象牙蹴鞠図筆筒

象牙蹴鞠図筆筒 高さ16.1センチ。安徽省博物館蔵。

 中国の象牙工芸品の歴史は古い。すでに新石器時代に制作が始まり、相当広まっていた。精緻な装飾が施されたものもあり、各地で逸品といわれる古代象牙工芸品が多数出土している。

 宋代には文思院が設けられ、象牙、玉、犀角や木の彫刻を専門とする部署が設置された。官廷貴族のために各種の工芸品を作るのが専門。制作はより写実的になり、モチーフも次第に世俗化していった。

 「筆筒」とは筆入れのこと。古代は竹製が主だったが、象牙製の筆筒は明代以降、比較的広く用いられるようになった。この筆筒は宋代のもの。外側に庭で蹴鞠をする図が刻されている。

 蹴鞠は宋代に最盛期を迎え、官廷ではよく披露されていた。「水滸伝」の第二回にも蹴鞠の記載が見られる(明の「忠義水滸全伝挿図」を参照。北京大学図書館蔵)。

 この宋代の象牙製筆筒に刻されている蹴鞠の図を、上述の図と比べてみると多くの類似点があることに気づく。内容が酷似しているのである。なぜこれほどまで似ているのだろうか、研究の価値はありそうだ。 (文·河野 写真·王露)

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