商·青銅伏鳥双尾虎

高さ25.5センチ、長さ53.3センチ。1989年に、江西省新幹県大洋洲の商代墓から出土。

 人類史の発達段階で、青銅器の製造は生産や生活の分野で応用され、これによって社会は質的変化を遂げていった。この時代を青銅器時代と呼んでいる。

 中国の青銅器時代は紀元前二千年前後から形成され、夏、商、西周、春秋時代を経て、青銅器の鋳造は生産力発展のシンポルとして最盛期を迎えることになる。

 芸術的造形の観点から見ると、多くの青銅器はまた工芸美術品でもあり、装飾は新石器時代のものを若干引き継いではいるが、これに絶えず変化を加えた結果、独特の青銅工芸体系が確立され、中国芸術史を構成する存在にまで発達した。

 青銅伏鳥双尾虎は、一九八九年に江西省新幹県大洋洲の商代の墓から出土した。全体に雲紋が施されている。開いた口にむき出した牙、突き出た目と太い眉、そびえ立つ両耳、極太の首、盛り上がった背、後ろに垂れる二つの尾。なかは空洞になっている。うずくまる姿は、いまにも起き上がろうとしているかのようだ。くちばしをとが.らせ、丸い目をした短い尾の小鳥が背中に伏している。この造形と装飾文様は、青銅、器の研究に有益な啓示を与えるものとして注目される。

 この青銅器と関連性のある文物が、一九五〇年に河南省安陽市武官村の商代墓から出土している。虎紋石磐といわれるもので、商王朝が儀式に用いた器物である。やはり口を開け、牙をむき出しにした、雄健な半伏臥状態の猛虎が刻まれている。刻線は流れるようで迫真力がある。今月号の青銅器の造形と文様は、商代中原文化の芸風に近いものがあり、その文化の影響が色濃く出ている。

 古代、虎は悪獣とされ、その凶暴な形象は人ぴとに恐怖を与えた。そのため、原始社会の自然崇拝のなかで動物崇拝の念が生まれ、虎、豹、蛇など人間の存在にとって脅威である動物に対して、心理的にそれらを崇拝するようになった。青銅器時代に入っrて、邪悪を除く意味かち虎が文様として使われるよヴになっていく。それは商代中期からで、戦国時代まで続くことになる。 (文·河野 写真·王露)

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