温家宝総理の政府活動報告
GDP成長率の8%設定、農村最低生活保障制度の確立など

温家宝総理が5日午前開幕した第10期全国人民代表大会(全人代)第5回会議で政府活動報告を行った。温家宝総理は政府活動報告の中で次のように述べた。

昨年の省エネ・環境保全目標が達成できず

昨年は中国のGDPの単位当たりエネルギー消費率が3年ぶりに下がったが、昨年初めに政府が示した省エネと汚染排出減少目標を達成することはできなかった。昨年、主要汚染物の排出総量の伸び幅が減少したが、年初の目標にはまだ達していなかった。その原因を分析した後、関連の措置を講じて成果を収めるまでには少し時間がかかる。

これ以外については、中国政府が昨年打ち出した主な目標はほぼ実現され、一部の分野の成果は当初の目標を上回っている。GDPの伸び率は同じ時期と比べて10.7%増え、都市部で新たに就業した人口は、当初の目標より180万人あまり増加し、1184万人となった。

中国政府、経済成長目標達成に初めて前提条件を設定

構造の最適化や効率の向上、エネルギー消費の低減、環境保護を図った上で、GDPの成長率を8%前後とする。

経済を発展させることと比べて、さらに重要なのは、科学的発展観を真剣に定着させ、活動の重点を構造の最適化や、効率の向上、省エネルギー、それに汚染物質排出の削減に置くことである。ひたすら経済成長率を追求したり盲目的に競い合ったりすることは避け、経済の良質かつ急速な発展を実現するよう導かなければならない。

貿易黒字による矛盾の緩和に努力

中国は、輸出入の構造を最適化させ、外国貿易での成長方式を転換し、貿易黒字による矛盾の緩和に努力したい。

中国は、自主ブランドと高付加価値をもつ商品の輸出を支援する。一方、エネルギー、原材料、先進的な設備と部品の輸入を増やし、多国籍企業が先進的な製造と研究開発業務を中国に移すよう働きかけるほか、外資を中国の中西部と東北地方に誘致することに力を入れていく。

中国は、いろいろな措置を取り、国際収支のアンバランスな状況を改善していく。

中央予算の安定のための安定調節基金を設置へ

ここ数年、中央財政の歳入が予定を上回る状況に対応して、中国は増収する部分から500億元(およそ62億5千万ドル)を拠出して、中央予算安定調節基金を設置する。

この措置は、予算をより科学的かつ合理的に編成し、中央予算の安定性と財政政策の連続性を保つために必要とされている。また、この基金の使用は、国家予算に組み込まれ、全人代の管理下に置かれている。

「最も厳しい土地管理制度を実行」

中国は最も厳しい土地管理制度を実行し、耕地が1億2000万へクタールを下回らないことを確保する。

中国は、建設に伴う土地使用の規模を断固規制し、耕地、とりわけ基本的な農地の保護を強化し、勝手に農地を建設用地に転化することを禁じる。特に別荘など不動産の開発、ゴルフ場の建設、党・政府機関などの建物の新規建設に伴う土地使用を禁じる。

人口が多く土地が少ないという中国の国情に応じて、中国政府は省エネ・原材料消費の低減、環境保護、土地の集約的利用を経済成長パターンの転換をはかる突破口とし、資源節約型と環境にやさしい社会を建設する目標を打ち出した。

中央政府、低所得層の住宅問題の解決に援助の手を

中国の不動産業は広範な大衆向けの一般分譲住宅を重点的に発展させるべきである。政府は低所得家庭の住宅問題に格段の配慮を払った上で、その解決に向けて援助の手を差し伸べなければならない。財政や税制などの面から政策的支援の度合いを強め、低価格賃貸住宅制度を確立すると共に、低所得者向けの安い分譲住宅制度を整備する。また、政府は価格規制と市場メカニズムの二つの手段を正しく運用して、不動産価格の合理的な水準を維持すると共に、分譲住宅の供給構造を最適化したい。

中等職業教育の発展に重点を

教育を全社会のものとするため、職業教育の発展を重点として位置付け、特に、中等職業教育の発展に力を入れるべきだ。そのためには、都市・農村をカバーする職業教育と研修ネットワークを整備する必要がある。また、職業教育管理体制の改革を深め、業界、企業、学校がともに参加するメカニズムを確立し、働きながら勉強し、学校と企業が連携するモデル校を推進する。

出稼ぎ労働者賃金の遅配問題をほぼ解決

2004年、中国政府は建設分野で未払いとなっていた工事代金や出稼ぎ労働者賃金の遅配問題を三年間で解決することを打ち出したが、この対策はこれまでにほぼ完了した。

各地方が完済した遅延工事代金は1834億元にのぼり、この額は総額の98.6%を占めている。また出稼ぎ労働者の未払い賃金330億元も完済した。

中国政府は出稼ぎ労働者の特徴に適した社会保障制度の確立を速め、特に出稼ぎ労働者の労災保険と重病医療保障事業の推進を重点に置いていきたい。

健全な国家奨学金、補助金制度を確立

教育事業の発展と教育機会の公平化を進めるため、中国は健全な国家奨学金と補助金制度を確立する。このため、今年、中央政府は昨年の6倍に当たる95億元(12億ドルに当たる)を投入することにしている。

中国政府は国家助成貸付金政策を引き続き推し進め、貧困学生を大学に進学させ、職業教育を受けさせるようにする。

中国、国家免疫計画の範囲を拡大へ

中国は免疫計画の範囲を拡大し、B型肝炎、流行性脳膜炎など15種類の伝染病を国家免疫計画の中に入れると同時に、無料で治療を行う病気の種類を更に拡大させる。

そのために、中央財政はこれまでより28億元(3億5000万ドルに当たる)予算を増やす見込みである。

中国は1978年から子供を対象とした国家免疫計画をスタートさせ、全国の子供に向けて予防接種を始めた。現在、中国で無料で治療を受けることができる病気はエイズ、住血吸虫病などがある。

「農村の最低生活保障制度を確立へ」

中国は全国的範囲で農村の最低生活保障制度を打ち立てることになった。これは『農業、農村、農民』という『三農』問題への取り組みを強化し、調和社会を構築するためのまた一つの重要な措置である。

各地方はそれぞれの実情に照らして最低生活保障の適用範囲と基準を合理的に定めなければならず、財政難の地方に対しては中央財政から適宜補助金を与える。

一つの中国」の原則に基づき、台湾海峡両岸関係の発展を推進

われわれは引き続き一つの中国という原則を踏まえ、両岸関係の発展を主張する台湾の諸党派との対話と交流を強化し、両岸間の対話と交渉の早期回復を勝ち取り、両岸関係の平和と安定に向けた発展を推進するよう努める。また、広範な台湾同胞と団結し、「台湾の法理上の独立」などいかなる形の分裂活動にも断固反対する。両岸関係の平和発展というメーンテーマをしっかりととらえ、積極的に両岸間の交流と協力を拡大し、両岸間の「三通(通信、通航、通商)」という直接交流を促すと共に、最大限の誠意を示し、最大限の努力を払って両岸同胞の平和、発展、福祉を追求してゆく。

中国は調和世界の建設推進に努力したい

中国は各国人民とともに、恒久的に平和で、共同繁栄する調和的な世界の構築の推進に向け、たゆまず努力していきたい。また、中国は平和発展の道を揺るぎなく歩んでいく。

中国政府はわが国の公民と法人の海外における合法的権益を守ると同時に、法律に基づき外国公民の中国における合法的な権益を尊重し、保護する。

「中国国際放送局 日本語局」より2007年3月5日


 

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