国際金融センターへ一歩前進 人民銀上海本部の設立

 

中国人民銀行(中央銀行)の上海総部(本部)が10日、旗揚げした。なぜ人民銀は上海本部を開いたのか?新しい上海本部は、変革のただ中にある中国の金融業に、何をもたらすだろうか?

人民銀が上海本部を設立する目的は、金融市場と金融センターを軸に、人民銀総行(本店)の調節機能とサービス機能をさらに高めるためだ。人民銀は1984年に、中央銀行としての役割を担い始め、通貨政策やマクロ経済の調整、金融の安定維持などの任務を負っている。98年には、管理体制の改革を行い、省別の分行(支店)を廃止し、複数の省を束ねる支店を設置した。この体制は現在まで続いている。中国銀行の周小川行長(総裁)は、こうした組織機構について「上流と下流が同じ幅のような組織」と形容する。つまり、本店にある部署は、地方の分行にも対応する部署があるということだ。地方の支店から中央に情報が集まり、その後、中央の計画に基づいて情報が部署ごとにより分けられ、各地方で実行される。地域間にまたがる経済活動が増えるにつれ、このような方法ではニーズに応じきれなくなってきてている。

 人民銀が上海での本部設立を選んだのは、上海が国内では最も整った金融体系と市場を備えていたからだ。上海本部の主な任務は、中央銀行の調整業務の一部を肩代わりすることだ。その結果として、人民銀は金融市場からの情報獲得が容易になり、今までより迅速かつ効果的に業務を進められるようになる。また小幅な金融調整が効き、マクロ調整の効率を上げることができる。

上海本部が担当する主な業務には(1)公開市場操作を実施する(2)上海の商業銀行、手形取扱機関の再割引業務を引き受ける(3)市場という経済運営の手段が、通貨政策と金融の安定化に及ぼす影響を解析し、金融市場の発展を監督かつ分析し、市場にまたがるリスクを抑える(4)金融市場の動きを綿密に追い、市場に関わるデータを集めて総合したうえで分析、さまざまな動態調査の報告を行う――などだ。

上海本部は当面、上海支店と共に業務を行ったうえで、段階的に上海支店との統合を進める。

国際金融センターの構築に向かって、まさに渾身の力を振り絞って前進している上海にとって、人民銀上海本部の成立は間違いなく「恵みの雨」だ。

上海は1992年に、国際金融センターの構築という目標を打ち出した。それから10年が過ぎ、上海には国内の金融市場や金融商品、金融機関が集まり、国際金融センターとなる潜在力は蓄えた。しかし、国際金融センターを目指す上海の歩みは、想像するほどには早くない。ここ数年、国内総生産(GDP)に占める上海の金融業の貢献率は、微減さえしている。

ある専門家によると、人民銀や国有商業銀行の多くは北京に本部を置いているため、上海での金融イノベーションに向けた政策決定への手続きには困難が伴う。この専門家は、人民銀上海本部の設立は、上海の金融改革の土台を支持する効果があり、上海の金融イノベーションを加速し、スムーズにする働きがあると述べた。

上海市政府発展研究センター諮問部の張兆安主任は、「中央銀行上海本部の設立によって、ほかの金融機関の関係部門の上海移転が促され、ひいては法律事務所や会計事務所、評価機関、人材が集まる可能性もある」と話す。つい最近、7月には、農業銀行の手形営業部が上海で開業すると発表した。農業銀行が北京以外に置く最初の直属機関だ。これに先立ち、工商銀行、農業銀行、中国銀行、建設銀行の4大国有商業銀行が全て、上海に手形業務または資金業務のセンターを開いた。

ただし、上海本部の開設が金融改革を後押しするとみられていることについて、張主任は、「新体制が動き出すには一定の試行錯誤の期間が必要だし、金融改革と金融センター構築は、時間をかけて進めるべき道のりだ」と指摘している。

                      「人民網日本語版」 2005年8月12日