加藤隆俊IMF副総裁、中国経済を語る


 加藤隆俊・国際通貨基金(IMF)副総裁は、過去20年間に中国を10回以上は訪問している。加藤副総裁は「中国の日進月歩の変化は、とても忘れがたい」と話す。5月中旬から下旬にかけて副総裁就任後初めて中国を訪れ、北京で行われた国際金融フォーラムに参加した。インタビューでは、関心の集まる中国経済や金融改革などの問題について、次のような見方と提案を語った。

 ▼経済のソフトランディングは難しい任務

 中国の経済過熱の有無についていえば、現在、確かに過熱の兆しが出ている。

 (1)第1四半期の固定資産投資は、昨年同期に比べ実質で33%近く増加している。4月末の広義のマネーサプライ(M2)は前年同期比で19%を超える増加となり、4月の消費者物価の水準は前年同月比で3.8%上昇している。IMFは中国には経済成長の大きな潜在力があるみているが、中国政府にとって、経済のソフトランディングをどのように実現するかは大きな課題だ。

 中国の経済情勢と他のアジア諸国の経済発展には密接な関係がある。IMFの非公式の統計によると、中国の国内市場向けの輸入が10%減少すると、他のアジア諸国の国内総生産(GDP)の成長率が0.5ポイント下降する計算だ。中国経済が大きく減退した場合、近隣諸国の経済への影響は必至だ。このため中国経済の順調な発展は、中国だけではなく、他のアジア諸国にも有益だ。もちろん、中国は人口多く、国土も広いため、理想的な経済発展を進めながらソフトランディングを成功させるのは、大変難しい任務だ。

 ▼資本市場発展への全力注入が必要

 金融改革について言えば、銀行の監督管理や不良債権処理に関して、中国政府はすでに一連の重要な措置を打ち出しているものの、解決が必要な問題はまだ多い。具体的には、公的資金を注入した銀行(中国銀行、中国建設銀行)における今後の改革や、国有商業銀行の改革、株式制商業銀行への監督管理の強化などが含まれる。

 こうした問題を解決するためには、中国が資本市場を全力で発展させるべきだと考える。中国は貯蓄率が高いため、貯蓄を効果的に投資に転化することができれば、中国経済の発展への大きな貢献となる。このため、資本市場により多くの機関投資家と評価機関を誘致し、関連のインフラ整備を進め、外資の導入により資本市場の活性化を図るべきだ。銀行にとっては、経営を十分に商業化する前提の下で、独立した取締役会の成立、外部監査の実行、適切なリスクマネージメントの実行など、現代的なコーポレート・ガバナンス(企業統治)を確立する必要がある。(編集YH)

                      「人民網日本語版」 2004年6月1日