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中国大学生の手作りゲーム 『三国殺』が大ブーム

 

「ウイルス式営業」の成功

会社ロビーで自信に満ちた笑顔を見せる遊卡卓遊のトップ3人。左からCEOの杜彬さん、製品部長の李由さん、チーフ・デザイナーの黄愷さん。中国5000年の歴史はテーブルゲームに多彩で豊富なテーマを与えてくれる。『三国殺』は始まりにすぎない (写真提供・遊卡卓遊)
このころ、黄チーフ・デザイナーら数人はまだ大学を卒業していなかったので、杜CEOは一人で荷車を引き、一箱ずつ運んで売り歩いた。そして、創業期にもっとも難しい市場開拓を受け持った。

「『三国殺』を遊ぶには少なくとも5、6人集まらなくてはなりません。でも、一人に教えればその人が自発的に仲間を集め、友人間の口コミで次々に広がっていきます」

杜CEOはこれを「ウイルス式営業」と呼んでいる。彼はまず、友人関係をもとに多くの企業の管理職層にゲームを広めていった。

「私が彼らに遊び方を教えると、彼らは自然に部下を誘って遊び始めました。逆に、もし最初から一般の職員に教えたなら、上司を誘うのは難しかったでしょう」

ほかにも、キャンパスでの普及活動に力を入れた。

「多くの女子学生は、遊び方を覚えると、自分で買ってボーイフレンドにプレゼントしたのです」

この時期、彼は数百人に直接遊び方を指導したという。

「どんな小さな方法でも試しました。効果が小さそうだから試さなくてもいいやとは考えませんでした。一つずつ進めることで、点が面になるのです」

彼は、これから起業する若者にもこの点を参考にしてほしいと考えている。

産業チェーンの出現

2008年の初め、黄チーフ・デザイナーらが登場人物を新たにデザインしたり描いたりしたカードに、正式に『三国殺』の名前をつけた。まず5千セットを印刷し、60元ほどの価格で売り出したところ、思いがけず市場の反応が良く、一部のベテラン・ゲームプレーヤーが営業陣への参加を志願してくれたほどだった。同年11月、杜CEOらは遊卡卓遊を設立。新たに普及版3万セットを増刷して、価格も29元に引き下げた。

09年9月、3年に及ぶ改訂の末、同社はついに『三国殺』標準版を発売した。39元に抑えた価格は現在まで値上げされていない。街角の雑誌スタンドでも扱ってもらえるようになり、この年は1500万元の売上を記録した。

『三国殺』の成功は、テーブルゲームの「産業チェーン」を生み出した。多くのテーブルゲーム・バーが営業を始めただけでなく、ネット会社との連携が実現し、ネット版のオンライン『三国殺』がスタートした。杜CEOによれば、現在1日平均150万人がプレーしており、多いときには20万人が同時に参加しているという。また、2010年下半期には、『三国殺』プレーヤーなどのための雑誌『卓遊志』が創刊された。さらに同年12月、『三国殺』はiPhoneなどアップル製品のプラットホームにも進出した。杜CEOは、これまでに『三国殺』で遊んだことがある人は、中国全体で3000万人に達すると見ている。

ライバル出現を歓迎

中国の知的財産権法では、ゲームの遊び方を特許として申請することはできない。また、カードそのものの製作も比較的簡単なことから、一時期『三国殺』の模倣者が次々と出現し、千セット以上を販売した模倣品は20種類を上回った。この件について、遊卡卓遊は当初非常に神経質になったが、調査によって発見したのは、模倣品の売れ行きはかんばしくなく、まったく『三国殺』の競争相手になっていないということだった。

杜CEOはこう分析する。

「『三国殺』には先行のメリットがあり、すでにブランドに対する評価が出来上がっています。また薄利多売方式によって、価格面での優位もあります。加えて、最近は消費者の知的財産権に対する認識が高まっており、多くの人が私たちの正式版を支持してくれているのだと思います」

彼によれば、テーブルゲームでは欧米が非常に進んでおり、さまざまなテーマのゲームが楽しまれているという。しかし、中国ではテーブルゲームのプレーヤーの95%が『三国殺』で遊んだことがある一方、そのほかのゲームで遊んだことのある人はごく少数だ。

「『三国殺』が人気だと見ればみなが三国志に群がる同質の競争ではなく、さまざまなタイプの強力なライバルとの競争を望んでいます」

と、彼は健全な競争によるテーブルゲームの一層の普及に期待している。

海外進出ならまず日本

中国に滞在する日本人も『三国殺』の流行に注目し始めている。一部のファンは、わざわざ遊び方を日本語に翻訳しブログで紹介している。杜CEOはこうした動きを歓迎している。

「日本は、カード文化と三国志文化がともに発達した国です。ですから、将来の海外進出ではまず日本がターゲットです」

ただ彼は、現在日本で流行しているのは主に収集・交換を目的とするトレーディング・カードであり、『三国殺』のようなスタイルのカードはまだ日本では少ないと見ている。このため、今はまだ市場投入を急ぐつもりはないそうで、中国での業績がさらに安定・拡大した後に、「長く協力していけるパートナー」を見つけたいとしている。

開拓者としての責務

遊卡卓遊では、『三国殺』のヒット以降、違ったテーマのテーブルゲームをいくつか発表してきたが、いずれも『三国殺』の売り上げには遠く及ばない。

しかし、杜CEOはこの点について非常に冷静だ。彼は、中国のテーブルゲーム開拓者として、『三国殺』ヒットの勢いを借りて、まず産業チェーンを確立すべきと考えている。

「中国のテーブルゲームはまだ黎明期にあり、地方都市などではよく知られていません。現在、力を入れるべきは依然として『三国殺』のさらなる普及であり、それによって付属、関連企業の経営を安定させることが重要です」

 

人民中国インターネット版 2011年3月23日

 

 

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