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愛も国境を越える時代
中国で結婚するための法手続き |
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鮑 最近、日本人と中国人が、中国で結婚するというケースが増えていますね。国際化の一つの現われといえますね。 森脇 そうですね。中国人の男性と日本人の女性のカップル、日本人の男性と中国人の女性のカップル、どちらも結構多いですね。文化の違いを克服して、結婚にたどり着くなんて、私には真似できませんが、すごいなあといつも思います。 鮑 今日は中国で中国人と日本人が結婚する場合の法律上の問題点について話したいのですが。 森脇 結婚の制度は国によって随分違いますね。中国で正式に結婚の手続きをする場合、当然中国の法律に従わなければならないですね。 鮑 そうです。中国の法律では結婚を「婚姻」といいますが、婚姻については婚姻締結地の法律を適用することになっています。 森脇 中国の婚姻制度はいろいろな変化を遂げてきたときいていますが…。 鮑 そうですね。制度の変化ということで思い出しましたが、中国には国際結婚に関する有名なエピソードがあるんですよ。一九八〇年代のことだと思います。あるフランス人女性と中国人男性が結婚をしようとしたのですが、中国の役所が婚姻手続きに必要な中国人男性側の書類をなかなか発行しようとしなかったのです。そこで、フランスの当時の大統領が中国のケ小平氏に結婚を認めるように申し入れたところ、ケ氏がそのような結婚はむしろ歓迎すべきだから早く手続きをしなさい、と件の役所に指示をしたのだそうです。これで当のお二人は無事婚姻手続きを済ませることができたということです。この事件を境に中国の国際結婚は徐々に増加していったともいわれています。 森脇 ところで、現在の婚姻制度についてですが、まず、気になるところでは、何歳になったら結婚できるか、という点でしょうか。 鮑 中国では国の政策上晩婚が奨励されていますが、男性は満二十二歳、女性は満二十歳になれば結婚してよいことになっています。日本はどうですか。 森脇 日本は、男性が満十八歳、女性が満十六歳となっていますね。でも、未成年者、つまり満二十歳未満の場合は親御さんの同意が必要です。いずれにしても、中国の方がちょっと厳しい、という感じですね。あと、中国の場合は、結婚できない場合があるでしょう。特定の病気を持っている場合とか。 鮑 そうですね。婚姻法で明確に規定されているのはハンセン病だけですが、そのほかに精神病、性病、痴呆症なども結婚できないとされています。もちろん、すでに完治している場合は問題にはなりませんよ。これらは中国人同士が結婚する場合と同じです。外国人との結婚ということでいうと、現役軍人、外交官、公安、重大機密事項を掌握している中国人、あと服役中の中国人などは外国人と結婚してはならないことになっています。 森脇 そうすると中国では、きっとロミオとジュリエットのようなエピソードが結構あるのかもしれませんね。このあたりは随分日本と違いますね。日本では病気による制限はありません。制限として規定されているのは一定の親族間の婚姻くらいですかね。日本では昔、ある歌手が服役中の人と結婚したという有名な話がありますが、こういうのは許されないのですね。 鮑 そうですね。 森脇 それから、手続きも結構大変だと聞きましたが…。まず、身体検査をしなければならない。 鮑 さっき申しましたように、特定の病気のある人は結婚が許されませんのでその証明を取る必要があります。この点は外国人も中国人も平等に扱われます。 森脇 ほかにもいろいろな書類を用意しなければなりませんね。外国人の方は、例えば大使館の認証を経た婚姻情況に関する証明書とか。 鮑 これは、重婚が禁止されていることとの関係だと思います。やはり、外国にその外国人の奥さんがもう一人いた、などというのでは困りますから。 森脇 それから手続きとしては婚姻登記をする必要がありますね。婚姻登記は、中国人側の故郷で手続きを行わなければならないと聞きましたが。 鮑 そうです。厳密にいえば戸籍(戸口)のある場所ですね。ケースによっては、実際この手続きが一番大変かもしれませんね。北京、上海といった大都市で外国人と出会い、愛を育まれるケースが多いでしょうが、中国人側の故郷が実際には遠方にあるということもまれではありません。中国は何しろ広いですから、この登記手続きが結構大変なことも少なくないようです。でも、そうやって二人で結婚に向けて旅行するというのも悪くはないでしょう。 森脇 そうかもしれませんね。私なんて、区役所で紙切れ一枚もらって二人でサインして、双方の友達に証人欄にサインしてもらって、それをポンと区役所に提出しただけでしたからね。手続きが簡単すぎたから、うちは今でもけんかがたえないのかな(笑)。 鮑 まあそう悲観なさらずに。 森脇 あ、それから最後に結婚証明書をもらいますよね。あれも日本にはない制度ですね。結婚証明書は、旅行でホテルに宿泊する場合などに必要とされていますが、外国人の場合提示を求められることはあまりないようですね。でも、赤い表紙に中華人民共和国の国章が印刷されていて、中を開くと二人の微笑ましい写真が入っている。幸せなカップルの誕生に国家がお墨付きを与えたという感じが出ていて、いい記念になりますね。 鮑 そうですね。そういった結婚証明書が各人に一つずつ交付されます。そうそう、あれこそ、夫婦喧嘩のときの有効な「カード」として使えるかもしれませんよ。レッドカードだからといって「退場」を命じるのではありません。「あの時君はこんな笑顔で政府に誓ったじゃないか」なんていって証明書を相手に見せれば喧嘩もおさまるのではないですか(笑)。(2000年4月号より) 豆知識 |
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森脇 章 (もりわき・あきら) 日本弁護士。98年4月より中国北京にて中国語(北京語言文化大学)及び中国法(北京政法大学)を学ぶ傍ら、アンダーソン・毛利法律事務所北京事務所にて研修を積む。99年4月より、同北京事務所常駐代表。 |