「物権法」草案を読み解く

制定作業が進められている「物権法」草案は、これまでに全国人民代表大会(全人代)常務委員会で7回の審議が行われた。全文が公開されてからというもの、全国から1万件を超える意見が寄せられ、座談会や立法論証会が100回以上開催された。こうした準備作業を経て8日、草案は第10期全人代第5回会議の審議に提出された。同草案を子細に検討してみると、中華人民共和国憲法の精神とこれまでに確立された関連の原則とが、条款の中に十分かつ全面的に体現されていることが容易にわかる。

▽中国の特色を備えた物権法を制定し、国の基本的経済制度を全面的・正確に体現する

「物権法」草案は冒頭に、「国の基本的経済制度を保護し、社会主義市場経済の秩序を保護し、物の帰属先を明確にし、物の効用を発揮し、権利者の所有権を保護するために、憲法に基づいて、本法律を制定する」と明確に記す。

憲法は「国は社会主義市場経済を実施する」と規定する。全人代代表を務める中国政法大学の徐顕明学長によると、中国の特色を備えた社会主義物権制度は、社会主義における基本的経済制度に基づいて決定されたものだ。所有権とは所有制が法律の中で表現されたものであり、物権の中核であり土台である。中国の特色ある物権法を制定するに当たっては、社会主義における基本的経済制度を全面的かつ正確に体現しなくてはならない。

▽国有資産の保護強化について明確に規定

現実の生活の中では、公共財産に対する権利侵害が深刻だ。このため同草案は「国は社会主義の初期段階にあり、公有制を主体とし、多様な所有制の経済がともに発展する基本的経済制度を堅持する」とし、「国は公有制経済を強固なものにし、発展させるとともに、非公有制経済の発展を奨励し、支持し、導く」としている。

ある法律専門家は「現在の物権法草案は、公共財産に対する保護を多方面から強化している」と指摘する。具体的には次の5点。

(1)草案は「物権法は、国の所有に帰する財産は、国の所有すなわち全国民の所有に帰することを規定する」とする。またどの財産が国の所有に帰するかを確定し、帰属先が不明確なことによる国有財産の流失を防止する。

(2)草案は「物権法は、国の所有に帰する不動産・動産については、いかなる機関・個人もその所有権を得ることはできないことを規定する」としている。

(3)草案は「国の所有に帰する財産は法律の保護を受け、いかなる機関・個人も横領、略奪、私的分配、破壊することを禁ずる」と規定する。

(4)草案は、企業の制度改革、合併・分離、関連取引などの過程で、低価格での譲渡や謀議に基づく私的分配、担保の乱発、その他の方式により、国有資産に損失を与えた場合は、法律に基づいて法的責任を負わなければならないと規定する。

(5)草案は、国有資産の監督管理の職責を履行する機関やその職員は、「職権を乱用し、職務を怠り、国有資産に損害を与えた場合は、法律に基づいて法的責任を負わなければならない」と規定する。

草案のこうした規定は、社会主義に基づく公共財産保護の精神の強化にとって、重要な現実的意義をもつ。

▽市場経済ニーズに従い、すべての市場主体を平等に保護する

「物権法」草案は、「国、団体、個人の物権、およびその他の権利者の物権は法律の保護を受け、いかなる機関・個人も侵害することはできない」と規定する。中国社会科学院(社会科学アカデミー)法学研究所の孫憲忠研究員によると、同草案はさまざまな物権主体に対する平等な保護の原則を体現し、また現行憲法の精神も体現するものだ。

同院の学部委員を務める民法学者の王家福氏は「物権法草案の平等な保護の規定は、市場経済の特徴に基づいて決定されたもの」と指摘し、「市場経済は市場主体が同等の権利を有し、同一のルールに従い、対等な責任を負うことを求める。市場主体が平等でなければ、中国の市場経済はたちゆかない」と話す。

▽憲法の規定に基づき、国有財産は国務院が代表して所有権を行使する

「物権法」草案は「国有財産は国務院が国を代表して所有権を行使する。法律に別の規定がある場合は、それに従う」と規定する。

全人代常務委員会法制工作委員会の胡康生主任によると、憲法の規定に基づき、全人代は最高の国家権力機関であり、国務院は最高の国家権力機関の執行機関である。全人代は全国民を代表して国家権力を行使し、法律に基づいて国の全体的な活動における重大問題について決定を下す。具体的な執行機関は国務院だ。

また胡主任は、中国の現行の「土地管理法」「鉱産資源法」「草原法」などの法律は、いずれも国務院が国を代表して所有権を行使することを明確に規定する。このため「物権法」が国務院の国を代表しての所有権行使を規定したことは、現行の管理体制と一致する。政府が国の所有権を行使する場合は、法律に基づいて全人代に対する責任を負い、全人代による監督を受けなくてはならない。

「人民網日本語版」2007年3月11日


 

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