対中投資の重点を南へ移す日本・韓国の企業

         

 日本と韓国の企業による対中投資は、これまで地理的に近いことから渤海湾周辺に集中していた。それが今、大挙して南下し、対中投資の重点が長江デルタ地域など華東地区に移りつつある。大連、天津など日本と韓国の企業がこれまで集中して投資していた地域は依然として両国企業を引き付けて成長してはいるが、長江デルタ地域の急成長には明らかに及ばず、全国に占める割合も下降している。

 長江デルタ地域と渤海湾周辺地域の最近の関連調査によると、長江デルタ地域の日本、韓国企業の数はここ数年来、急激に増えている。現在、長江デルタ地域に投資している日本企業は9000社ほどあり、中国に進出している日本企業の40%を占めている。韓国輸出入銀行の統計データによると、韓国企業の対中直接投資のうち、中国東北地区の占める割合が2000年の15.3%から02年の8.9%に下がった一方、長江デルタ地域は同じ時期に18.2%から29%まで上がった。

 特に注目すべきは、日韓の長江デルタ地域への投資は資本・ハイテク密集型の制造業に集中しており、大型プロジェクトと先端産業製品に進出していることだ。ソニー、シャープ、LG、サムソンなど日韓の大企業は長江デルタ地域にハイテク産業基地の戦略的布陣を積極的に進めており、長江デルタ地域が日本、韓国の企業による対中投資の重点となる勢いはますます鮮明になってきた。

 日韓による対中直接投資の大規模南下は、孤立した現象ではない。専門家の指摘によると、これは明らかに外資系企業による対中直接投資の新しい傾向だという。すなわち、改革開放の初期は中国の安価な労働力を重視していたのに対し、今では中国を引き続き生産基地として重視すると同時に市場開拓も重視することで、総合的な生産コスト削減を考慮することに転換したことである。

 上海をはじめとする長江デルタ地域は近年、比較的成熟かつ完備された産業集積の影響によって、外資系企業の直接投資を引き付ける高度成長を実現した。長江デルタ地域は現在すでに自動車、電子通信、集積回路など完成された産業集積を形成しており、原材料産業の成長だけでなく、制造業のためのサービスである外資系物流、卸売り、小売りなどのサービス業も成長している。外資系企業が蘇州でノートパソコンを生産する場合、部品を現地で95%まで仕入れることができる。

 ソニー(無錫)有限公司の鈴木賢副会長は「長江デルタ地域で部品はほぼ調達でき、企業配置の重点となっている」と指摘する。ソニーは現在、対中投資の80%が長江デルタ地域に集中している。

 天津・南開大学地域経済研究所の調査によると、日本、韓国の企業が中国に進出する地域を選ぶ時、60.3%の企業が「コスト削減」「サービスのよい専門工業団地の立地を希望」を優先的に考え、その次に「流通と販売網の構築」、さらに「労働力の獲得しやすさ」を挙げている。

 専門家の指摘では、日本、韓国の企業による対中投資の重点が南へ移る現象は、東北・華北地区は国有企業の比重が高いために民間経済の成長が活発でなく、産業集積の発展を妨げている問題が反映されているという。日本、韓国の多くの企業はまた、長江デルタ地域の政府部門は北方の政府部門より効率もサービス意識もより高いと感じている。

 南開大学経済学院の劉剛教授は「中国の北方地域は国有企業改革の歩みを加速させ、外資と民間資本が順調に進出する体制を作り上げることによって初めて新しく、かつ完備した産業集積を築き、それによってより多くの外資系企業による投資を引きつけられる」と話している。

 東北財経大学の肖興志教授は「日本、韓国の企業による対中投資が長江デルタ地域に集中することは、南東沿岸部の資源・エネルギー不足をもたらす恐れがある」と指摘している。このため肖教授は「中国が第11次5カ年計画を策定する時、地域間の産業分布を合理的に配置することで、地域の経済発展の不均衡が拡大するのを避けるべきだ」と提案している。

「人民網日本語版」 2004年11月16日