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大阪都構想と中国の経済圏構想

 

国家戦略でメガロポリス

目下、中国では都市化が急速展開しており、都市化に中国の今後の発展がかかっていると言っても過言ではありません。首都経済圏構想や二大デルタ都市圏はその最前線です。特に、国家戦略となった首都都経済圏構想は、中国にメガロポリスを誕生させ中国の都市化にモデルを提供し、これを牽引する役割、中国の経済・社会の将来の発展を負っているといえます。この点は、二大デルタ都市圏についてもあてはまります。

メガロポリスの必要な理由として、「先進各国の首都経済圏は当該国における経済的プレゼンスが非常に高いが、首都経済圏は中国経済のわずか10%に過ぎず、実現すれば、発展の可能性を大いに秘めている」(人民ネット 2010年11月26日)と指摘する識者は少なくありません。

発展に見合う区画整理

大阪都構想で大阪がどう変わるかについて論評するのは時期尚早でしょうが、従来の枠にとらわれない新しい経済・社会づくりへの挑戦という視点は、首都圏構想と似ています。大阪都構想では、既存の40区を20区(大阪20都区)に再構築する構想がありますが、この点、北京、上海などではすでに実施済です。例えば、ここ数年間に、北京では東城区と崇文区、西城区と宣武区が併区(合併、区画整理)したほか、上海浦東新区と南匯区が、また、中国北方の黒龍江省の省都ハルビンでは香坊区と動力区が合併したケースなどが指摘できます。中国の多くの都市の行政区画は1950年代に策定されたところが多く、今、経済・社会の発展に合わせた区画整理が進行しているわけです。

併区により慣れ親しんだ区名が無くなることに抵抗もあったようですが、「改姓不改名」(姓を変えて名を残す)で街道名などに旧区名を残すなどの配慮がされています。併区で「洗牌」(麻雀牌をかき混ぜること、転じて、やり直すこと)すれば、産業集積、教育、交通、戸籍、就職、住居、生活環境などでの利便性の向上、区域格差の是正が期待できます。

最後に、中国から大阪都構想を見る視点として、第四番目の新区(注4)として期待されている西咸新区(陝西省の西安市、咸陽市)を紹介しておきましょう。西咸新区の目指すところは、中国内陸部の西安市を国際的大都市にすることにあるとされます。今後、中国では「新区のあるところにメガロポリスあり」となるかもしれません。

今、中国は民生重視の都市国家建設に向けた新次元の改革開放と向き合っているといっても過言ではないでしょう。さて、消費税の税率アップで民生向上になるか、大阪都構想で何が改革されるのか、期待したいものです。

注1:中国にもずばり消費税という税目があるが、こちらは特定のぜいたく品(酒、タバコ、化粧品、自動車、使い捨て割り箸、燃料油等)に課税される「奢侈税」を指す。

注2:人民ネット 2011年8月31日。

注3:『中国経済週刊』の来源として2011年7月26日の新華ネットなどが報道。

注4:上海浦東新区、天津濱海新区、重慶両江新区に次ぐ中国第4の新区。いずれも副省級。

(財)国際貿易投資研究所(ITI) チーフエコノミスト 江原規由

1950年生まれ。1975年、東京外国語大学卒業、日本貿易振興会(ジェトロ)に入る。香港大学研修、日中経済協会、ジェトロ・バンコクセンター駐在などを経て、1993年、ジェトロ大連事務所を設立、初代所長に就任。1998年、大連市旅順名誉市民を授与される。ジェトロ北京センター所長、海外調査部主任調査研究員。2010年上海万博日本館館長をを務めた。

 

人民中国インターネット版

 

 

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