企業はある程度成長すれば国家に力を貸すべき
――政協委員の許栄茂さんを訪ねる


  前言 今期の政協委員のなかで、世茂集団持株有限公司取締役の許栄茂さんのように、不動産業界でこれほどにきわだった人物はいない。2002年、許さんは『フォーブス』に当年の中国富豪ナンバー2として選ばれた。『フォーブス』宛てにいくどもリストアップ拒絶の手紙を許さんは出したそうだ。中国の政協委員、香港中華文化総会副会長等の職務の方が許さんにとってはより大切なのだ。政協会議の休憩時間に記者はこの商界の巨人を取材した。

 記者 どの地の不動産がいちばん成功したか。どうしてだ。

 許栄茂 上海だ。上海は外向性の都市で、台湾人が30人以上、香港・澳門(マカオ)人が数十万人、外国人が五万人住んでいて、膨大な高級住宅消費群を擁する。私が開発するのはほとんどが高級タイプのもので、半数以上は外国人が購入する。

 記者 中国の内陸地区にも不動産のバブル現象が存在するという者もいるが、これをどう見るか。

 許栄茂 内陸地区の都市間に差はあるが、全体的に見るなら、存在しないというべきだ。上海を例にとろう。上海では毎年10万の新婚夫婦が現われる。うち70%が住居を購入する。このほかに毎年数百万平方メートルにおよぶ老朽家屋改造工事がおこなわれる。上海の一人平均GDPの水準も年毎に上昇し、人々の居住にたいする需要は向上する一方だ。昨年の上海の完工規模は1900万平方メートル以上に達した。販売量も1900万平方メートル以上で、大体同じだ。上海の不動産の需要はきわめて旺盛であって、バブル現象は見られない。

 記者 中国の不動産業をどう見るか。

 許栄茂 中国の不動産業は徐々に規範化されている。昨年7月1日、政府は、不動産一級市場はすべて競売にかけると発表した。不動産業にとって非常に有利な措置といえる。また、政府は民衆の住生活に関心を寄せ、住宅購入者にたいして多くの優遇政策を打ち出した。銀行の住宅ローンもスムースにはかどっている。中国のWTO参加後、経済は大きく発展する。自分としては中国の不動産業にたいして確固とした自信を持っている。

 記者 非公有制経済の代表として今期の政協大会に参加して思うことは。どのような問題にいちばん関心を持っているのか。

 許栄茂 現在のところ、非公有制経済人にたいして偏見を持つ人たちがいる。非公有制経済の社会にたいする貢献はきわめて大きく、税収や就職などの面で解決した問題はまことに多い。今期政協の代表として、政府には市場入り許可の尺度を適当にゆるめ、政策的にある程度のサポートを与えてほしい。このほか、政府として私有財産の保護を法律に書き込んでもらいたい。確固として非公有制経済の成分を発展させる、と政府は公言し、私有財産保護の法律草案を人代常委会に提出したのはまことに喜ばしい。われわれは「安心剤」を服用したようなものだ。

 記者 今期大会ではどのような議案を提出したのか。

 許栄茂 「区域経済を発展させ、両岸の平和統一を促す」というものだ。近年来、両岸統一促進の工作をも務めてきた。われわれの企業が発展できたのも現今の泰平の世のおかげだと考えて来た。しかし台湾はいまだに平和統一されていない。大いに遺憾なことだ。企業がある程度成長したなら、国家のために力を貸すべきで、自らの努力を通じて両岸の平和統一を促したい。

                     (本誌 王浩) 2003.3.11