清·琺瑯彩富貴瓶 |
高さ21センチ、口径3.4センチ。首都博物館蔵。 |
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「粉彩(ふんさい)」と呼ばれる磁器の絵付けの特殊な技法が“最高潮”に達したのが、今月号で紹介する「琺瑯(ほうろう)彩」である。 「琺瑯彩」は、美術史上では「古月軒(こげつけん)」の呼称が用いられるのがふつうだが、清朝の宮廷で、皇帝はじめ皇族が何にもまして愛玩したのがこの「琺瑯彩」だったと言われている。一言でいえば、磁器の胎(たい)の上に琺瑯質の色絵を施したものということになる。胎土、釉薬、形状、顔料、絵付けの技術、……。いずれをとっても中国陶磁器史上“最善”が尽くされたのが「琺瑯彩」だったと言っていい。 この「富貴瓶」は、乾隆年間(1736~1795年)に景徳鎮の官窯で焼かれたもので、康熙年間に始まった「琺瑯彩」の技法の最頂点を示す代表作である。細い首、なで肩、ふっくらとした腹と、優美な姿もさることながら、白玉の如き肌に赤紫の地を施し、精緻なうえにも精緻に色絵を加えてあるところなど、心にくいほどの工夫が見てとれる。 芙蓉、蓮、百合、菊といった花にこうもり(蝙蝠)をあしらった文様は、栄華富貴の寓意を込めたものにほかならない。中国語では、蝙蝠が「遍富」(富はあまねく)に通じるので、こうもりは目出たい動物とされたのである。 瓶の内壁と外底には、うす緑色の釉が施され、外底にはさらに「乾隆年製」と篆書で落款が付けられている点も注意に値する。景徳鎮の官窯が最後の輝きに満ちていた時代の作品である。 (写真・谷中秀 文・劉秀中) |
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