漢·異獣紐三足硯

高さ27センチ。1990年に安徽省蕭県で出土。安徽省蕭県博物館蔵。

 筆、墨、紙、硯、この四つの物を統称して「文房四宝」と呼んでいる。これらの歴史はかなり古い。出土した新石器時代の陶器の上に、毛筆で描いたと思われる文様が発見されており、さらには、西安の半坡遺跡でも、硯の原型とされる「石研磨器」が見つかっている。その表面に彩色した痕跡があるのが確認された。

 今月ご紹介する硯は、高さ二七センチ。一九九〇年に安徽省蕭県の漢墓から出土した。円形で三本の足を有し、硯のふたには獣の形をした取っ手がついている。石の材質は粗く、前漢以前の丸墨を擦る時に用いられたものと考えられる。
社会の発展と文化の進歩とともに、硯の形も絶えず変化を見せていった。また工芸が栄え、磁器が幅広く用いられるようになったことから、魏晋南北朝時代には三本、あるいは五本の足を持つ円形の磁器製硯が出現している。

 唐宋時代になると経済や文化が繁栄を遂げ、南方では質の良い高貴な硯が作られるようになった。端溪硯(たんけいけん)や歙石硯(きゅうせきけん)などがそうだ。甘粛では、当地で採取した硯料、洮河石を用いた洮硯が生まれている。

 こうした石硯は典雅な趣を呈しており、彫刻も実に優美である。形は長方形、正方形、器に似せたものなどさまざまだ。これらは使用価値があるだけではなく、その芸術的価値も極めて高い。山西省絳州の澄泥硯(ちょうでいけん)を加えたこれらの硯は中国の名硯とされ、歴代の収蔵家が名高い逸品として収蔵しているものである。(文·写真 王露)

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