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河南省登封市中原文化の粋 古建築群(上)

 

三教が共生する聖地

中岳廟は最も完全に保存されてい る中国道教建築の代表とされる

 中原地域が政治の中心として確立されるとともに、その近くの嵩山も聖山の地位を持つにいたり、五岳(中国の五大聖山)に列され、中岳と称される。また、歴代の皇帝の扶持により、ここは仏教、道教、儒教の三教が共生する聖地となった。

少林寺塔林には241の古塔と現代の石塔2基がある。建築・彫刻芸術・宗教などの歴史の研究にとって実物資料の宝庫で、「中国古塔芸術博物館」と称される

会善寺は曹洞宗の名刹、 もとは北魏孝文帝の夏離宮で、隋のころに改名した。大雄宝殿は現存する唯一の元代木造建築で、中国建築史にとって重要

後漢安帝の元初・延光年間(114~125年)、陽城県令の呂常氏と穎川太守の朱寵氏はそれぞれ太室闕と少室闕、啓母闕の建設を主導した。この三廟は中国に現存するもっとも古い古代礼制建築の実物である。仏教が中国に伝えられた最初の数百年の間、禅宗の開祖とされる達磨祖師の中国での布教逸話と禅宗の広汎な普及にともなって、嵩山は仏教の聖地となった。北魏が都を洛陽に移した後、嵩山に少林寺、会善寺、嵩岳寺、嵩陽寺という4つの重要な寺を建てた。北魏孝明帝の正光年間(520~525年)、仏教の開祖釈迦牟尼を記念して嵩岳寺塔を建立した。この塔は嵩山地区に建造された最初の塔で、また中国の歴史上最初のレンガ造りの塔で、最古の塔でもある。

少林寺の初祖庵は達磨祖師の面壁座禅を記念して建てられた。主要な構造部分は北宋の原物で、建築学上大きな価値を持つ

禅宗の祖庭と称される少林寺山門

嵩山地区は道教発展史上においても重要な役割りを果たしてきた。北魏のころ、有名な道士寇謙之はここで数十年の修行をし、北天師道を創立した。また、中岳廟の前身は秦の時代(前221~前206年)に太室山神を祀る場所として建造された太室祠であるが、北魏の時代(386〜534年)に祠の場所は3回も移された後、中岳廟と名が定まり、道教の廟堂になり、それ以後道教が管理することとなった。唐の時代(618〜907年)の帝王によって中岳廟は何度も拡張整備され、最盛期を迎えた。清の乾隆年間(1735〜1795年)、北京の故宮の建造法に基づいて大規模な全面改修が行われ、廟全体の配置様式が故宮に似て、人々から小故宮と呼ばれた。

嵩陽書院

『混元三教九流図賛碑』は「三教合一碑」とも称される。全体 から見ると僧侶の像つまり釈迦に見えるが、よく見るとその左 は儒教の孔子、右は道教の老子である

嵩山南麓に位置する嵩陽書院は、北魏孝文帝の太和8年(484年)に建造された。宋代理学の「洛学」を創始した程顥・程頤の兄弟もここで講義したことがある。その後、嵩陽書院は宋代理学の発祥地の一つとなった。書院は改修改築を重ね、規模が大きく、配置も次第に整えられた。河南省の睢陽書院、湖南省の岳麓書院、江西の白麓洞書院と並んで中国四大書院と併称される。  

嵩山地区の古代建築群に秘められた「天地之中」という理念は、誕生から現在にかけて、中華民族の形成と中国の統一にとって、始終強大な推進力となってきた。

 

人民中国インターネット版 2011年6月

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