「潮が来た、来たぞー」。遥か遠くの川面を、ますます多くの人が指差した。今しがたまで静まりかえっていた川面が、だんだんに激しく波打ってきた。潮の形は特に決まっていないが、基本的には一つの長い「一」の字になる。潮水が次第に沸きかえるにつれ、泥と砂を含んだ波が疾走してきて、ドーッと堤防のぶつかる。その勢いは恐ろしいほどで、大きな波涛が一つ、また一つと、絶えず岸壁に打ちつける。ごうごうとなる潮のうなりは、まるで万を越す馬が疾駆するように絶えず耳を圧する――これこそ世界の奇観、銭塘江の海嘯(かいしょう)である。
銭塘江の海嘯は年に一回、農暦(旧暦)の8月18日にやって来る。新暦では、今年は9月13日になった。浙江省旅遊局が主催し、杭州市蕭山区人民政府が協力する「2003中国国際(蕭山)銭江観潮節」も盛大に開幕した。
今年は雨が少なく、銭塘江の水流の流量が減少しているため、今年の銭塘江の海嘯は例年より弱いだろうという情報もあったが、あちこちからやってきた観衆は、海嘯を見ることのできるこの街をびっしり取り囲んだ。初歩的な統計によると、5万人を超す人々がこの日、この「世界の奇観」を観賞したという。
雄大で壮観な銭塘江の海嘯現象は、月と太陽の引力と地球の自転の影響によって引き起こされるだけでなく、銭塘江の河口の形がラッパ状になっていることとも関係がある。河口が外に広く、うちに狭くなっていて、しかも河口には巨大で平らな砂洲があり、大量の潮水が銭塘江の河口からどっと流れ込んでくるときに、河床が突然狭まり、川底が急にせりあがる。堆積している砂に阻まれ、摩擦が起こり、流速が増大することによって、大量の海水が狭い場所に流れ込み、次から次へと波が押し寄せ、前の波に後ろから来る波が重なり、どんどん波が高くなっていくという壮大な奇観が現れる。特に中秋節(旧暦の8月15日)後の二、三日は、潮の高さが3〜5メートルに達し、押し寄せる速度は毎秒10メートル近くになり、同時に大きな音を発するのだ。
外国で、こうした海嘯現象は、英国のセバーン川、フランスのセーヌ川、南米のアマゾン河などの少数の河口地区には見られるが、典型的で壮観な銭塘江の海嘯にはどれも及ばない。宋代の詩人、蘇東坡が「八月十八潮 壮観天下無」という詩を書いたのも不思議ではない。
現在、銭塘江南岸の浙江省杭州市蕭山区政府は、この独特な自然現象の資源を十分に活用し、海嘯を「友人と会い、資本を引き入れ、貿易を促す」チャンスにしている。1994年から今までに、9回の銭塘江観潮節を成功裏に挙行し、この地の経済の発展を効果的に促進した。今年の観潮節も、蕭山の経済・貿易・観光事業の一大イベントになった。
人民中国インターネット版 2003/9/17
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