中国科学院と中国社会科学院は米フォード財団の資金援助を受けて、貴州省の黎平県に住むトン族の民謡を保護・救済・発展させるプロジェクトを本格的にスタートさせた。
トン族の民謡は中国民間音楽のなかでも最も特色に富み、世界的にも数少ない珠玉の芸術の1つ。その特徴である多声部合唱は内外の民間音楽でも希少で、学術的・鑑賞価値は非常に高い。また単なる音楽芸術のみにとどまらず、トン族の社会構造、恋愛や婚姻関係、文化の伝承、精神的生活を理解することができることから、社会史や思想史、教育史、婚姻史など多方面にわたる研究でも価値がある。
失われつつあるトン族の民謡を保護するため策定された計画の総体的目標は(1)口承する方策を講じる(2)無形文化遺産として保護・継承する方法を模索して、国内に数多くあるその他の遺産保護に向けたモデル、メカニズムを確立する(3)ユネスコの世界無形文化遺産(人類の口承及び無形遺産の傑作)に登録申請する――の3点。
行動計画の基本指針は(1)保護しながら、地方の経済・社会の発展を促すという認識を高めて、いくらかゆとりのある社会の全面的建設に向けた基盤を構築する(2)国の行政機関や国際社会はむろん、黎平県の指導者や大衆にも支援を仰ぐ(3)外来文化の流入や市場経済の影響を受けて、文化的土壌や経済的基盤が大きく様変わりし、また著名な歌手も高齢となる一方で、若手歌手の育成が追いつかない状態にあるため保護作業に早急に取りかかる(4)歌唱力があり、商業的に独自公演できる歌手を養成する――の4点。
行動計画の具体案は(1)優秀作品の整理作業を進めて楽曲集を作成する(2)幼児の時から伝え聴かせるとともに、小中高等学校のカリキュラムに盛り込む(3)コンクールの定期開催など様々なキャンペーンを展開する(4)世界無形文化遺産に登録申請して全世界に紹介する――の4点。
世界無形文化遺産は2000年にユネスコが創設。現在、中国で同遺産に登録されているのは昆曲(旧劇の1種)の1件のみ。
(「チャイナネット」より 2003/3/25)
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