後漢·陶楼

高さ72センチ。1979年に湖北省雲夢県で出土。雲夢県博物館所蔵。

 陶楼は古代の明器(副葬品)の一つで、死者が生前と同じような家で、同じような暮らしができるようにと願ってつくったものだ。だから明器とはいえそれは当時の建築技術や家の構造を今に伝える貴重な歴史資料である。

 この陶楼は一九七九年四月、湖北省雲夢(うんぼう)県の後漢末期の墓から出土した。赤みがかった土肌で高さ七二センチ、豪華な住居の様子を再現してみごとな出来ばえを示している。とくに注目されるのは、百葉窓がしつらえてあることだ。手前中央棟の窓がそれだが、今までに発見されたものの中では、この陶楼がもっとも早い時期のもので、大いに考古学界、建築学界の関心を呼んだ。

 百葉窓がつくられ始めた時期については、文献にも記録がなかった。この陶楼から後漢末期にはすでにあったことが明らかになったわけだ。百葉窓は直射日光を避けながら室内の換気をよくし、雨風を防いで快適な居住空間をつくりだした。

 写真の左側半分が屋敷の前部で門がある。大屋根の建物は二階建て、一階は三つの大部屋、二階は五つの小部屋に分かれている。二階が主人の居室である。右側半分は三層の望楼、台所、ブタ小屋など。一階部分はすべて通路でつながり、二階部分は廊下でつながっていて、各部分が一体化されている。それと同時に中庭が全体を前部と後部に分け、建物配置に巧妙な工夫が読みとれる。

 またこの陶楼はある程度当時の社会状況を反映した構造をもっている。後漢の末期は各地に動乱が起こったので、豪族たちは自分の土地を守るために武装していた。この陶楼のばあい、門の前に守衛亭があるし、高い望遠楼を備えている。屋敷の主人は安全を確保するためにつねに警戒を怠らず、賊の侵入に備えていたのである。 (文·写真 王露)

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