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多様化する庶民の財テク

 

不景気を背景に金ブーム

 

金購入につめかける人々(写真提供・「菜百公司」)

世の中不景気になると注目されるのが「金」だ。

中国人民銀行(中央銀行)の金利引き下げにより、預貯金や金融商品からの収益は減り、株式市場は低迷した。

そんな不景気ムードのなか、金は株やファンドなどの価格の変動が激しい金融商品と異なり、それ自体に価値がある商品として、再び金投資が脚光を浴びている。

ブームにのって金産出量世界一

月曜日の通勤ラッシュの時間帯、北京の菜市口百貨公司(以下、「菜百公司」と略す)では、すでに開店を待つ人々であふれかえっている。9時の開店になるとともに、人々は売り場に流れ込み、10時には1階の金のカウンターは人で埋め尽くされている。

北京の金専門販売店内の「紅馬甲(赤いベスト)」を着用している立会人トレーダーが、金投資家に財テク法を説明する
客の一人で、金を購入したばかりの張さんに金投資のことを尋ねてみると、「金投資は始めたばかり。以前1グラム約230元だったけど、今はずいぶん安くなったから、2つ買ったわ。今後値上がりするかもしれないでしょ!」という答えが返ってきた。現在、張さんのように金投資を始める人が日に日に多くなっている。

2002年10月30日、上海金取引所が正式に開業し、中国では自由な金取引が解禁となった。金への投資が急激に増え、ブームに火がついたのは、国際金価格が1オンス(約28.3グラム)700ドルを超えた2006年5月11日からである。2007年来、国際金価格は上昇を続け、2008年3月17日には、1オンス1032.55ドルの新高値を記録した。

これが人々の金の購買意欲を大いに刺激した。もともと「北京の金販売ナンバーワン」と言われていた「菜百公司」も、この金ブームに乗って売り上げを大きく伸ばしていった。同社業務部の李翔マネージャーは、2008年秋の大型連休時の7日間だけで、7000万元近い売り上げがあったと語る。

北京国際金融博覧会の中国金幣総公司の展示コーナーでは、2008年ネズミ年の記念金貨について尋ねる客が後を絶たない
「今日は人が多いとは言えません。もっとも多いときは、すべての売り場が人でいっぱいになり、キャッシャーに並ぶ人の列が店の外まであふれるほどです(中国の商店では、売り場で品物を注文し、キャッシャーで現金を支払った後、再び売り場で品物を受け取る)。こんなことは、普通の売り場では考えられないことですし、他の店の金売り場でも、そう滅多には見られませんよ」と誇らしげに笑う。

北京、上海のような大都市ばかりでなく、太原(山西省)、福州(福建省)、成都(四川省)などの地方都市でも、金投資は人々の好む財テクの1つとなっている。統計によれば、ここ2年ほどで中国の金の年間消費量は、それ以前の200トン前後から300~400トンまでに増えた。

2007年の中国の金産出量は前年比12%増の276トンで、南アフリカの272トンを上回り、世界一の「黄金大国」となった。しかし、それでも日増しに増加する市場の需要には追いつかない状態だ。

注目される金のペーパー取引

金のペーパー取引のことを中国では「紙黄金」と言う。

ネットで金のペーパー取引をしている王秀珍さんは「あと数年で退職になるので、退職後に何をするかを考えているんです。『紙黄金』は遊びのようなもので、小銭を稼ぐものですよ」と語る。

王さんが初めて金のペーパー取引に触れたのは、2006年のこと。銀行に勤務する娘が、ネット上での取引の仕方を教えてくれたので、始めるにあたって何の抵抗もなかったという。

「それまで私は『紙黄金』という言葉さえ知りませんでした。『紙黄金』と聞いて、最初は金箔のことかと思いましたよ」と笑いながら、当時を振り返る。

株と違い、金はネット上で24時間取引できる。金取引を始めてから、王さんは帰宅すると、まずパソコンを開けて金相場をチェックするのが日課となった。そして就寝前や起床後も、チェックをかかさない。金の価格が上がっていれば、すぐに売る。

ある日の深夜、金の価格が大幅に値を上げた。就寝中の王さんは、それに気づかずに売買のチャンスを逃してしまった。そこで、今後チャンスを逃してしまわないようにと、ネット上で業務委託を設定することを学び、夜寝る前に「売り」と「買い」の指し値を設定して、深夜でも自動的に金取引ができるようにした。

ネズミ年の金の延べ棒を展示する「菜百公司」の職員(写真提供・「菜百公司」)

しかし王さんは、始終頭を使わなくてはならず疲れてしまうという理由から、わずか半年ほどで金の取引を止めてしまった。ところが、この一年余りで金の価格は大幅に上昇。王さんは後悔するばかりだ。

「退職したら『紙黄金』をして、遊び感覚でお金を稼ぎますよ。銀行にお金を預けておくよりは、ずっと割りがいいですから」

金の取引は10グラムから始まる。王さんは、多いときでも90グラムを買うのがせいぜいだという。

「私ら庶民は大金はないので、多くは投資できません。娘の言葉を借りれば、『車代かオカズ代を稼げればそれでよい』のです。だから1グラム3元か5元も上がれば、すぐに売ります」

実物の金を買うより、金利は低いが保管する手間や心配のないペーパー取引が、近年、人気を得ている。中国銀行、工商銀行などもさまざまな金取引の商品を取り扱い始めた。

上海の金取引所の最新の調査によれば、金の各種商品を選択するうえで、王さんのような金のペーパー取引をする人の比率がもっとも多く、すでに37%に達した。

金の「上げ」相場では、金を標的とする投資はますます盛んになっている。2008年1月9日、金は上海先物交易所に上場され、その日のうちに金先物取引価格の世界最高値を記録した。

最近、市場には、実物の金と「紙黄金」の有利な点を兼ね備えた新たな金の取引業務が現れた。こうしたことが投資者に新たな金投資の道を開いている。

中国黄金協会の侯恵民副会長は「現在、国際金市場には600あまりの金取引商品があるが、中国にはほんの数種類しか存在しない。中国の金市場には、投資の巨大な余地があることは間違いない」と述べている。


【注】

 「紙黄金」とは、銀行が売り出した記帳式の金の売買を指す。全額を支払い、実物の金の引渡しはなく、値動きのみを見る。投資した人の売買交易記録は、開設した個人口座の中にのみ記録され、実物の金を動かす必要はない。そのため、金の輸送、保管、検査、鑑定などは省略される。 

 

 

 

人民中国インターネット版 2009年3月

 

 

 

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