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わたしの「ものさし」から見た中国

 

佐野 桃子

私が中国に初めて訪れたのは昨年の八月である。それ以前は、領土問題や戦後処理問題、そして中国人のマナーの悪さなど、中国に対する印象は悪かった。その反面、そうした悪い印象は日本のメディアからの情報によって作られたものであると悟り、真実を自らの目で確かめたいと思い中国を訪れることにした。その後、北京への短期留学や南京や上海での日中歴史教育交流委員会の活動を通して、中国とは如何なるものかを少々ではあるが、自分の身体で知ることができた。こうした経験を通して、メディアからの情報はあくまでも判断材料であり、物事の真意を見極めるため、中国をさらに知ることで、自らの「ものさし」を持つ必要があると感じた。

私は中国から帰国した後、日本で積極的に中国人と関わる機会を設けることにした。中国人留学生と、日中の政治をテーマに議論をしたり、日本と中国の文化をお互いに紹介し合ったりした。先日、東京学芸大学が主催する国際交流合宿で、富士山の樹海を訪れた際には、中国人留学生8人と朋友になった。私は彼らに、「为什么你对日本感兴趣呢?(何故日本に興味を持ったのか)」と尋ねると、彼らは決まって「因为我喜欢日本的动漫和漫画(日本の漫画やアニメが好きだから)」と回答した。「哆啦A梦(ドラえもん)」や「海贼王(ワンピース)」など、中国では日本でも広く認知されている漫画やアニメが人気であるようだ。私も日本の漫画やアニメは好きであるため、それらの話題で彼らと盛り上がった。思い返すと、昨年12月に上海市金陵中学校を訪れた際にも、現地の学生が我々日本人に発した質問の多くが、日本の漫画やアニメに関するものであった。南京大虐殺などの日中歴史教育問題を議論するために訪れていた私は、開いた口が塞がらなかったが、日本の漫画やアニメが中国で受け入れられていることを強く感じた。

上記のことは中国にだけ当てはまるのではなく日本にも当てはまると私は思う。「福建省推奨」と、ラベルに表記されたサントリーの「烏龍茶」は日本で広く知れ渡っており、コンビニや自動販売機など至る所で見ることができる。また、東京国立博物館で開催された特別展「始皇帝と大兵馬俑」を訪れた際には大勢の人が足を運んでいたほか、三国志をモチーフとした漫画「キングダム」が特別展とタイアップするなど、始皇帝や三国志など、中国の歴史が日本で受け入れられていることを実感した。三国志は日本では長年人気を集めており、ゲーム「三國志」はシリーズ12が発売されるほどの人気作である。

1890年代以降、日清戦争(中国では「甲午戦争」という)や第二次世界大戦など、日本と中国は互いに対立し合ってきており、現代も、領土問題や戦後補償問題など、対立は形を変えながら続いている。しかしながら、日本での「中国の歴史や食事」、中国での「日本の漫画やアニメ」などのように、日常生活において、まるで対立し合っていることを忘れたかのように、日本と中国は共存し合っている。対立とは一見無縁そうな、ありふれた日常生活における中国が、我々日本人との間に親しみを生む。逆もまた然りである。だからこそ、私はもっと中国と日本の文化交流をするべきであると思う。そうした文化交流から日本と中国の相互理解、ましてや政治問題に対する互いの視点に立った見方ができるようになると考える。

こうして、日本で多種多様な中国に触れることで、私の中で少しずつ中国に対する印象は良い方向へと変わってきた。現在では、中国人や中国政府に対する理解も深まっている。それは決して表面的な気持ちではない。メディアの情報だけではなく、日本で中国人と交流したり中国の歴史や文化を積極的に学び、自らの五感で中国を感じたことから生じた正直な気持ちである。私は今、自分の「ものさし」を心の中に持ち始めている。

人民中国インターネット版2016年9月

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