日本観光が促す草の根の交流
特集4
スタートした中日の観光交流年

東京で日中観光交流年の記念講演会が開催された
  2006年3月10日、中日両国の観光旅行業に携わる人たち200人以上が、東京の赤坂プリンスホテルに集まり、「日中観光交流年記念講演会」に参加した。これは「2006中日観光交流年」が正式にスタートしたことを示すものだった。
 
  講演会が終わった後の「交流の夕べ」では、この日のために訪日した中国の国家旅遊局の張希欽副局長が日本の国土交通省の北側一雄大臣に「北側先生がこの中日の観光交流年を提案されました。わたしたち中日双方は、これをうまく推進するべく、協力しなければなりません」と述べた。

潜在力のある中国からの観光

 この2年間、中日間の観光プロジェクトは急速に発展したが、これにともなって2005年7月から、日本政府は中国人の訪日団体観光ビザの発給対象地域を中国全土に広げた。
 
  統計によると、2005年の中国人の海外旅行者数は、のべ3100万人に達している。中国は世界の171の国や地域と、団体観光旅行の協定を締結し、次第に海外観光旅行の大国となりつつある。

国土交通省が作製した日本の旅を紹介する中国語のパフレット

  中国国家旅遊局の日本首席代表の張西竜氏は「中国人の海外への観光旅行は、社会の発展に伴って必然的に起きてきたものです。一国の国民の収入が平均1000ドルを上回れば、人々は海外旅行へ行きたいと思うようになるといわれています」と述べている。

  中国は人口が多いので、潜在的な観光旅行人口は膨大であり、欧州や東南アジアなど多くの国々は、観光客の獲得のため続々と中国へ来ている。
 
  日本は観光旅行の大国だが、海外旅行に出かける人数に比べ、日本へやってくる観光客の伸びは鈍い。例えば2002年の海外観光はのべ1652万人だったが、日本への観光客はのべ500万人に過ぎず、アジアの他の国々に及ばない状態だ。
 
  2003年、日本政府は「観光立国」というスローガンを打ち出し、2010年までに、日本への観光客を毎年1000万人にするとの計画を立てた。この計画では、観光客の重点を韓国、中国、米国などに置いている。その中で中国がもっとも潜在力が大きいと、日本の観光業界の多くの人々は考えている。

将来性ある日本の旅

瀋陽から旅行に来た張紅さんの一家は、東京ディズニーランドで遊んだ

 JTBや近畿日本ツーリストなど日本の旅行社は、北京、上海などで支店を開き、中国の業務を扱っている。JTBの中国担当の神尾真次さんは「中国は13億人の大市場で、どの旅行社にとっても、これが大きな魅力です」と言う。
 
  日本の国土交通省国際観光推進課は、2004年12月から上海、広州、杭州などで「ジャパンフェスティバル」を催したり、中国語のテレビ番組やパンフレットを製作したりして日本を紹介し始めた。
 
  この2年来、中国から日本への観光客数は、ずっと増え続けている。2005年は、中国から日本へ来た観光客はのべ70万人近くに達した。しかし、この1年に中国から海外に旅行した観光客の総数は3100万人で、日本観光の占める比率はかなり小さい。
 
  中国国際旅行社日本支社の胡如祥社長は「いまのところ、中国から日本への観光客の数は、私たちの期待した目標には遥かに達していません」という。胡社長はその主な原因として、日本観光のプロジェクトが始まったばかりで、まだ成熟していないところにある、としている。

  「中国の海外旅行の市場は競争が激しく、一部のヨーロッパの国々は東洋の文化とまったく異なるヨーロッパの文化や民俗をセールスポイントにして、中国で大いに販売促進活動をしています。だから、日本が中国の観光客をひきつけたいと思うなら、日本独自のセールスポイントを見つける必要があります」と胡社長は提言している。
 
  中国の観光客にとって、日本のセールスポイントはどこにあるのか――これについて国家旅遊局の張首席代表はこう言っている。

東京の浅草寺は、海外からの旅行者に人気がある

  「日本のアニメが中国の青少年の間ですごく人気があるということは、日本の流行文化が中国に大きな市場があることを示しています」

  「日本は、自然の風景や飲み物、食べ物、服飾などの面においても特徴があり、日本を旅行した中国人の観光客は大多数が満足しています」。
 
  実際、多くの中国の旅行社は、これまでの伝統的な観光コースである大阪、京都、東京のコースではもはや中国の観光客を満足させられなくなったと考えている。そしてもっと多くの、日本の特色にあふれた観光コースの新商品を、できるだけ早く売り出すべきだという意見を出している。
 
  一方、日本政府は、団体観光ビザの発給対象地域の制限を撤廃したが、一部のツアーの参加者が、ビザ発給を拒否されたケースがあり、こうしたことが日本へ観光に行きたいと思っている中国人に、心理的なマイナスの影響をもたらしている。
 
  「中国人の日本観光は始まったばかりで、市場はまだ脆弱です。こういう時期には、中日双方が心を込めてこの事業を保護する必要があります」と関係者は言っている。


 


北側一雄国土交通大臣からのメッセージ

日中観光交流年の記念講演会が終わった後の「交流のタベ」で話し合う中国国家旅遊局の張西竜日本首席代表(中央)と北側一雄国土交通大臣(右)、中国国家旅遊局の張希欽副局長(左)

 「日本と中国は、一衣帯水の隣国である」とはよく言われることですが、この言葉は日本と中国の間柄を端的に表現していると思います。海を隔てた隣国である両国は、交通機関の発達していない遠い昔から、盛んに交流してまいりました。人々は危険を冒して海を越え、中にはそのまま異国の地に骨をうずめた人もいました。
 
  そうした交流を通じて日本は中国から様々なことを学び、それらを日本流にアレンジして自らの伝統を作り上げてきたのです。ですから、中国の皆様が現代の日本を見れば、差異の中にも多くの類似点を発見することでしょう。言葉も生活習慣も異なるけれど、自分たちの文化の香りを感じ取ることもできる。それも中国の皆様にとっての日本旅行のおもしろさなのではないでしょうか。
 
  昨年来私は、邵銷偉中国国家旅遊局長と何度もお会いして、信頼関係を築いてまいりました。そして、着実に両国の交流を拡大していこうではないかと話し合った結果、年を「日中観光交流年」と位置づけることにしました。私はこの2006年を、今後の日中大交流時代の幕開けの年としたいと考えております。特に、未来を担う青少年の交流や、友好都市関係を活かした交流、スポーツ交流など、裾野の広い交流を行っていきたいと思います。
 
  今後ますます発展を遂げていく中国の皆様が海外旅行をするチャンスは、どんどん増えていくでしょう。2005年7月からは訪日団体観光ビザの発給対象地域を中国全土に広げております。「YOKOSO!」と皆さんを歓迎する日本へぜひお越しいただき、「一衣帯水の隣国」日本の姿をご覧いただきたいと思います。自分の目で見、自分の足で歩き、触れていただくことで真の相互理解が深まり、日中関係が未来へ向かって前進していくことを大いに期待しております。

 

 
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