五代·邢窯茶神陸羽像
高さ10センチ。1959年、河北省唐県で出土。

 生活に不可欠なものとして、俗に昔から、たきぎ、米、油、塩、しょう油、酢、茶の七つが挙げられている。

 中でも、茶は中国人の生活と密接な関係にあった。後漢、三国時代に茶を飲む習慣は西蜀や江南地域で広まっていったが、唐代中葉に陸羽(733~804年)が『茶経』を世に出すと、独特の茶文化が次第に形成されていった。

 陸羽は湖北竟陵(今の天門市)の人。その一生は困難に満ちたものだったが、天性聡明で学問を好み、教養ある人物だったので、顔真卿や張志和など著名人と親交を結ぶ。また全国を遊歴し、朝廷の官吏への任命を拒絶して長年遁世生活を送った。陸羽は茶の研究に情熱を注ぎ、780年、中国および世界で初めて茶の専門書『茶経』を著した。死後、陸羽は「茶聖」「茶神」と呼ばれている。

 邢窯は白磁を焼成する唐代の有名な窯で、雪を思わせる白の色彩は、邢窯の白磁制作の熟成度を示すものと言える。

 この種の小像の制作は、宋代まで約300年にわたって流行したので、数は少なくはないだろう。

 この像とともに、茶釜や茶壼など茶道具一式が出土した。陸羽像とあわせて文献の記載を裏付ける資料となるものだ。

 邢窯茶神陸羽像は写実的な人物像ではなく神話化された人物に過ぎないが、茶史の文物という観点から見れば、この像は非常に貴重な出土品と言っていいだろう。(写真・孫克譲 文・史希光)

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