PART3 考古学ブームは若者から

2022-11-23 18:15:39

続昕宇=文 

今月、中国現代考古学が誕生して101周年を迎える。ここ数年、発掘調査によって新たに発見された遺物や遺跡は多くの新しいファンを獲得し、かつてメジャーではなかった「考古学」はますます中国の一般大衆にとって身近なものになっている。考古学に対する中国社会全体の認識の変化によって、中国の考古学は「黄金時代」に入ったという見方もある。 

  

人気上昇中の考古学 

中国で「高考」(大学入試)は一発勝負で人生が決まる試験と見なされ、中国人にとっての一大事だ。そのため、学科選びが当然重要になってくる。AI(人工知能)や機械工学、財務・会計などの学科が依然として人気上位を占めている中、2020年、高考で湖南省文系4位の成績を取った女子高生・鍾芳蓉さんが北京大学考古文博学院に進学したニュースは人々の注目を集めた。 

「考古学は不人気で将来性が見えない上に、高収入にもつながらない」。彼女の選択に対して理解不能という声が多く聞かれたが、これらの疑問に対し、鍾さん本人は、「発掘するたびに新発見があってサプライズがあります。私は考古学科を選んだごく普通の高校生です」と冷静に述べた。 

しかも鍾さんだけでなく、北京大学考古文博学院の沈睿文院長もメディアの取材に対し次のように答えた。「考古学専攻を目指す学生はここ数年明らかに増えており、考古学が本当に好きだという人も増え続けている。中学・高校時代から関連文献や書籍を自ら進んで読む生徒もたくさんいる。若者を中心に巻き起こった考古学ブームは国の重視や支持と無関係ではない。全体的に見ると、現在がまさに中国の考古学の黄金時代だ」 

  

より身近な存在に 

今年の夏休み期間中、筆者の同僚の女性は子どもを連れて新疆ウイグル自治区を旅行し、新疆ウイグル自治区博物館で舞台劇『千年の物語』を鑑賞し、感慨深かったという。「楽舞」「小河公主」など五つの部分からなるこの公演は、舞台劇という方法で、文化財にまつわる逸話を語り、その価値をより直感的に見せてくれる。このような没入型体験は従来の文化財の展示よりも臨場感があって観客の心に刺さり、新疆の歴史と文化の重みを一層感じさせてくれる、と彼女は感想を語っていた。 

実は新疆ウイグル自治区博物館のほか、近年、中国各地の博物館もさまざまな創意工夫をし、AR(拡張現実)や5G通信、3Dモデリングなどのデジタル技術を駆使し、デジタル博物館の没入型体験イベントなどの斬新な展示方法で多くの観客を引き寄せている。例えば、河南博物院は昨年、デジタル考古学イベントを開催し、延べ3000万人を動員した。イベント期間中、ユーザーたちはネット上でハンドショベルやブラシなどの道具を使って発掘の現場作業を疑似体験し、重厚な中国文化を体験した。 

各地の博物館はこのほかにも多種多様な文化クリエーティブ商品を開発し、一般大衆への歩み寄りを見せている。最近、若者を中心に大ヒットの「考古盲盒(ブラインドボックス)」はその代表格の一つだ。考古学が示す「伝統」とブラインドボックスが示す「ファッション」という二つの概念をミックスした「考古盲盒」は、文化財を発見したときのサプライズ感、臨場感、満足感を体験でき、若者の好奇心と求知心をそそり、考古学に対する親近感を高めた。そうして、「考古学ブーム」はさらに盛り上がることとなった。 

  

考古学で民族の自信を向上 

専門分野での考古学人気の上昇にせよ、民間で巻き起こった「考古学ブーム」「文博ブーム」にせよ、いずれも中国人の伝統文化関連消費に対する旺盛な需要と精神文化生活に対する熱望が反映されている。今の中国では、文化財は封印された記憶ではなく、生き生きとした姿で人々の生活に溶け込んでいる。 

今年6月、中国中央テレビが四川省広漢市の「三星堆遺跡」発掘調査の模様を3日連続で特別番組などで生中継し、ネット全体の累計閲覧数と再生数が延べ100億人を超えた。また、ここ数年、浙江省杭州市や河南省安陽市などでは一般市民から発掘調査ボランティアを募集しており、多くの若者たちが積極的に申し込んでいる。このような数字と現象の裏には、中国人、特に若者たちに中華文明の起源と発展を理解しようとする強い欲求があることがうかがえる。 

考古学は過去と現在をつなぎ、未来へと続く。習近平総書記はこう指摘したことがある。中国の100万年の人類史と1万年の文化史は主に考古学の発見によって解き明かされる。文字による記録が誕生した後の文明史でも、考古学的研究による裏付けと充実化が必要だ。歴史文化遺産は過去を生き生きと語っているだけでなく、現在と未来にも深い影響を与え、今を生きる私たちと後世が共有するものだ。それをしっかり守り継承することは歴史に対する責任であり、人民に対する責任でもある。考古学を中国の特色・性格・風格のあるものにする目的は、悠久の歴史を持ち、豊かで奥深い中華文明をより良く認識し、自国の文化に対する自信を揺るぎないものにするためだ。 

あるネットユーザーは「中華文明は歴史が長く、異彩を放つ文化財はその文明遺伝子の受け皿だ」と言っていた。文化財と伝統文化に対する中国人の強い興味を反映している考古学ブームは、自民族文化に対する帰属意識と自信をも表している。 

 

関連文章