2四半期のうちに基本的にコントロールできれば、今年の世界経済の成長率は恐らく1〜2%になるということ。二つ目は、仮に世界的な感染拡大が第3四半期まで続けば、世界経済の成長率は通年で1%以下、極端な場合にはマイナス成長になる可能性が非常に高いということ。三つ目は、世界的な感染拡大が来年まで、ひいては相当長く続くのなら、各国は国境封鎖によってグローバルバリューチェーンの断絶を引き起こし、世界経済は長期的な衰退に陥り、1929〜33年を上回る世界恐慌が起きるということ。

通貨協力で金融リスクに対処を

それと同時に、感染拡大後は世界の経済秩序と国際関係に重大な変化が起こる可能性がある。経済のグローバル化のコンセンサスに関して、主な大国間にすでに存在していた亀裂も深まるかもしれない。グローバル化の過程において細分的や多元的な進展が出現する可能性が高く、地域経済協力が改めて台頭あるいは深化していくだろう。さらに、経済の不均衡が世界規模で激化し、世界的な経済連携はもはや国際問題をカバーするには不十分となるだろう。衛生・防疫や行政、社会管理など多くの問題について、主要国間で早急に意思疎通と意見調整を強化しなければならない。

感染拡大を前にし、自分のことだけではなく他人のことも考えなくてはならない。中日両国は東アジア地域の最も重要な両大国として、このような重大な試練に共に遭遇しながらも双方のさらなる協力深化のために条件を整えた。

第一に、マクロ経済の協調と地域経済の一体化の強化だ。「外向型経済」構造の特徴、および共通する経済周期の特徴により、今回の感染拡大は両国の対外貿易、雇用、グローバルサプライチェーンに深刻なダメージを与え、世界的な需要減少や供給途絶などが両国経済の下押し圧力となるだろう。このため、中日両国はマクロ経済の協調を強めるべきだ。これは地域経済の安定と世界経済の成長にとって重要な意義を持つ。同時に、中日韓自由貿易協定(FTA)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の構築プロセスを速め、中国のいっそうの開放拡大傾向に順応し、日本が主導する包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ(CPTPP)に中国を速やかに参加させ、議事日程にも早く載せるべきだ。

第二に、地域的な通貨・金融協力の深化と発展の促進だ。短期的に見ると、米ドルが依然として世界の基軸通貨であり安全資産であるため、コロナショックの下で米ドル指数が急上昇し、国際資本の移動方向とその規模の大変動を引き起こし、多くの新興経済国が資金の流出圧力に直面させられた。長期的に見ると、破格といえるFRBの無制限の量的緩和政策は将来の国際通貨システムに影響を与え、さらに実質的なゼロ金利政策と米ドルの下落、為替レートの変動は、米国債の主な保有国である中国と日本の金融リスクを増大させる。このため、中日両国は多国間で外貨を融通し合う「チェンマイ・イニシアチブ」の枠組みの下で地域的な通貨・金融協力をいっそう拡大し、深化させ、米ドルの流れの急激な変化と為替レートの激しい変動が両国と地域の経済成長にもたらすリスクを防止するべきだ。

衛生・防疫交流で対応能力向上へ

第三に、中日両国間のエネルギー協力の強化だ。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国によるOPECプラス閣僚級会合が3月6日にウィーンで開催されたが、産油制限と価格維持で一致できず、原油価格の暴落を招いた。原油価格下落は表面的に見ると、外部の石油に依存度が高い中日両国の生産コスト削減に有利だが、近年の原油価格の激しい変動は両国の経済発展の外因性リスクを急激に高めてしまっている。このため、中日両国、ひいては東アジア地域がエネルギー協力を展開し、各国の外貨準備を利用した「地域エネルギー協力基金」の創設、および第三国のエネルギー資源共同開発などの方法を利用し、地域のエネルギー供給量と価格の安定を確保することは、疑いなく差し迫った課題となっている。

第四に、両国間の衛生・防疫、行政、社会管理などの分野の交流と協力の強化だ。今回の感染拡大により、これらの分野における国際社会の数多くの限界がさらけ出されたとともに、各国の対処法に優劣はなく、全てその国情に合った選択であることが明らかになった。このため、関連分野で互いに学んで教訓をくみ取ることは、各国の公衆衛生の危機対応能力向上に役立つ。中日両国は隣国で、しかも文化や伝統も似通っており、関連分野での交流と協力をいっそう強めるべきだ。感染拡大が中国で突然発生してから、日本の政府と民間団体は速やかに反応し、さまざまな物資を手配して中国を援助した。支援物資に添えられた「山川異域,風月同天」「豈曰無衣,與子同裳」などの詩句は中国人の心を温めた。続いて日本で感染が拡大してからは、中国の政府と人々も日本に対する支援を積極的に展開した。中日両国はこの分野で全世界に手本を示した。

目下の感染拡大の状況とその影響は、人類にとって未曽有の巨大な試練となる。中日両国はふさわしい態度と努力を示し、協力深化と友好促進を通じ、共に地域経済の安定と発展を促し、世界の調和と安定、発展のためにしかるべき貢献を果たすべきだ。

人民中国インターネット版 2020年4月4日

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