【カメラでぶらり

鎮 江――『白蛇伝』とお酢の街

                       写真・文 郭実

長江と京杭大運河の合流点。多くの船舶が集まる
 子どものころ私は、ストーリー漫画で『水、金山に溢れる』という民間伝説の物語を読んだことがある。

 それは、千年も生きた蛇の化身である白娘子という娘が、俗人である許仙を愛し、結婚したが、法海という和尚に妨害され、仲を引き裂かれたという物語である。法海は計略を用いて蛇である白娘子の正体を暴き、許仙をだまして金山寺に連れて行った。怒った白娘子は、金山寺に行き、法海に夫を返してくれるよう求めた。

金山寺内の一隅

 海を支配している各海の竜王たちは、白娘子の行動に感動し、四海の水を湧きあげて一挙に金山に向かわせるよう命じ、金山寺を水浸しにしたのである。

 白娘子の物語は、民間に広く伝わっているが、その発生地が鎮江である。

西津古渡は、6朝時代(222〜589年)の長江の渡しの遺跡。昭関石塔は、昔の渡し場に通じる石板街の中央にそびえ立ち、江南では唯一、現存するチベット仏教式の塔。

 鎮江は江蘇省西南部にある。1949年に行政区画の改革で、県から市に昇格した。3000年の歴史をもつ文化的に有名な街であり、万里を流れる長江と京杭(北京―杭州)大運河の合流点に位置している。だから昔から、中国の南方と北方を結ぶ交通の要衝であった。

 経済と文化が発達していたため、鎮江は昔から多くの著名人を輩出した。例えば、南北朝時代の数学者・祖冲之(429〜500年)、六朝時代に火薬を発明した葛洪(?〜341年)ら、いずれも鎮江の出身だ。

 多くの有名な歴史物語も、鎮江で誕生した。鎮江市に入ると、見渡す限りの水面に浮かぶ金山が、遥かに望まれる。その金山に美しく輝いて聳え立つ寺院は、人々に白娘子、許仙と法海との間に繰り広げられた愛と憎しみを自然に思い起こさせる。

遠くから眺める金山の風景
1880年に中英間で結ばれた南京条約で鎮江を開港され、英国は領事館を設立した。当時の英国領事館は、今日、鎮江博物館となっている。

 鎮江の歴史について書かれた本をひもといて見ると、歴史上、鎮江には確かにそうした人物が存在していたと記述されている。

 明代(1368〜1644年)初期に、許仙という青年が白素貞という娘と愛しあい、いっしょに薬屋を営んだ。商売は繁盛したが、かえって人の嫉妬を買い、悪い人間が金山寺の住職の法海に訴え出た。法海は許仙に、俗世を捨てて出家するよう勧めたが、許仙はその勧めを拒絶して白素貞と結婚した。

恒順集団の香酢を貯蔵する甕

 地方誌の記載によると、法海は歴史上、仏教文化に貢献をした僧侶であるとされている。しかし、物語では、法海は悪の代表で、白素貞は美と善の化身となっている。

 昔日の金山寺はいまや観光地となり、鎮江市は、モダンな身なりの観光客と身に袈裟をまとった和尚とが、肩と肩を触れ合わせてすれ違うほどにぎやかな近代都市に生まれ変わった。

 改革・開放以来、江蘇省は経済発展の最も速い省の一つで、鎮江市の経済も急速に発展して来た。2001年の全市の国内総生産( GDP)は、五百億元を突破し、前年比で11・1 %増え、運輸、製紙、アルミニウム、化学工業を主とする産業構造が形成された。鎮江の郊外にある経済技術開発区には、多くの国内外の有名な企業が投資し、工場をつくっている。

恒順集団の発展史陳列館には、清末民初の営業許可証と製酢用具が陳列されている。
鎮江の特色ある料理の一つ「肴肉」
「蟹黄湯包」

 経済の発展は、大規模な都市の改造と建設を引き起こした。この古い都市に、多くの近代的な高層ビルと幅広い道路、噴水の湧く広場が造られた。また、鎮江市政府は歴史的文化遺産の保護を重視し、多くの名勝古跡が観光地として開発された。鎮江市は1986年に早くも、国家の歴史文化都市として国務院の認可を受け、1999年には、国家観光局によって中国の優秀観光都市に選ばれた。

 鎮江には人々を引き付けるもうひとつの魅力がある。これは「鎮江香酢」と呼ばれる酢である。酢は鎮江で最初につくられたかどうかは調べるすべもないが、鎮江の酢が国の内外に名を馳せていることは確かである。『中国医学大典』には、酢は「江蘇の鎮江のものを以ってもっとも良しとす」と記載されている。

 「鎮江香酢」は、質の良いもち米と酒粕を主要原料にし、ふすまと合わせ、優良な酢酸の菌株をつかい、かなり長い時間、「固体分層発酵」という方法で製造する。「鎮江香酢」は色、香り、酸味、純粋、濃さの五大特徴をもつ。色が濃くて味はおいしく、香ばしくて甘みあり、酸っぱくて渋みがなく、長く保存すればするほど味はますます良くなる。

 恒順集団は、「鎮江香酢」を生産する有名な企業である。その前身は、鎮江恒順醤酢工場といい、1840年に創業された。160年以上発展してきた結果、恒順集団は酢製造の企業としては中国で初めて上場し、生産の完全オートメ化を実現した。その製品は、四十数カ国家と地域で販売されている。

 鎮江はまた淮揚料理で有名なところの一つでもある。昔からここは交通が発達し、物産が豊かで、官僚や豪商、文人墨客が雲のように集まったため、食物はとくに重視されてきた。

 ここで鎮江の有名の簡単な料理を二つ紹介して、淮揚料理をその一端を垣間見ることにしよう。

鎮江の麺を打ちは、全身の力を太い竹の製麺棒にかけて麺を打つ。

 「肴肉」は、「霄肉」とも呼ばれ、ブタの腿肉を用いてタレで煮た料理で、煮凝りにすると透明になり、水晶のようになる。香ばしくて歯ざわりがよく、美味しくて柔らかいという特徴を持つ。口に入れれば、味は芳醇で、脂身ではあるが脂濃くはない。ショウガと酢を付けて食べれば、さらに別の味わいがある。

 「蟹黄湯包(カニ味噌の肉まんじゅう)」は鎮江の名高い一品料理である。ブタ肉とカニ味噌を餡にして、それを包む皮は薄く、中のスープは多く、餡はたっぷりで、味もすばらしく、独特の風味がある。

 「蟹黄湯包」の美味さは、中のスープのあるので、スープをしっかり閉じ込めておくために、それを包む強力粉の皮は強靭なものを使わなければならない。これをうまく作るためには、50グラムの小麦粉で5個の饅頭をつくり、それぞれに24のひだをつけて、その口の形を鮒の口のように作るのである。

 

鎮江の交通案内
北京、上海から飛行機で南京へ、更に自動車に乗り換えて鎮江へ。
北京、上海などから列車で直接鎮江へ。
上海、重慶などから長江を客船で鎮江へ。

主なホテル
鎮江賓館 電話 0511-5231055
鎮江国際飯店 電話 0511-50218888

主な旅行社
鎮江中国国際旅行社 電話 0511-5237538
鎮江青年旅行社 電話 0511-5233083

主な特色レストラン
宴春酒楼新店 電話 0511-5010478
一枝春大酒楼 電話 0511-5224320