このほど、アメリカのハーバード大学ケネディ学院BCSIAセンターの高級研究員である、カリフォルニア大学ロサンゼルス分校教授のリチャード・ローズクニー(RichardN.Rosecrance)博士は、当面の国際貿易分野のいくつかの問題について『第一財経日報』の特別取材に応じてくれた。
『第一財経日報』の「現在、アメリカの多くの国に対する貿易赤字は国内の貿易保護主義の台頭を招くことになっているのではないか」の質問に、リチャード博士は、次のように述べた。
ある国に巨額な貿易赤字が現れた際、当該国には2つの選択肢がある。一、他国から投資を増やしてもらい、国債を購入してもらうなど財政面の協力を得ること。二、貨幣を切り下げること。現在、アメリカは前者をとっている。仮にこの2つの措置がいずれも功を奏しないならば、関税問題が考慮される。しかし、この措置は多くの場合、貿易保護主義の色彩を持つと見られている。現状から言えば、アメリカの保護主義が台頭すると見るのは誤りである。アメリカ政府はずっと世界的範囲における自由貿易を提唱しており、当面の関税引き上げは、石を持って自分の足を打つのと同じことに他ならない。
「一部の専門家は、現在の中米の繊維製品貿易における摩擦はアメリカの産業配置の問題と関連がある。現在、アメリカは製造業においては競争の優位がなく、こうした産業は中国にシフトすべきであると指摘しているが、あなたはこれに対してどう見るか」の質問に対して、リチャード博士は、中国は繊維産業において、確かにスケールメリットがあるが、中国は世界で唯一の繊維製品生産地ではなく、バングラデシュやイタリアも一定のシェアを占めている。しかし、市場全体から言えば、中国は繊維製品で主導的な地位にあり、市場全体で約60%〜70%のシェアを占めている。
ただ、中国の繊維産業のファッション化への発展の面では、なお一定の期間を必要とするであろう、と語った。
さらに、「アメリカでは、中国製造業のスケールメリットがアメリカの繊維産業就業者の失業を招き、そして就業チャンスの移動は実際は富の移動でもあると見ている」ことに対して、リチャード博士は、次のような見解を示した。
すべての資金を自国の産業へ投資させることは不可能である。アメリカの一部の会社が利益を上げることが困難な原因は、すべてみずからのコスト問題と関係がある。コストが低いことは、中国市場の優位性である。
移民を認めることは、一国の産業を外国へシフトさせるよい方法である。しかし、現在のところ、中国人がアメリカに行って仕事をすることは不可能であるため、アメリカの一部製造業工場が中国にシフトしており、これも就業チャンス移動のいま1つのやり方である。
問題のいまひとつの側面は、一国の1つの産業において失業が現われた場合、市場はその人たちをほかの産業に配置することとなっている。したがって、中国の繊維産業がアメリカ人の就業チャンスを奪っていると思い込んで、それに脅えることも間違いである。
リチャード博士はさらに、就業チャンスの移動や貿易摩擦がますます多くなっている状況のもとで、発展途上国の取るべき対策について、次のように語った。
第三世界の国々は、国内の製品を細分し、発展の方向性を見出すべきである。5年前に、コーヒーはまだ単純な生産物であり、品質の違いはないと思われていた。しかし、今では私たちがケニアのコーヒー、コロンビアのコーヒーやブルーマンテンのコーヒーなどの種類のコーヒーを持つようになった。
第三世界の国々はより多くの細分化された生産物を持っていれば、これらの国はいっそう市場にフィットすることができ、これは第三世界の国々の発展の根本策である。生産物の細分化は非常に重要なことである。中国は2.5〜3億の中間層の消費者を有し、生産物の好みも異なり、同時に同等の価格でよりよい生産物を求めてもいるだろう。
このほか、発展途上国はスケールメリットを強調すると同時に、経済の発展をさらに高いグレードに導くことも強調されるべきである。例えば、アメリカでは、われわれは現在30種類以上の味の異なるパンで、それぞれのニーズに応えている。これは、経済システムの安定にプラスとなるものである。
最後に、現在の国際貿易メカニズムにおけるアメリカの覇権主義について、リチャード博士は次のように語った。アメリカはかつて覇権主義の国であったが、いまでは覇権主義の勢いは弱まっている。経済体のメンバーのいずれもが自由の騎士になろうとしている。仮に1つの国が全世界のために製品を提供する役割を引き受けようとするなら、代価を払わなければならない。
アメリカ、中国、日本あるいは将来のインドは共同でこの役割を担うことになるであろう、という見方を示した。
「チャイナネット」 2005年5月17日
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