中国語を学ぶ日本の若者たち
于  文=文・写真

公開討論会「私たちはなぜ中国語・韓国語を学ぶか」の様子

 日本の学校では、外国語科目の主流は英語だ。英語は、学校教育で最も重視される科目のひとつでもある。しかし近年、中国語コースの人気が高まり、中国語を学ぶ大学生や高校生が増えている。

 文部科学省の統計によると、2005年の時点で、選択科目として中国語コースを開設している高校は553校におよび、全国の高校生の0.6%が中国語を学ぶ。また、大学の83%が第二外国語として中国語コースを開設。さらには、社会に出てから余暇を利用して中国語スクールに通う若者もいて、中国語の学習者は年配者が大半だったかつての状況は、いくらか変わってきている。日本の若者たちの間で、静かに中国語学習ブームが起きているのだ。

 中国の学生が日本語を学ぶのは、日本のアニメや漫画が好きだから。日本の学生が韓国語を学ぶのは、韓国の俳優にあこがれているから。それでは、日本の学生が中国語を学ぶ理由はなんだろうか。

身近になった中国

中国語を学ぶ木村梨紗さん(左、写真提供・木村さん)

 高校三年生の木村梨紗さん。中国語を学んで二年になる。毎週三回、母親と一緒に日中学院に通い、中国語を勉強する。母娘が同じ教室で学ぶのは珍しい。

 梨紗さんが中国語を学び始めたのは、母親の影響を受けたからだ。母親のエリ子さん(48歳)は、中国にたいへん興味を持っていて、中国語学習歴も長い。娘にも中国を知ってもらいたいと強く望んでいるが、中国語の勉強を押し付けてはいない。

 梨紗さんが小学校5年生のとき、家族で海外旅行をしようと計画した。梨紗さんはハワイを望んだが、エリ子さんは中国へ行こうと主張し、結局、中国へ行くことになった。

 梨紗さんはいっぺんで中国の美しい景色に魅了された。それから、中国旅行は木村家の毎年一回の恒例行事となった。これまでに梨紗さんが訪れた場所は15カ所におよぶ。そしてついに、高校一年生のときに母親と一緒に中国語を学び始めた。

 昨年12月、高校生・大学生の公開討論会「私たちはなぜ中国語・韓国語を学ぶか」が東京で開催された。梨紗さんは中国語学習者の代表として、「中国を旅行するたびに、現地の人と直接交流できたらと思います」と発言した。そして、同じく討論会に出席していた大学三年生の渡邊はる香さんをうらやましく思った。渡邊さんは上海に一カ月短期留学をして、たくさんの中国人と知り合い、豊かな留学生活を送ったのだ。

東京の街角には中国語スクールの看板も目立つ

 9歳から中国語を学んでいる渡邊さん。中国語のレベルはかなり高いが、恥ずかしくていつも口に出すことができなかった。しかし、上海では中国語を使わないわけにはいかない。ある日買い物をしていたとき、発音がとても正確だと店主にほめられた。店主は、何年も勉強した成果だろうと言ってくれた。渡邊さんはこれに励まされ、その後、恥ずかしがることはなくなった。

 渡邊さんが一番慣れることができなかったのはなまりのある標準語だ。「上海人は四 (si)と十 (shi)の発音がよく混乱しています。買い物のとき、いつも値段をはっきりと聞き取ることができませんでした。また、上海語は私が勉強した標準語と違いすぎて、まったく聞き取れませんでした。以前行ったことがある北京や天津にもそれぞれ方言があり、風俗や民情も異なります。中国は本当に大きいと思います。文化の違いが多様なため、私は中国に強く興味を持つようになったのです」

 すべての人が中国へ旅行や勉強に行く機会があるわけではない。しかし、日本で中国人と知り合ったり、中国に関する映画や書籍を見ることによって、中国語を勉強したいと思う若者も少なくない。

 財団法人国際文化フォーラムで日本の学生の中国語教育と交流活動に携わる水口景子さんは、次のように話す。「90年代の初め、たくさんの高校や大学が選択科目を開設し、中国語は選択科目のひとつになりました。これにより、学生は中国語を学ぶことができるようになったのです。また近年、中国へ旅行に行く日本人が増え、中国にふれ、中国に興味を持ち、中国を知りたいと思うようになりました。これと同時に、日本へやってくる中国人も多く、『中国の雰囲気』がますます日本人には身近なものになっています。これも、若者が中国語の学習に熱中する原因のひとつでしょう」

就職力アップのために

 日本で生まれ育った韓国籍の坂坪大陽さん(高校2年生)。普通はまず韓国語を勉強するが、小学校3年生のときに『三国志』に関する読みものを読んでから中国の歴史に強い興味を抱き、中国語が選択できる高校を選んだ。坂坪さんは中国語の授業が大好きだ。「中国語の授業は気楽で、とても活発です。学ぶ内容も非常に実用的。受験のための英語に比べると、本当に面白い」と話す。

 中国語を学ぶ若者にとって、実用的であることは非常に重要だ。中国人と交流できるだけでなく、中国語を勉強することで就職力をアップさせ、将来の発展につなげたいと考える人が多いからだ。

中国留学生フェアではビジネス中国語クラスに人気を集まった

 日中文化交流センターで働く渡辺莉莉さん。中国人の血を半分受け継いでいるが、これまで中国語を勉強したことはなかった。

 大学を卒業後、何度か職を変えた。しかしどれも満足できなかった。「私は人より勝るところがなく、みんなができることしかできなかったのです」。そこで中国語を学ぼうと、2005年、上海の復旦大学に一年間留学。帰国後、現在の職に就いた。今では、中国語ができることで、会社の中堅となって活躍している。

 日中文化交流センターが昨年末に開催した中国留学フェアでは、ビジネス中国語留学コースに人気が集まった。仕事をやめて留学し、その後、再び発展をはかろうという人も少なくない。

 日本での就職は競争が熾烈だが、急速に発展する在中日系企業のなかには、競争率が比較的低いうえ、昇進のチャンスが大きい企業があるからだ。中国語の学習、特にビジネス中国語の学習は就職力をつける方法のひとつとなっている。


 
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