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春色

春の気配

 

  被寒流折磨久了、被炉火烤得力气弱了、被冬日单一蔬菜弄得食欲寡淡的人,谁不盼着春天呢?春天的到来是最铺张的,它的前奏和序幕拉得很长。

寒波に長いこと苦しめられ、暖炉の火にあぶられ力が弱り、冬の単調な野菜に食欲がそそられなくなれば、春の日を待ちわびない人がいようか。春の到来は最も大げさなもので、その前奏と序幕は長く続く。

 

  三月中旬吧,就有它隐约的气息了。连续几个晴天后,正午时屋檐会传来滴答滴答的水声,那是春天的第一声呼吸,屋顶的积雪开始融化了。人们看见活生生的水滴,眼里泛着喜悦的光影。但别高兴得太早,春天伸了一下舌头,扮个鬼脸,就不见了。寒流的长鞭子又甩了出来,鞭打得人还不能脱下冬衣。人们眼巴巴地看着屋檐滴水时凝结的冰溜儿,就像望着脆弱的琴弦,不敢把动人的旋律弹奏。

3月も中旬になると、わずかに春の気配が感じられるようになる。数日晴天が続いた後、正午になって軒からぽたぽたと滴が滴る音が聞こえて来ると、それは春の初めての呼吸で、屋根の積雪が融け始めたのだ。人々はみずみずしい水滴を見て、目に喜色を浮かべる。でも、喜ぶのは早過ぎで、春は舌をペロリと伸ばしたかと思うと、あかんべえをして、すぐ姿を消してしまう。寒波の長いむちがまたしゃしゃり出て来て、人をむち打つので、まだ冬服を脱ぐことはできない。軒先の滴がつららになるのを、なすすべもなく見ているのは、か細い琴の弦が切れるのを恐れて、素晴らしい旋律を奏でかねているみたいだ。

 

 到了四月初,屋顶的积雪全然融化了,家家的白屋顶露出了本色,红瓦的现出热烈的红色,青瓦的现出深沉的钢青色,这时春天的脚步真的近了。雪花隐遁,天空由灰白变成淡蓝,太阳苍白的面庞有了暖色,河岸柳树泛红,林中向阳山坡的达子香花,羞答答地打骨朵了,人们饲养的家禽,开始在冬窝里频频伸展翅膀,想啄春天的第一口湿泥,做自己的口红。这时的春天怎么说呢,是到了婚日的盛装的新娘,呼之欲出了!

4月の初旬になると、屋根の積雪はすっかり融けて、家々の白い屋根が本当の色を現し、赤い瓦から熱烈な赤い色が、灰色瓦からスチールグレーの色がのぞくと、春の足どりも本当に近くまで来ている。雪は隠遁し、空が灰色から淡い青に変わり、太陽の白い顔も暖色を帯び、河岸の柳が赤らみ、林の中の日当たりの良い斜面のエゾムラサキツツジが、はにかみながらつぼみをつけ、飼われている家禽が冬ごもりの巣の中でしきりに羽を伸ばし始め、春の初めての湿った泥をつつき、口紅にしたがっている。この時の春はどう言ったらいいのか、結婚式の日に盛装した花嫁のようで、生き生きとしている。

 

 春天就是一个宝石库,那里绿翡翠最多。地上的草,林中的树,园田的菜圃,呈现着一派娇嫩的绿;山间原野的花儿,姹紫嫣红,争奇斗艳,蓝的如宝石,红的如玛瑙,白的如珍珠,金黄的如琥珀。这时窗缝的封条撕下来了,门上用于抵御寒风的棉毡也取下来了,人们换下棉衣棉裤,家禽们又可以寻觅园田肥美的虫子,作为它们的小点心了!到了五月,春天波涛汹涌地来了,所有的生命都荡漾在它明媚的波涛里!

春はまさに宝石箱で、そこには緑のひすいが最も多い。地上の草、林の中の木、田園の野菜畑、みずみずしい緑に満ちあふれている。山間の野に咲く花は色とりどりで、華やかさを競い合い、青いものは宝石、赤いものはメノウ、白いものは真珠、黄色のものは琥珀のよう。この時、人々は窓の目張りを取り外し、扉に吊るした寒さ除けの綿のフェルトも取り外して、中綿の服を脱ぎ、家禽たちは再び野っ原で肥えた虫をついばみ、ちょっとしたおやつを食べることができる。5月になれば、春の波がとうとうと押し寄せて来て、すべての命がうららかな波間を漂うのだ。

 

节选自迟子建《谁说春色不忧伤》

遅子建『春の気配はもの悲しくないなんて、誰が言ったの?』 より一部抜粋

 

 

 

翻訳にあたって

 

 黒龍江省出身の作家である遅子建の文章で、北国に春が来る様子を美しく描写したもの。中国語で“青石”や“青瓦”などと言った場合、日本語的には、黒とか灰色のことが多い。“抵御寒风的棉毡”とは、室内に寒い空気が入り込むのを防ぐために扉のところに吊るしておく、まるで布団のように分厚い暖簾。

(福井ゆり子)

 

 

 

 

人民中国インターネット版  2017年4月11日

 

 

 

 

 

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