評論:中国石油脅威論を排す 価格高騰は投機が主因

 

国際原油価格の高騰が続くにつれ、いわゆる「中国石油脅威論」も、異口同音に流布されてきた。一部の海外メディアは、原油価格の上昇を、中国の原油需要の増加に責任転嫁しようとする。明らかに根拠を欠いた主張だ。中国の石油輸入は実際のところ、世界の石油市場に障害となってはいない。

中国の石油需要は年々増大し、対外貿易に占める石油貿易の割合は確かにかなり大きい。しかし中国の石油輸入の勢いは減じており、今年の石油輸入の増加率は前年比30ポイント減、精製油の輸入も同17%減と予測されている。

原因として、高い原油価格が需要を抑制していること、固定資産投資のスピードが緩んでいること、電力の需給問題がある程度緩和されたこと、燃料アルコールなど代替エネルギーの開発がかなり早く進んでいること、比較対象となる昨年同期の基数が比較的高かったこと、などが挙げられる。

このほか、エネルギー消費大国の中国は、エネルギー生産大国でもある。エネルギーの供給は国内市場を中心とし、自給率は94%に達する。これは、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均エネルギー自給率より20ポイント以上高い。昨年、中国の一次エネルギー生産量は世界の11%を占め、総エネルギー消費量についての対外依存度は5%に満たなかった。石油に関する対外依存度を低めるため、今年の原油国内生産量は1.8億トンに達する見通しで、採掘可能な資源量も増加し続けている。

中国の原油輸入量は果たして多いだろうか?中国のエネルギー消費の内訳を見ると、昨年の一次エネルギー資源で石油の占める割合はわずか22.7%にすぎない。中国の国民一人当たりの石油消費量も2バレル弱と、米国の10分の1、日本の8分の1、欧州連合(EU)の5分の1に過ぎない。国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、中国の今年の1日当たり石油消費量は、わずか3%しか増えていなかった。昨年の原油輸入統計からみると、中国の人口13億人に対し、石油輸入は1億6800万トン。韓国は同4800万人に1億2千万トン、日本は同1億3千万人に2億6千万トン、米国は同2億8千万人に6億4千万トンだ。こう比べてみると、中国の原油輸入は、少しも多くはない。昨年の中国の原油純輸入量は世界の原油貿易量の6.3%で、同時期の米国の約4分の1、日本の半分だった。 

中国の原油輸入は国際原油価格を押し上げているのだろうか?ここ数年、エネルギー資源の主要な産品であり、かつ再生不可能な資源である石油に、広く関心が集まっている。石油価格の変動が世界経済に与える影響は大きい。試算によると、高い原油価格が原因で中国の原油輸入は100億ドル以上の支出増加となった。昨今の国際原油価格は、正常な需給関係からすでに大きく逸脱しており、世界経済の成長の妨げであることは否定できない。原油価格の暴騰は市場が、特に金融面で騒ぎ立てたことによる非理性的な反応である。昨年以来、8500以上のファンドから8千億ドルが各種の原油価格の操作に使われ、投機による原油価格暴騰は1バレル15~20ドルに達した。中国の原油輸入量が世界の総輸入量に占める割合が、原油価格に与える影響など微々たるものだ。中国の石油需要は確かに増えているが、世界の石油市場全体の妨げには決してならない。

世界貿易機関(WTO)に加入して4年、中国はタイミングよく原油貿易の政策を調整し、原油と精製油の輸入の多元化を実現した。加盟時に約束したタイムテーブルに基づいて、国内市場も少しずつ開放している。中国が「エネルギー外交」を展開するのは、自国のエネルギー需要を満たし、中国経済の持続可能な発展を促進するためだけではない。全世界のエネルギー市場における安定供給と、人類社会の共存共栄のためでもある。原油価格の高騰とエネルギー安全保障問題は、一国が独力で解決できる問題ではない。当面の急務は、各国がエネルギー交流と協力を深め、バブル的に高騰した原油価格を理性的な価格に戻し、「中国石油脅威論」などに惑わされず、世界経済の安定を秩序だてて前進させることだ。

「人民網日本語版」 2005年11月29日