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江蘇省揚州市 伝承の古籍復刻技術 世界文化遺産に登録

 

印刷 ブラシと馬連にかけた一生

木製の印刷スタンドに版木を固定し、専用のブラシで均等に版木に墨を塗った後、白紙を版木の上に広げて敷き、馬連で紙の背を刷る。紙をはがすと、文字や絵が刷り上る。

木版印刷『十一面観音』の刷に用いられる版木

薄暗い部屋の中で、年寄と若者の二人の職人が単色の老子の『道徳経』を刷っていた。彼らはブラシと馬連を持って、慣れた手つきで版木に墨を塗り紙を置き刷っていた。一枚の版木で数百枚を刷る。両手は同じ動作を何度も繰り返す。一見簡単そうに見えるが、静かな水のように落ち着きがなくてはならない。「軽帚重擦」、つまり、版木の寿命を保つために墨は軽く塗り、紙の背を強く刷ることできれいに仕上がる。「先四周後中央、反面蝦青色」とは、どうすれば墨を均等にできるか、また力加減について述べたもの。これらは先輩職人から伝えられた経験だ。

顔のほっそりとした李江民さんは刷ることについて話しを始めると、わんぱく小僧のようになった。1954年生まれの李さんは印刷の仕事に就いて30年を超える。広陵古籍刻印社の出版した逸品はほとんど彼が刷ったものだ。2000年、彼は一年をかけて、同社の彫刻家の陳義時さんが彫った『白隠禅師自刻集成』(日本禅文化研究所)計2362ページ、31冊、200セットを一人で刷った。

刷るのに没頭している揚州市無形文化財伝承者である李江民さん

重ね刷りの木版画『十一面観音』

昨年、李さんは陳義時さんが彫り自分が刷った約20件の木版印刷逸品を携えて香港へ行き、第13回「世界華人芸術大会」に参加した。その中で『金剛経』と「水印木版画」の『緑楊箋譜』という二作品が同大会の最高賞金賞を受賞した。前者は世界で最も早く発見された木版印刷品の復刻本で、朱砂で印刷され、高い収蔵価値がある。後者は280以上の図案を2000以上の版で重ね刷りされた作品で、高いレベルの木版画印刷技術を裏付けている。

装丁 和綴本工芸の流れ

木版書籍の装丁は巻子本から、旋風葉、折本、胡蝶装、袋とじと線とじなどの形態の変遷を経て、閲読がいっそう便利になった。現在、普通に見かけるのは線とじで、その工程はすべて手作業。一枚一枚の紙から一冊の本になるまで、20以上の工程がある。

刻印社の装丁工場は非常にせわしい。毎日、大量のページが送られ、数える、配る、整える、装丁する、刷る、切るなど十数の工程を経て、手作業で出来上がる。重要な古書であれば、また若干の種類に分けられ、錦や布などの各等級のカバーをつける。

 

人民中国インターネット版 2011年9月

 

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