さらなる研究が待たれている敦煌の版画

 

盛んに行われている敦煌石窟の研究とは対照的に、敦煌版画研究の分野はすこし寂しさが感じざるをえないものがある。敦煌研究院文献研究所の馬徳所長はこのほど記者の取材に対し、敦煌版画に対するさらに踏み込んだ研究を展開することを内外の研究者たちに呼びかけた。

専門家の研究によると、紀元10世紀の頃、つまり中国の歴史の中で五代ないし宋の初期に当たる時期においては敦煌一帯では、仏教がすでに800年以上根を下ろしており、一般の庶民の間にも深く根付き、民間では仏教の行事が盛んに行われていた。また、仏教の信仰をあらわにした敦煌の石窟は、その時までにすでに600年の歴史があり、石窟の掘削が可能な石壁がすでに限界に達していた。このような背景のもとで、版画は新たな仏教信仰を表す芸術方式として生まれ、また、低コスト、伝播の利便性から急速に広まった。資料によると、仏教版画は敦煌一帯だけでなく、四川省、山西省などの地域にも広まったが、歳月の流れと歴史の推移の中、敦煌一帯の版画だけが今日までほぼ完璧に保存されてきた。

敦煌の版画は出土してから、いろいろな災禍に見舞われ、そのうちの多くは海外に流出した。現在、235件の敦煌版画が中国、イギリス、フランス、ロシアなど10余カ国の博物館と図書館に収蔵されており、さいわいなことに、これらの版画は虫食いや湿気による損傷が少なく、ほぼ完璧に保存されている。

馬所長は、敦煌版画が1900年に敦煌蔵経洞の文献とともに出土して以来、100年余りの歳月が過ぎ去ったが、それと関連のあるまとまった研究はまだ数少ない。2002年に、敦煌研究院は「敦煌版画研究」の研究グループを発足させ、世界で最初の敦煌版画の研究を専門とする研究機構となった。同グループは、敦煌版画の背景と意義、数と種類、性質と用途などを研究課題にし、すでにいくつかのすぐれた成果が現れているが、馬所長は、これらの成果は敦煌版画の研究にとって粟といわれるように微々たるものに過ぎず、敦煌版画の研究を敦煌石窟の研究と同じレベルに到達させるには、まだまだ内外の学者の共同の努力が必要であると語っており、また、敦煌版画の研究で新たな経験を蓄積するため、現在、版木の複製品の制作に取り組んでいるところであることを明らかにした。

「チャイナネット」2005年11月14日