農民出稼ぎ労働者、各都市で「工会」組織に加盟


 現在、農民の出稼ぎ労働者は全国の各都市で約1億人を数える。こうした"流動労働者"の合法的権益を保障するため、全国各地の政府が「工会」(権益保護のための組合組織)を設立している。

 中国最北部の黒竜江省の省都・ハルビン。同市・道里区のスターリン通り居民委員会に初めて工会「出稼ぎ労働者工作委員会」の看板が掛けられた。この地区で生活する農民300人余りがすでに加入。同省・肇源県出身の農民、于文續さんは「よそ者だが、工会に加入してハルビンが我が家のように感じられた。賃金の未払いや各種保険の手続きなど、以前は難しい問題もあったが、きちんと解決されるようになった。工会が組織する夜間学校や様々な訓練班にも参加できるので、知識を身につけることができる」と話している。

 中国の特殊な国情を背景に、また発展が進むなか、農民が全国の各大都市で働くようになってすでに20年になり、その数は現在1億人余り。国有・グループ企業の従業員数を上回り、経済を運営するうえで不可欠な存在となっている。だが歴史・現実的要因から、農民労働者は長年にわたり、事業主の賃金未払いや労働災害に対する無保障、劣悪な生活環境などの問題に直面し"都市の弱者"とされてきた。2001年に『工会法』を改正。同法は「国内の企業や事業体、機関の賃金収入を主要な生活源とする肉体労働者や知的労働者は、民族や種族、性別、職業、宗教信仰、学歴を問わずいずれも法に基づき工会に参加または組織する権利を有する」と規定した。

 ハルビン市総工会組織部の王連増部長は「従業員・労働者の合法的権益を擁護することが、中国の工会の最も重要な仕事だ。ただ、農民労働者は流動性が高く、分散しているため加入させるのが非常に難しく、これが工会の仕事の盲点、農民の加入が少ない原因となっている」と指摘。

 こうした状況に対処するため、各地の工会組織はコミュニティー工会や各所に小規模な工会を設立するなどして農民労働者の支援を試み始めた。黒竜江省や河南省などが昨年下半期から各地に小規模な工会を設置しているほか、湖南省・湘潭市は労働者が数多く集まり、権利の擁護が強く求められている建築業界に工会を設立した。

 380万人の農民出稼ぎ労働者を抱える上海。同市総工会は年初に工会設立の新たな目標を打ち出した。『中国工会規約』の「出稼ぎ労働者の会員は50万人を下回らない」の規定を実現するため、今年から2年かけて110万人の新会員獲得をめざす。総工会の陳豪主席は「出稼ぎ労働者は流動性が高く、自ら権利を擁護する能力も低いため、工会の保護が急がれている。労働者の加入を増やすことは工会自身の責務だ」と強調する。

 実際、農民も加入を強く希望している。北京市東城区工会の鄭建華主席は「コミュニティーの工会にはレストラン従業員や清掃労働者、お手伝いさん、パートなどが加入しており、工会を自分の北京の家と考えている」と話している。

 各地に設立された農民労働者工会は権益の保護に寄与しているだけでなく、就業技能の向上を積極的に支援している。王連増部長は「ハルビン市の道里区工会は農民労働者権利擁護サービスセンターを設立した。法律相談や法的支援、困窮者の子どもの入学資金援助のほか、医療面でも優遇措置を講じており、農民の資質を向上させるために、様々な夜間学校や訓練班も開設している」と説明。

 さらに王部長は「農民労働者のための工会を設立すれば、工会の権利擁護の職責を企業にも衆知徹底させて最も基本的な合法的権益を保証することができる。また、工会は農民を都市の生活に馴染ませる"推進器"的役割も担うだろう」と指摘する。

                           「チャイナネット」 2004年4月9日