車で楽しむ生活を提案
中本徹さん 1994年、大学卒業後、株式会社フェリシモに入社。2000年2月、同社北京駐在員事務所に代表として赴任。2003年6月、同社退社、同年7月に北京で現地日本人向けのバー――「Hiding Place(ヒディングプレイス)」を開店。昨年3月、北京水美文化発展有限責任公司を設立し、同年7月末、月刊の生活情報誌『Curu Magazine(楽在車中)』を創刊した。

 昨年7月、北京のブックスタンドに『Curu Magazine(楽在車中)』が登場した。中国では毎年、数百種の雑誌が創刊され、そして数百種の雑誌が姿を消していく。そんな並みいる雑誌たちの中、多彩で美しい写真、目を引くレイアウト、そして車社会を楽しむための生活情報を提供するなど、『Curu Magazine』はしっかりとその個性をアピールしている。

 これは中国語の雑誌であるが、立ち上げたのは日本人である中本徹さんだ。中本さんは1994年フェリシモ入社後、中国人の経営者を育てる在日留学生のプロジェクトをきっかけに、中国と関わるようになった。

 北京で数年間の駐在員生活を送り、中国を知り好きになっていった中本さんは、ここで自分は何をするか、何ができるかを真剣に考えた。そして「物を売るのではなく、生活の価値つまり生活そのものを中国の方に提供したい」という思いをふくらませた。それが雑誌作りへとつながっている。

 北京のような中国の大都市は、すでに車社会に突入している。車を購入したいという要求も高まっている。「実は今、中国の車雑誌はとても多く、数十種類あります。しかし『Curu Magazine』のジャンルは車雑誌ではありません。車を紹介する雑誌ではなくて、車を楽しむための雑誌なのです。車を購入したあと、通勤や買い物など基本的な日常生活だけに車を使っていたら、非常にもったいない。車で生活を豊かにすることをみんなに提案したいと思っています」と中本さんは言う。

 旅行、飲食、ショッピングなどの娯楽情報を、車という媒体を用いて斬新に興味深く読者に提供する。ドライブスポット、レストラン、車関係の雑貨、交通ルールなど内容盛りだくさんだ。

 雑誌作りに関わるスタッフは、中国人八人日本人四人。「日本と中国では雑誌作りに対する考え方の違い、文化の違い、表現の違いがあります。例えば、中国の方にとっては、雑誌は文章が多いほど情報が多いという考え方が一般的。中国人スタッフからもその点を指摘されたのですが、この雑誌はあえて写真をメーンに誌面作りをしました。その結果、『写真がきれい』『とても見やすい』との反響があったので、中国人スタッフや中国の読者に『写真も情報の一つ』ということを理解していただけたと思っています。日本のやり方をすべて取り入れるのではなく、中国の考え方にも合わせていきたいですね」

 中本さんは将来、『Curu Magazine』を通じて中国の様々なデータベースを構築したいと考えている。「レストラン、ホテル、遊園地などの様々な地域情報を集め、読者たち、つまり中国の未来を引っ張っていく方々のデータベースを作っていきたいのです」

 北京を核として、上海、広州、香港などにビジネスを展開させ、ゆくゆくはアジアそして世界へ…。北京に基盤を置いた中本さんの夢はどんどん広がっていく。 (文=賈秋雅 写真=原絢子)

 
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