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ニーハオ!茨城の畑で

 

 一ノ戸崇

「鹿行では中国人を見かけない。」私が2013年の春に大学生として東京に引っ越して来るまで、故郷の茨城県鹿行地域では中国人どころか外国人を見る機会はあまりありませんでした。この先入観を一変させられた経験をご紹介します。

2015年、大学3年生の夏休みに私は卒業研究の調査を始めていました。テーマが「農業における外国人技能実習生の存在」であったため、故郷であり農業王国である茨城県を対象に、外国人技能実習生として来日した外国人が茨城県の農業でどのような役割を担っているのかを研究しようと考えました。外国人技能実習生とは、JITCO(国際研修協力機構)による「外国人技能実習制度」のもと、開発途上国の将来の人材として我が国の様々な産業の技能を修得するために来日し、約3年間実際の現場で実習を行う外国人のことです。特に農業における外国人技能実習生の受け入れ数は、茨城県が全国で最大で、その中でも私の母校がある鉾田市は県内で最も外国人技能実習生受け入れている市町村のひとつです。そのため、私は高校時代の友人に2人の中国人の技能実習生を受け入れた農家の方を紹介してもらい、彼らに会うことを決めました。

你好!多关照!」初めて茨城県で中国語を使った瞬間は、鉾田市の小ネギが栽培されていた畑の中でした。「什么你会中文?你是茨城人?」中国語が話せる日本人に驚いた彼らは、年齢が近いこともあって非常に明るく私を受け入れてくれました。また、大学で中国語を3年間みっちり鍛えられたおかげもあり、日本が初級程度の彼らとも円滑にコミュニーションをとることができました。彼らの故郷の河南省より気候が穏やかで過ごしやすいことや、賃金や居住環境には満足していることなど、インタビューを通して外国人技能実習生の生の声を知ることができました。同時に、技能実習生とはいえ、私の地元で農業を支えてくれている彼らへの感謝の気持ちが生まれました。茨城県でも農業に従事する方の人口は急激に減少を続けています。その中で、日本の農業技術を学ぶため、一生懸命鉾田市の畑で作業をしている彼らの背中は非常に大きく見えました。また受け入れ農家の方も、彼らは精神的にも身体的にも強く、非常に頼りになる存在だと話してくれました。河南の2人は非常に親切で、農作業後に彼らの部屋での夕食に誘ってくれました。鉾田市のスーパーで買った地元産の白菜やチンゲン菜、鶏肉などを使い、河南から持参したという中華鍋と調味料を使って炒めて作ってくれた晩御飯は、いまでもすぐ思い出せるおいしさでした。

「鹿行にも中国人がいるんだ。」彼らと別れてから、新しい気持ちを抱きながら幼いころから通った道を歩いていました。茨城の畑で出会った中国の2人は、東京で会う中国からの留学生や観光客とは異なって、茨城の農業を経験を通して勉強しながら、衰退しつつある農業の一部を担っていました。それまで中国人を見たことがなかった地元で、このような日中関係を発見したことは4年間の大学生活の中で1番の驚きであり、今後の中国語学習の励みになります。

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