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大自然の創造したカルスト地形 石林

雲南省・石林県

高山が谷になり谷が丘になる地殻変動が、3億年前に海の底で繰り返された。残念ながら、先人たちがそれを書き記したものはほとんど残っておらず、石林の不思議な光景が知られるようになるまでには長い歳月を要した。──中国仏教協会元会長・趙朴初

中国南部にはさまざまなカルスト地形がある。主に雲南、貴州、広西、重慶などの省・自治区・直轄市に位置する南方カルストは、総面積5万平方キロに及び、中国全土のカルスト地形の55%を占める。雲南省石林県の剣状、柱状及び塔状のタワーカルスト、貴州省茘波市のカルスト原生林、そして重慶市武隆県の天生橋、地縫(地の裂け目)、天洞に代表される立体カルストは、2007年、世界遺産リストに登録された。

石林形成の4大要素

小石林に位置する石林地区でもっとも有名な景観「阿詩瑪」
雲南石林は、雲南省の省都・昆明市の東南約85キロの石林イ(彝)族自治県に位置する。全自治県1725平方キロの範囲内に、タワーカルストを主とするカルスト地形が1300平方キロにわたって広がっている。中でも、観光資源として開発価値のあるカルスト地形は17カ所、面積350平方キロに及ぶ。

地質専門家によれば、石林が形成されるには4つの偶然が一致しなければならない。第1に、2億5000万年前に海底で形成した石灰岩が、間欠性の連続隆起を経て海から浮かび上がって高原となったこと。第2に、石灰岩が海底で隆起した際、石壁に縦、横向きに網状に生じた割れ目に雨水が浸透することによって一本一本独立した石柱となり、早期の石林を形成したこと。第3に、二畳紀晩期の初期、この一帯に火山の爆発が頻繁にあり、初期の石林が冷却した火山溶岩の玄武岩に覆われたこと。二億二千万年前、二畳紀が終って始まった中生代の1億6000万年という長い歳月において、石林は一貫して玄武岩に覆われながら徐々に隆起し続けた。この過程で玄武岩は侵食されてどんどん薄くなっていったものの、石灰岩が育まれ、保護された。6000万年前、中生代から新生代へ入ると、ほとんどの玄武岩が侵食され、初期の石林が再度地表に露出し新たな成長が始まった。第4に、5000万年前の始新世にヒマラヤ造山運動の影響を受けたことによって、大規模な内陸山間湖が形成され、水の流れが、彫刻刀のように天然の芸術加工を施したこと。高原が隆起するに従って、最終的に石林は今日の面貌が形成された。

さまざまな形状の石林

黒松岩石林内のカルスト地形・溶蝕(侵食)湖の景観
ある程度まとまりがあり、集中して分布している石林の中で、もっとも有名なのは大石林、小石林、乃古石林である。構造から見れば剣状、キノコ状、塔状、柱状、城壁状などのカルストに分けられ、その形は人間のようにも、動物のようにも、大波のようにも、万木の林立する森のようにも見える。

大石林と小石林はまた李子箐石林とも呼ばれる。『路南州志』(石林県はかつて路南州というところに属していた)に記載されている言い伝えがある。昔、ある人が厳しい冬に石林を通る時、はるか遠い石の上に2本のスモモの木を見つけた。鮮やかな赤い実がなっていたが、近くに行っても摘み取ることができない。翌日再び探しても、そのスモモの木は見つからなかったという。まるでスモモの木がそこにあったように見えたことから、李子箐(スモモが生い茂っているという意味)石林と呼ば

落差約90メートル、幅54メートルの大畳水瀑布。中国で落差がもっとも大きな滝で、三番目に大きな川・珠江の最大の滝でもある
れることになった。李子箐石林は面積およそ16平方キロ、石灰岩の峰の間にはめこんだような大小7つの池がある。ここを訪れた観光客は迷宮に入り込んでしまったかのように、様々なカルスト地形を楽しみながら神業のようなすばらしい大自然が作り出した世界を体験する。また、高いところに登れば、山を押しのけ海を覆さんばかりの勢いの岩の波、金城鉄壁のごとく堅固な石峰を俯瞰することができる。

石林地区は大量の古脊椎動物化石が埋蔵されているため、中国の古脊椎動物の化石保護区にも指定されている。また、雲南省で80万年前の旧、新石器遺跡がもっとも豊富な場所の1つでもある。仔細に観察すると、李子箐石林では岩に描かれた絵の断片を眼にすることもある。岩に描かれたこれらの古い壁画には、代々この地に暮らしてきたイ族の一支系・サニ族の祖先たちが、祭祀を行ったり、踊りを楽しんだり、狩りをしたり戦ったりした場面などが反映されている。

イ族と石林の物語

石林地区で生活する、歌も踊りも上手なサニ族の人々

イ族はたくさんの支系をもつ古い民族である。石林県にはサニ、阿細、黒イ、白イ、イ青、干イなどのイ族の支系の人々が暮らしている。サニ族はその中の主要な支系である。石林地区に生活しているイ族の人々は、きらびやかで多彩な文化を創り出した。例えば、サニ族のある青年男女の愛情物語の有名な長篇叙事詩『阿詩瑪』は、英語、ロシア語、日本語など20種以上の言語に翻訳され、世界各地で紹介されている。年に1度の火把節(松明祭り)もまた、多くの観光客を引きつけている。小石林の中心部に位置する「玉鳥池」のほとりに、目立ってそびえ立つ細長い岩がある。大自然に彫り刻まれたこのターバンをかぶってかごを背負った人間の形をした岩は、すらりとしたサニ族の少女の姿と似ているため「阿詩瑪」と呼ばれた。ここが石林地区でもっとも有名な観光所であり、石林のシンボルでもある。

李子箐石林の北20キロの所にある黒松岩石林は、またの名を乃古石林という。「乃古」はサニ族語で「黒」と同じ発音で、この石林地区の岩石が炭酸マグネシウムを含み、主に炭酸カルシウムの含まれている李子箐石林よりも色が黒いためにこう呼ばれる。黒松岩石林は1985年になってようやく開発されたものであるが、明、清の時代にはすでに「石門」「石門峰」と称されていたという文字記録も残っている。実地調査の結果、この石林が形成された時代は李子箐石林よりは早いが、開発時期が遅れたためにより野趣に富んだものになったと地質専門家たちは見ている。

雲南石林は、世界各地で発見された数少ない石林の中でも、その広い面積、独特の形態、複雑な形成原因、長い発育の歴史によって典型性、代表性、唯一性を備えたものとなっている。また、高度な科学研究価値及び普及価値もあり、石林の発育の遺跡と石林の景観を通じて地球の進化の歴史を展示することのできる、世界で唯一のカルスト地形区域でもある。(劉世昭=文・写真)0809

 

人民中国インターネット版 2008年10月

 

 

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