政府活動報告
国務院総理 朱鎔基
(2002年3月5日 第10期全国人民代表大会第1回会議にて


 代表のみなさん

 今期政府は1998年三月に発足し、まもなくその任期を終える。ここに、私は国務院を代表し、第10期全国人民代表大会第一回会議において過去五年間の活動の報告をおこない、今年の活動についての建議を提出し、その審議を求めるとともに、全国政治協商会議の委員のみなさんにもご意見を求めたいと思う。
  
 一、過去五年間の政府活動の回顧

 第9期全国人民代表大会第一回会議開催以来の5年は、非常に平凡ならざる5年であった。今期政府の初期には、アジア金融危機の衝撃にさらされ、世界経済の成長が鈍化し、国内の産業構造の矛盾もきわめて際立っており、国有企業から多数の一時帰休者が出た。1998年、1999年には連続して特大級の洪水・冠水の災害に見舞われた。だが、全国各民族人民は中国共産党の指導の下、団結奮闘し、前進し、ねばり強く戦い、さまざまな困難に打ち勝ち、改革開放と経済・社会の発展は世を挙げて認めるところの偉大な成果を勝ち取った。われわれは現代化を目指す建設の第二段階の戦略目標を勝利のうちに達成し、第三段階の戦略目標へと邁進し始めている。

 5年来、国民経済は良好な発展の勢いを保っており、経済構造の戦略的調整は重要な一歩を踏み出した。

 ――経済は持続的でかなり速いテンポの成長をとげた。国内総生産(GDP)は1997年の7兆4000億元から2002年の10兆2000億元に伸び、不変価格で計算すると、年平均7・7%の伸びとなった。産業構造の調整は明らかに効果をあげた。食糧など主要農産物の供給は長期的な不足状態から脱却し、総量の均衡と豊作の年には余剰があるという歴史的転換を達成した。情報産業に代表されるハイテク産業が急速に台頭してきている。在来工業の改造のテンポが加速した。現代サービス業は急速な発展を遂げた。経済成長の質と効率はたえず向上した。国の税収は連年大幅に伸びている。国の歳入は1997年の8651億元から2002年の1兆8914億元に増え、年平均2053億元増えた。国の外貨準備高は1399億ドルから2864億ドルまでに伸びた。5年間で完成した社会固定資産投資は累計17兆2000億元に達した。特に6600億元の長期建設国債を発行して、銀行の貸付とその他の民間資金を引き出し、投資規模は3兆2800億元となり、長年来やりたくても力不足で果たせなかったことを数多くやり遂げた。社会の生産力は新たな段階に上り、国の経済力、リスク防御能力と国際競争力は目に見えて増強された。

 ――インフラ整備の成果は著しい。われわれは力を集中し、全局に関わる一群の重要なインフラ・プロジェクトを完成させた。新中国の建国以来、最も大規模な水利事業の整備を行った。この5年間における全国の水利建設への投資は3562億元であり、価格変動要因を差し引くと1950年から1997年末までの全国の水利事業整備への投資総額に相当するものである。一群の重要かつ大きな水利施設プロジェクトが相次いで着工され、完工した。3万5000キロの河川堤防補強工事が着工され、3500キロ余りに及ぶ長江の基幹堤防と1000キロ近くに及ぶ黄河の堤防補強工事が完成し、その洪水防御能力が大いに強化された。世界の注目を引いた長江三峡ダム水利センターの第二期工事はまもなく完成し、黄河の小浪底など水利センターの工事も運行し始め、「南水北調」(南部の水を北部に導くこと)プロジェクトが実施され始めた。交通事業の整備はかつてない発展を遂げ、現代総合輸送システムが基本的に形成された。この五年間における全国の自動車道路整備への投資額は1兆2343億元となり、価格変動要素を差し引くと、1950年から1997年までの全国自動車道路整備投資額の1・7倍となった。自動車道路の開通距離は1997年の123万キロから2002年の176万キロに伸び、そのうち高速道路は4771キロから2万5200キロに伸び、世界39位から一躍世界二位となった。鉄道運営距離は6万5969キロから7万1500キロに伸び、この5年間の新規敷設分は5944キロ完成し、そのうち4603キロが複線化され、5704キロが電化された。50の空港を新規建設し、改造、拡充した。港における1万トン級以上のバースの貨物取扱能力は新たに1億4400万トン増加した。郵便・電信・電話事業の整備は飛躍的発展をとげた。長距離光ファイバーケーブルは1997年の15万キロから2002年の47万キロに伸びた。固定電話と移動電話のユーザー数は8354万から4億2100万に増加し、世界一位になった。エネルギー資源の建設は引き続き強化され、発電ユニット容量は1997年の2億5400万キロワットから2002年の3億5300万キロワットに増加し、都市計画と公共施設整備は目に見えて強化され、多くの都市の姿が一新された。インフラの著しい改善はわが国の経済成長の底力を大いに増強することになった。

 ――西部大開発は幸先のよいスタートを切った。西部大開発戦略が実施されたこの3年以来、国は建設事業への投入を増やし、財政の移転支払を増やし、財政・租税の面で優遇政策を実施するなどの措置を講じて西部地区の発展を力強く促した。新規着工した36件の重点プロジェクトの投資総額は6000余億元である。青海=チベット鉄道、西気東輸、西電東送、水利センター、基幹自動車道路など重要なプロジェクトの整備が順調にすすめられている。「アスファルト舗装道路を県に至るまで」、「電気を郷に至るまで」、「ラジオ・テレビを村に至るまで」普及するなどのプロジェクト整備の実施が加速された。生態環境保全と整備への取り組みにいっそう力を入れることになった。農村の自動車道路、中・小型水利施設、人間と役畜・家畜の飲み水と科学技術、教育施設の整備が加速された。東部と中西部地区の経済技術協力がいっそう強化された。

 ――持続可能な発展の能力が増強された。5年間の全国における環境保全と生態環境整備への投資は5800億元となり、1950年から1997年までの投資総額の1・7倍となった。耕地の樹林への復元、天然林の保護、北京・天津地区の風砂発生源の防砂対策などの六大林業生態プロジェクト整備を全面的に実施した。この5年間における全国の造林面積は2787万ヘクタールに達し、伐採や放牧を禁止し、3153万ヘクタールの山林の育成を行ない、382万ヘクタール耕地を樹林に復元し、水と土壌の流失対策を26万6000平方キロも実施し、570万平方キロの土地で砂漠化対策を推し進めた。環境汚染深刻化の趨勢は全般的に抑制された。主要汚染物質の排出総量は引き続き減少している。重点都市と地域の環境の質は幾らか改善された。資源の保護には新たな進捗が見られた。地質探査の成果は大きかった。災害を未然に防ぎ、軽減する成果は著しかった。人口の自然増加率は6・45‰に下がった。安定した低い生育水準の時期に入った。

 五年来、改革開放には突破が見られ、社会主義市場経済体制が初歩的に確立された。

 ――所有制構造の改革は一歩進んで調整され、充実した。公有制経済は調整と改革の中で発展を遂げ、大きく成長し、公有制の多種類の実現形態の模索で成果を収めた。国有経済の構造調整のテンポが加速され、その支配力と競争力が目に見えて増強した。国有企業の三年間の改革と苦境脱出の目標は基本的に達成された。大多数の国有大型・中型基幹企業は現代企業制度を初歩的に確立し、一群の実力のある、活気にあふれた、競争力に富む、優位のある企業が現れた。国有中小企業はいっそう自由化、活性化された。独占業種の管理体制の改革は実質的な一歩を踏み出した。都市農村における集団経済が新たな発展を見せた。株式制経済がたえず拡大した。個人経営、私営などの非公有制経済はより速い成長をとげ、経済の発展、就業機会の増加、市場の活性化、輸出の拡大の面で重要な役割を果たした。

 ――現代市場システムの整備が全面的に展開された。国民経済の市場化の度合いがいっそう高められ、資源配分における市場の基礎的役割が目に見えて強化された。公共サービスとエネルギー、交通分野の価格改革がたえず深まった。資本、財産権、土地、技術および労働力市場の発展が加速された。現代流通とマーケティングの方式がたえず開拓された。市場経済秩序の整頓と規範化は段階的成果をあげた。全国では密輸や税金のごまかし、外貨の詐取、ニセモノや粗悪品の製造・販売を取り締まる特別の取り組み、文化、観光、建築の関連市場、定期市および生産安全の秩序をめぐっての特別対策が勢いよく行われた。法に則って多くの経済違法案件を取り調べ、処罰を与え、市場の秩序をゆゆしく破壊した犯罪分子に処罰を与えた。市場の環境と消費の環境は逐次改善された。

 ――金融、財政租税、投融資体制改革は引き続き深化された。社会主義市場経済の発展に適応する金融システムが初歩的に形成された。金融調節コントロールパターンを逐次整備し、中国人民銀行の管理体制を改革した。全国統一の証券保険監督管理体制を構築した。国有単独資本の商業銀行と政策的銀行の改革がたえず推し進められた。中小商業銀行の組織構造が最適化された。ノンバンク(金融機関)の整頓と規範化の作業が重要な進展を見せた。「法制化、監督・管理、自己規律、規範化」という方針を堅持し、証券業は規範化の中で発展をとげ、保険業の改革はたえず深化した。農村協同組合基金を整理し、撤廃した。法によって社会における金融の不当な経営などの違法行為を取り締まった。金融に対する監督・管理が逐次強化され、金融リスクの防御、解消は成果をあげ、銀行の不良資産比率は逐次低下している。社会主義市場経済に適応する公共財政システムの枠組が初歩的に確立された。財政体制は分税制の改革をふまえ、所得税の共有という改革を実行した。中央と省の二段階で部門予算制度を実施し、「収支二本立て」管理と国庫納付制度改革のテスト作業が穏当に推進された。租税制度改革と租税徴収・管理の改革の成果は著しかった。投融資体制の改革は逐次深化され、投融資のルートがいっそう広げられ、投融資方式が多様化し、プロジェクト法人責任制、入札・落札制、契約制、プロジェクト施工監理制が初歩的に確立した。都市部における住宅制度の改革は目に見えて成果をあげた。

 ――社会保障システムの枠組が基本的に確立した。都市部の基本養老保険制度と基本医療保険制度の整備は重要な一歩を踏み出した。国有企業の一時帰休者である職員・労働者の基本生活保障制度、失業保険制度、都市住民の最低生活保障制度を確立した。社会保障のカバー率はたえず引きあげられ、全国都市部の基本養老保険、基本医療保険と失業保険の加入者数は大幅に増加した。保障ラインの条件に適った都市部における生活難の住民を最低生活保障の範囲に逐次組み入れ、基本的に確保すべきものはすべて確保している。全国社会保障基金を確立し、すでに1242億元を積み立てた。都市部職員・労働者の基本医療保険制度、医療・衛生体制、薬品生産流通体制の改革は重要な進展をとげた。農村における新しいタイプの合作医療制度のテストが始まった。社会保障システムの急ピッチの整備は社会の安定維持、改革の深化、構造の調整と発展の促進のために力強い保障を提供することになった。

 ――対外開放はさらに広がり、深化した。対外貿易は連続して幾つかの大台を突破した。対外貿易輸出入総額は1997年の3252億ドルから2002年の6208億ドルに伸び、世界におけるランク付けは10位から5位へと上がった。輸出総額は1828億ドルから3256億ドルに伸びた。輸出商品の構成がたえず最適化され、サービス貿易は穏当に発展し、観光入国者数と外貨収入が大幅に増えた。外資の利用水準は目に見えて向上した。五年間に実際に利用した外国資本の直接投資は累計2261億ドルであり、1979年から1997年までの総額を上回った。ハイテク産業、基盤施設とサービス業の導入した外資は目に見えて増えた。「海外進出」戦略を実施し、対外投資プロジェクト請負と労務協力がたえず拡大した。15年もの並々ならぬ努力によって、わが国は2001年12月に世界貿易機関(WTO)に正式に加盟したこと、これは対外開放が新たな段階に入ったことを示すものである。WTO加盟後、われわれは公約したことを確実に守り、義務を履行し、権利を行使し、かなりよい名声を博し、対外協力を促進した。 

 ここ五年来、科学技術の創造・革新能力が目に見えて強まり、教育事業はめざましい発展を遂げた。

 ――基礎研究、ハイテク研究および応用技術研究は重要な進展を見せた。国の創造・革新システムの建設が積極的に推進された。情報技術、生命科学、航空・宇宙飛行技術などの分野の成果は際立ったものがある。イネゲノム高精度解読図の完成、一〇MW高温ガス冷却原子炉(HTGR)実験プロジェクトの完成、スーパー・パラレル・コンピューター開発の成功、「神舟」シリーズの宇宙船飛行実験の成功などは、わが国が関連分野で世界の先進レベルに到達したことを示している。一群の国の重点実験室が建設され、一群の重要な科学プロジェクトが実施され、一群の国家プロジェクト技術研究センターの建設が始まった。科学技術の成果の市場化、産業化の進捗が目に見えて速められた。ここ五年間に国内で登録認可された科学技術の成果は14万件余り、特許を取得したものは52万件に達する。哲学・社会科学の研究は数多くの喜ばしい成果を収めた。知的財産権保護はいっそう強化されている。

 ――教育事業が急速な発展を遂げた。全国的範囲で九年制義務教育の基本的普及と青年・壮年非識字者の基本的一掃を達成した人口の地域的カバー率は、1997年の65%から2002年の91%に引き上げられた。高校段階の教育が強化された。大学は1999年から学生募集規模を拡大しつづけており、大学入学率は36%から59%に上昇した。2002年における高等教育在学生総数は1600万人に達し、1997年の2・3倍となっている。この5年間に卒業した全国の大学本科・専科学生は1300万人、大学院生は31万人である。大学における生活・サービス部門の社会化改革は重要な進展を見せた。学生寮の新築、改築面積は4800万平方メートルに達し、1950年から1997年までの総建設規模を上回った。構造がかなり完備し、専攻種目と学科が整った職業および成人教育の体系が一応整備されてきている。特殊教育、早期教育が重要視されている。民営による教育が急速に発展した。資質教育が絶えず強化され、生徒・学生の徳育・知育・体育・美育における全面的な発展を促進した。

 ここ五年来、社会主義の民主政治と精神文明の建設の成果は著しい。

 ――民主政治の建設は絶えず強化されている。各クラスの政府は自覚を持ってその同クラスの人民代表大会およびその常務委員会の監督を受け、自ら進んで人民政治協商会議との連携を強め、真剣に民主諸党派、工商連合会、無党派人士と人民団体からの意見に耳を傾けている。末端における民主は一段と拡大され、村民自治、都市部住民自治および村の事務、企業の事務、政務の開示が逐次実行されている。都市部におけるコミュニティーの整備が引き続き進んでいる。法によって国を治めるという基本的方略を貫徹し、法によって行政を進めることを堅持したため、政府における法秩序整備のプロセスが速まった。五年間にわたり国務院は法案を50件提出し、行政法規を150件公布した。社会主義市場経済の発展とWTO(世界貿易機関)加盟の要請に応えるため、2000年末以前に公布した756件の行政法規に対し全面的な整理を行ない、そのうち七一件が廃止され、80件が失効を布告された。国務院の諸部門は渉外規則と関連政策・規定を合わせて2300件整理し、そのうちの830件を廃止し、325件を改正した。法律普及の広報・教育が掘り下げて行なわれ、公民の法意識が強まった。社会の法制化した管理レベルは絶えず向上した。行政監察、会計監査と経済監督の強化は、法による行政の推進、腐敗反対・廉潔提唱と重大案件の告発・処理などの面で重要な役割を果たしている。陸地行政区の境界測量画定作業が全面的に完成し、海域の境界測量画定作業が全面的に繰り広げられている。社会団体管理の活動が強化された。邪教組織を断固として取り締まった。社会治安総合対策における諸般の措置がいっそう貫徹され、社会治安の状況は好転し、人民大衆の安全感は強まった。

 ――精神文明の建設は新たな成果をあげた。ケ小平理論および「三つの代表」という重要な思想の学習・宣伝活動が深く繰り広げられている。あくまでも法によって国を治めることと、徳をもって国を治めることを結びつけた。文明を重んじ、新しい気風を樹立することを主な内容とする精神文明作りの活動が勢いよく展開されている。思想・モラルの建設が引き続き強化された。科学知識がいっそう普及し、科学的精神が広く発揚されている。文学・芸術、報道・出版、ラジオ・映画・テレビ放送などの諸事業は全面的に発展し、優れた作品が絶えず生み出された。ラジオ・テレビ放送のカバー率と質は著しく向上している。文化、医療・衛生、スポーツの分野の改革と発展が加速している。文化施設整備と各種特別項目への経費投入により大きな力を入れ、数多くの図書館、博物館、科学技術館、文書保存館、文化館が新築もしくは改築、増築された。文化財保護、文書保存の仕事は新しい成果を勝ち取った。「ポルノ一掃」、「不法出版物取締り」のキャンペーンが絶えず深く繰り広げられている。対外文化交流事業はかつてない活気を呈している。都市農村における医療・衛生の仕事は強化され、重大な病気の予防・抑制で効果を収めた。災害後の疾病・疫病予防の仕事を強化したため、特大級の洪水・冠水災害の発生後においても大規模な疫病の蔓延を防ぐことができた。中国女性・児童事業発展綱要を公布し、実施に移した。青少年の教育と保護の活動が強化された。高齢者対策の仕事がいっそう強化された。身障者事業はかなり大きな発展を見せている。大衆スポーツは活況を呈し、競技スポーツはしばしば優れた成績を収めている。五年間に重要な国際試合で延べ485回世界チャンピオンに輝き、世界記録を193回も刷新した。北京が2008年五輪の誘致に成功し、上海が2010年世界博覧会の主催権を勝ち取ったことは、全国各民族人民の愛国心を沸き立たせ、民族的プライドと結束力を強めた。

 ――民族、宗教、華僑事務の仕事が強化されている。平等、団結、相互援助の社会主義的民族関係が一段と発展している。民族地域自治制度が絶えず整備されている。少数民族の平等な権利と民族自治地域の自治権利が保障されている。国は民族地域への助成により大きな力を入れ、民族地域の経済・社会の発展を加速させた。宗教信仰の自由を保障する政策が一段と貫徹、実行され、宗教事務の管理は逐次規範化、法制化の軌道に乗っている。華僑政策が引き続き徹底して行なわれ、華僑事務に関する仕事が絶えず強化された。

 ここ五年来、人民の生活は著しく改善され、全般的に小康(いくらかゆとりのある)水準に達した。

 ――都市農村の住民の所得、収入は増えつづけている。都市部住民家庭の一人当り可処分所得は1997年の5160元から2002年の7703元に増え、年平均の実質伸び率は8・6%となった。農村住民家庭の一人当りの純収入は2090元から2476元に上昇し、年平均で実質3・8%増となっている。都市農村住民の人民元預貯金残高は4兆6000億元から八兆7000億元となり、住民の所持している株、債券などその他の金融資産もかなり増加している。農村部の貧困人口は4960万人から2820万人に減った。この五年間の経済の比較的速い成長と物価水準の比較的低い状況のもとで、人民大衆はより多くの実益を手にした。

 ――消費レベルは目に見えて向上している。都市農村の市場は繁栄して、全社会の消費財小売総額は1997年の2兆7300億元から2002年の4兆1000億元に上昇し、年平均実質伸び率は10・5%となっている。都市部の住民一人当りの住宅面積は17・8平方メートルから22平方メートル近くとなり、農村部の住民一人当りの住居面積は22・5平方メートルから26・5平方メートルに増えた。テレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電がいっそう普及し、パソコン、乗用車がますます多く住民の家庭に入り込んでいる。公共サービス施設、一人当たりの緑地面積が絶えず拡大している。法定祝日・休日数が増え、観光に出る人たちの数が大幅に増加した。スポーツ・健康増進と文化的レジャー・娯楽の消費が著しく増大した。医療・保健条件が絶えず改善され、人民大衆の健康水準は一段と向上している。2002年に人々の期待寿命は71・8歳に達し、中程度の先進国のレベルに近づいた。

 わが国のような13億近くの人口を擁する国が、人民の生活を全般的に小康水準に到達したこと、これは社会主義制度の偉大な勝利といえるものであり、中華民族の発展史上における新たな一里塚である。

 ここ五年来、国防と軍隊の建設は新たな一歩を踏み出した。人民の軍隊は新しい時期における軍事戦略方針を貫徹し、科学技術による軍の精鋭化戦略を実施した。軍隊の革命化、現代化、正規化の建設が引き続き強化され、国防力と軍隊の防衛作戦能力が向上している。期限どおりに兵員50万人の削減目標を達成した。思想・政治の建設が着実に進められ、成果が現れている。後方支援保障体制の改革が絶えず深化している。兵器装備の現代化水準が著しく向上した。人民解放軍、武装警察部隊、予備役部隊および民兵は国の主権、安全の擁護、経済建設への支援と災害危険対処・救助において重要な貢献をした。国防分野の科学技術研究が強化され、国防科学技術工業が新たな発展を遂げた。国防動員の仕事は絶えず進歩を見せている。軍隊擁護・軍人遺族家族優遇、政府擁護・人民愛護の活動が深く繰り広げられ、軍隊と政府、軍隊と人民の間の団結は一段と強められた。

 ここ五年来、祖国統一の大事業は新たな進展を見せている。香港の祖国復帰に続き、1999年12月にわが国政府は澳門に対する主権の行使を回復した。「一国二制度」の方針を堅持したため、香港特別行政区基本法と澳門特別行政区基本法は貫徹、執行された。中央政府は、香港、澳門の二つの特別行政区の行政長官と政府が法に依って施政することを全力をあげてバックアップした。香港、澳門の社会、経済は安定している。われわれは「平和統一、一国二制度」の基本方針および台湾問題の解決に関する江沢民主席の八項目の主張を堅持し、断固として「台湾独立」を企む分裂勢力と戦った。両岸間の交流と往来を促し、「三通」(直接の通信、通航、通商)を推し進め、祖国の平和的統一のプロセスを速めるために多くの仕事をした。

 ここ五年来、外交活動は新しい局面を切り開いた。国際情勢の複雑な変化に直面して、わが国は独立自主の平和的外交政策を堅持して、二国間および多国間の外交活動を幅広くくりひろげ、積極的に国際的交流と協力に参与したため、国際的地位は著しく向上した。わが国と周辺諸国との善隣友好・協力関係は一段と発展し、発展途上諸国との連帯・協力は絶えず強化され、先進諸国との関係は改善され、発展を遂げた。上海協力機構(SCO)の設立により、地域的安定と経済協力が促進された。中国・ASEAN自由貿易圏設立のプロセスが始動し、多くの分野における東南アジア諸国連合との協力が強まっている。わが国は国連とその他の国際および地域の組織の中で、積極的な役割を果たしている。われわれは国家主権、領土保全と民族の尊厳を断固として擁護し、外的勢力がわが国の内政を干渉する企てをくじき、国際社会から幅広い支持を勝ち取った。わが国は積極的に国際反テロ協力に参与するとともに建設的な役割を果たした。

 代表のみなさん

 過去五年間に、「第九次五ヵ年計画」は勝利のうちに達成され、「第十次五カ年計画」は幸先よいスタートを切った。この五年間は、全国各民族人民が中国共産党の第十五、十六回大会の精神の導きのもとで、中国の特色のある社会主義の道に沿って勢いよく邁進した五年であり、国が日進月歩の変貌を遂げ、諸般の事業がめざましく発展をとげ、人民の生活が著しく改善された五年であり、わが国の社会が安定し、各民族が団結し、国際的影響力が日増しに大きくなった五年である。今期政府は真剣に職責を履行して、国の繁栄を促進し、人民の福祉を増進させるために、しかるべき貢献をした。

 この五年間の政府の活動において、われわれは終始一貫してケ小平理論を指針とすることを堅持し、「三つの代表」の重要な思想を真剣に貫徹し、思想を解放し、事実に立脚して真理を求め、党の基本路線と基本綱領を全面的に実行し、経済建設というカギをしっかり掴み、改革・開放を大いに推進し、改革・発展・安定という三者間の関係を正しく処理し、積極的に物質的文明と精神的文明のバランスのとれた発展を促してきた。豊富多彩で生気に満ちた実践の中で、少なからぬ有益な経験を積み上げた。

 ここ五年来のわれわれの主要な体得は次の幾つかの方面にある。

 (一)マクロコントロールの方向と度合いを正しく把握することを堅持し、積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実施した

 社会主義市場経済を発展させるには、マクロコントロールの強化とその改善をはからなければならない。マクロコントロールは経済の比較的速いテンポの安定成長を保つことを主眼とし、内外の経済情勢の変化をすばやくとらえ、予見性、対応性及び有効性を増強する必要がある。ここ数年、国際経済環境は厳しく、国内では有効需要の不足といった困難な局面に直面している。この状況の下、われわれのとってきた最も重要な措置は、マクロコントロールの重点を、適度引き締めの財政政策と通貨政策の実施およびインフレ対策から内需拡大の方針へと果敢に転換し、積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実施し、デフレ傾向を抑制するとともに、実践の過程で政策・措置を適時に充実させ、コントロールの度合いを把握して確実な成果の取得をはかることであった。

 財政収支のバランスをとり、入るを量りて出ずるを制すことを堅持すること、これは経済活動で守らなければならぬ重要な原則である。ここ数年、積極的な財政政策を実施し、長期建設国債を発行してきたことは、特定の状況に応じた特別の政策である。われわれは、経常予算においては赤字を計上せず、建設予算においては年頭に定められた赤字の規模を超えないことを首尾一貫して実施してきた。銀行預金がかなり増え、物資の供給が豊かになり、物価の持続的なマイナスの伸びが見られ、金利水準も比較的低いといった条件のもとで、国債の発行による建設を行なうことは、遊休生産力を生かして経済成長を牽引することが可能である一方、銀行の利子負担を軽減することもでき、インフレを招来することも避けられ、一挙に多くのメリットが得られる。長期建設国債資金を運用する際、インフラ建設を重点的にサポートするとともに、産業構造の調整、企業の技術改良、科学技術・教育の発展及び生態環境の建設を促すことと結び付け、中・西部地区への傾斜に心を配った。そして、国債プロジェクトの管理を強化し、重複した建設と過度に先走りした建設を防止し、資金の運用効率を高めた。投資需要を拡大すると同時に、消費需要を育成、拡大することにも気を配った。主として都市農村における中・低所得層住民の収入の上昇に努めた。1999年以来、三回も政府機関・事業体における職員の基本給基準と定年引退・退職者の年金を引き上げ、年末一括払いのボーナス制度を実施し、生活難の辺境地域向け手当制度を打ち立てた。国有企業における定年引退・退職者の待遇を引き上げた。各種社会保障対象向けの補助金基準をかなり大幅に引き上げた。さらにあらゆる措置を講じて農民の収入を増やした。消費を奨励する政策を実施し、経済成長に対する投資需要と消費需要という二重の牽引力を引き出すことに努めた。

 ここ数年のマクロコントロールの成功の原因はまた、金融の仕事を高度に重要視し、穏健な通貨政策の実施を堅持することによって、経済発展に必要とされる金融のサポートを保ったばかりでなく、銀行の貸付を盲目的に緩めることをも防ぎ止めたことにもある。銀行は国債プロジェクトのための関連貸出を優先させ、市場があれば、その効率も期待できる、信用のある企業の流動資金と技術改良向けの貸出をサポートした。資金の需給の変動と経済発展の需要に応じて、1998年以来あわせて五回にわたって銀行の預金利子と貸出金利を引き下げた。住宅、学資援助など消費向けの貸出を発展させ、2002年末までの消費向け貸出残高は1兆700億人民元に達した。上述の諸措置は、企業の投資を増やし、住民の消費を拡大する上で重要な役割を果たしている。

 一貫して続けてきた積極財政と穏健な通貨政策は比較的速いテンポの経済成長を促し、財源を養い、拡大した。同時に、財政・租税体制を絶えず充実させ、税金の徴収と管理を強化することによって、中央の財政力は目に見えて増強され、地方への移転支払の度合いも次第に大きくなった。租税還付と体制的補助のほかに、中央財政の地方への移転支払総額は1997年の664億元から2002年の4025億元に増え、五年間で合わせて1兆2319億元となった。このうち、地方の「二つの確保」と「最低生活保障」に振り向けられた支出は1777億元、地方の政府機関・事業体の職員の賃上げに振り向けた支出は1755億元である。それは内需を拡大し、地域間がバランスよく発展することを促し、社会の安定を維持する上で重要な役割を果たした。

 (二)経済構造の調整を主軸とすることを堅持し、経済成長の質と効率の向上に力を入れた

 発展は絶対的な道理であり、わが国の抱えているすべての問題を解決するカギとなるもので、国民経済が比較的速いテンポで成長していくことを保たなければならない。発展には新しい発想がなければならず、市場と効果的なスピードがなければならない。これこそが正真正銘の、健全な発展というべきものであろう。わが国の経済の発展に段階的変化が生じた新たな情勢下で、断固として経済構造に対して戦略的調整を施さなければならない。われわれは各方面の主要なエネルギーを経済構造の調整、経済成長の質と効率の向上へと導くことに気を配り、成長のスピードを構造、品質、効率と統一させることに努めた。

 われわれは産業構造、地域間の経済構造、都市農村構造などを全面的に調整することを堅持し、産業構造を調整するというこのカギとなるものにしっかり力を入れて取り組んだ。一、インフラ建設をさらに強めたこと。これは加工工業に生産力の過剰が見られる状況の下での構造調整の必然的選択となり、インフラの「ボトルネック」による制約を解消することも可能であれば、設備製造業など関連業種の発展を牽引することもできる。インフラ建設を進める過程で、統一的に企画し、重点をはっきりさせ、配置を合理化し、質を第一とすることを堅持して、加工工業プロジェクトの新規立件を厳しく抑え、低いレベルでの重複した建設を防ぎ止めた。二、ハイテク産業、特に情報産業の発展に力を入れ、国民経済と社会の情報化を積極的に進めていること。1000項目余りのハイテク産業化モデルプロジェクトの実施を組織することによって、独自の知的財産権を有する一群の重要科学技術成果の短期間における産業化を実現させた。ハイテク産業開発区と工業パークの役割を十分に発揮させ、ハイテク産業化サービス・システムを積極的に発展させた。改革開放を推進し、資金の投入を増やすことによって、わが国の情報産業が飛躍的発展を遂げた。三、積極的に在来工業の改造とグレートアップに取り組んだこと。国債の利子補給、技術改良プロジェクトの審査・認可手続きの改善などの方法をとって、重点業種、重点企業、重点製品に対する大がかりな技術改良と構造調整をサポートした。五年間に合わせて全国の技術改良に振り向けられた投資は2兆6600億元に達し、その前の五年間より六七%伸びた。一群の大手企業は自力で技術水準を向上させ、競争力を増強させる新しい道を切り開いた。同時に、経済、法律と必要な行政手段を総合的に運用し、紡績業を突破口として、徐々に石炭、冶金、建材、石油化学、製糖などの業種へと広げ、品質が粗悪で、資源の無駄遣いになり、汚染もひどければ安全な生産を営む条件も備わっていない一群の企業を閉鎖し、一群の立ち遅れた設備と技術、工程を淘汰し、一部の過剰生産力を圧縮した。四、サービス業の発展に努めたこと。市場参入の基準を緩和し、発展のための環境を改善し、現代的経営方式と技術を推し進めて、在来のサービス業がさらに一歩発展するよう図った。同時にあらゆる手を尽くして、現代サービス業の発展に拍車をかけるよう積極的にサポートし、奨励した。

 品質を向上させることは国の振興に通じる道であり、経済効率を高め、競争力を増強するための根本的な方策でもある。われわれは国際スタンダードを採用し、先進技術を普及させ、認証・認可の仕事を強化し、品質管理を強化することによって、各業種の製品品質とサービスの質を絶えず引き上げた。

 (三)「三農」問題を際立った位置におき、農業の基礎としての地位を固め、強化した

 「三農」、つまり農業、農村、農民の問題はわが国の改革・開放と現代化建設の全局にかかわるものであり、いついかなる時においてもそれをおろそかにし、手を抜いてはならない。ここ数年、農業の総合生産能力が大幅に伸び、国民経済の発展と社会の安定が力強くサポートされることになった。同時に、農産物の供給過剰、価格の下落、農民の収入の上昇のスローダウンなどの問題も現われた。このような状況が改善されなければ、農民の意欲がゆゆしく損なわれ、農業の基礎としての地位を揺るがし、ひいては国民経済の全局に危害を及ぼしかねない。われわれは農業を強化し、農村経済を発展させ、農民の収入を増やすことを経済活動における最重要課題として堅持しつづけ、大いに工夫をこらした。

 一、農業の構造調整を推し進めたこと。政策的支援、情報サービスと技術サービスを強化することを通して、農民が市場の需要に照らして作付構造、品種構成を調整するよう導き、牧畜業と水産養殖業を発展させ、農業生産の地域的配置の調整を促した。「公司と農家の提携」、「受注農業」などの方式を大いに普及させ、農業の産業化経営を発展させることによって、幾千万の農家の市場参入を促した。それと同時に、食糧の供給が潤沢であるという有利なタイミングを逃がすことなく、耕地の樹林への復元作業を実施し、これは農業の構造調整を促したばかりでなく、直接農民の収入増をももたらした。農業構造を調整する過程で、その地元に応じて利点を生かし、行政命令に頼らず、農民の自由意思を尊重することを堅持した。

 二、食糧・綿花流通体制の改革を深めたこと。買付販売の市場化をはかることは食糧・綿花流通体制改革の根本的な方向であるが、改革の段取りにおいて、われわれは首尾一貫して実情から出発し、農民の利益と農業生産力を保護することに目を向け、積極的かつ着実に改革をすすめた。1997年には保護価額に基づく農民の余剰食糧の無制限買い上げなどの政策を実施した。1998年にさらに「三つの政策、一つの改革」を提出した。つまり保護価格で農民の余剰食糧を無制限に買い上げること、国有の食糧買付・販売企業に順ざや価額で食糧を販売すること、食糧買上資金運用の一本化の実現に向けて、国有食糧企業の改革を加速させることである。2001年に主要な食糧生産地ではひきつづき保護価格で農民の余剰食糧を無制限に買い上げるとともに、食糧主要販売地で食糧の買上市場とその価格を自由化して著しい成果を上げた。国は食糧流通体制の改革支援のために巨額の資金を投入した。綿花の買付販売の市場化をめざす改革も絶えず深化され、飛躍的な進展をとげた。

 三、農村で租税・料金の改革テストを行ったこと。農民の過重な負担の問題を解決するため、われわれは一連の政策・措置を講じて、2000年より、安徽省などの地域で農村の租税・料金徴収の改革テストを行い、2002年にテスト地域を20の省、自治区・直轄市に広げ、テスト地域の農民の負担を平均30%軽減した。今年の中央財政予算のうち、この改革サポートの資金は305億元に達する。同時に、郷・鎮の機構、農村教育、県・郷財政体制などに関連した改革も行われた。農村における小・中学校・高校教師の給与支給が県による統一的な財政管理へと改められ、これによって教師の給与が期限通り全額支給されることを保障し、農民の負担も軽減された。農村での租税・料金改革は、わが国農村における家庭請負経営の後に続いて実施されるいま一つの偉大な変革となっており、農民の負担軽減と収入増を保障し、農業の発展を促し、農村の安定を維持する上ですでに重要な役割を果たしており、また今後もその重要な役割を果たしつづければ、数億の農民の心からの擁護を得られるであろう。

 四、農業と農村への投入を増やしたこと。これは「三農」問題の解決をはかり、都市と農村のバランスの取れた発展を促す重要な措置である。五年来、国の財政より支出された農村生産助成金と諸般の農村事業費は4077億元に達し、前の五年間の累計額を1852億元上回った。われわれは国債資金を農業と農村におけるインフラへの投入にも数多く振り当て、大河川・湖沼の整備、農村の送配電網の改造、国の食糧備蓄倉庫などの面の建設を重点的にサポートし、さらに、農業と農村における小型基盤施設の整備を助成した。これらの措置は、農民の生産・生活条件を改善する上で重要な役割を果たした。

 五、農村部での貧困扶助のための開発を強化したこと。「八・七」(8年間に7000万人を貧困状態から脱却させる)貧困扶助・難関突破計画を真剣に実行するとともにそれを基本的に達成し、新しい世紀に入る前の十年間における農村部貧困扶助開発綱要を制定し、実施した。開発型貧困扶助の方針を堅持し、貧困扶助への投入の度合いを大きくした。この五年間で、貧困扶助への国の財政資金と公共事業請負による救済資金は480億元に達し、利子補給方式を通じて770億元の貧困扶助融資を計上したが、これらはいずれも従来より顕著な伸びを示した。東部と西部地区の協力による貧困扶助の展開を堅持した。長年の模索を経て、中国の国情にふさわしい貧困扶助のための開発の道を探りあてた。

 六、農村の労働力が合理的に、秩序だって移動するよう導いたこと。農村における余剰労働力が非農産業と都市・町に移動することは、工業化と現代化に向かううえでの必然的な趨勢である。われわれは都市・町化戦略の実施を堅持し、小都市と町を積極的かつ穏当に発展させてきた。農民が就労や就業のために都市部へ流入することをサポートし、農民就労者に対する差別政策とむやみやたらな料金徴収を整理、是正し、彼らの合法的権益を保護すると同時に、それに対する誘導と管理を強めた。都市の繁栄によって農村の発展を牽引し、都市と農村のバランスのとれた発展を促進することは、新しい情勢のもとで「三農」問題を解決する重要な方途である。

 実践が立証しているように、新たな段階における農業と農村の仕事に関する党中央、国務院の政策決定と配置は正しいものである。本期政府は「三農」問題の解決に大いに力を傾けた結果、積極的な成果をあげた。「三農」問題を根本的に解決することは、困難に満ちた長期的な任務であり、たゆむことなく努力することが必要とされるのである。

 (四)国有企業改革の推進を堅持し、再就職活動と社会保障システム整備を着実に強化した

 国有企業の改革は経済体制改革の中心的一環として位置付けられる。改革を断固推進しなければ、国有企業に活路はなくなる。五年来、われわれは社会主義市場経済に向けた改革の方向を堅持し、困難を乗り越えて前進し、厳しい課題に果敢に取り組み、仕事に一層力をいれ、国有企業の改革を深化させる難関突破戦を展開した。

 一、現代企業制度の整備を加速したこと。「財産権をはっきりさせ、権限と責任を明確にし、政府と企業を分離させ、管理を科学的に行う」という要求に基づいて、株式制の改革を積極的に進め、企業統治(コンポレート・ガバナンス)構造を充実させ、企業内部の分配制度、人事制度と雇用制度の改革を深化させ、インセンティブ・メカニズムと制約メカニズムを確立した。それと同時に、条件に合致した国有大型企業の体制転換や上場を奨励した。五年来、国有及び国有持株企業が国内外で442社新規上場し、それによって累計7436億元の資金を調達し、その中には、国外で調達した352億ドルの資金も含まれる。二、企業の優勝劣敗のメカニズムを形成させたこと。戦略上から国有経済の配置を調整し、国有企業の再編をはかり、有力な大手会社と大型企業グループがさらに力をつけ、強大になることをバックアップし、国民経済の重要な支柱と国際競争参入の主力となるようにした。それと同時に、国は職員・労働者を適切に再配置すること、企業と労働契約を解除した職員・労働者に対し、経済的補償を与えること、国務院の認可を経て企業の銀行不良債権を償却することなどの政策・規定を定め、長期的な赤字や債務超過に陥り、黒字転換の望みのない一部の企業や資源が枯渇した鉱山を平穏に破産、閉鎖させることによって、劣勢企業を市場から退出させるメカニズムを形成した。三、企業の負担と歴史的要因により蓄積された重荷を軽減したこと。国有商業銀行が不良資産を集中的に処理する改革と結びつけ、四つの金融資産管理会社を設立し、条件に合致した580社の国有大・中型企業に対して「債権の株式権への転換」を実施することを定めた。「債権の株式化」を実施した企業においては、その資産負債比率が引き下げられ、そのうちの多数が赤字を解消し、黒字へと転換した。効果的な措置をとって、企業の抱え込んだ多数の余剰人員や企業による社会事業運営という諸問題の解決に努めた。四、企業の管理面での創造・革新を積極的に推し進めたこと。企業の情報化を大いに推し進め、コスト、資金と質の面の管理を強化し、企業の現代化管理レベルを全面的に向上させた。五、企業の外部からの監督・管理の強化に力をいれたこと。国務院は前後して192社の重点国有企業及び一群の国有金融機関に監事会を派遣し、国有企業と金融機関の指導者に対し、経済責任の監査を行った。これらは企業の経営と管理面での改善を促進し、国有資産の流失を防ぐうえで、重要な役割を果たした。

 なぜ国有企業の改革がこのように大きな進展を見せるに至ったのか、そのカギはあくまで吸収合併を奨励し、倒産を規範化させ、一時帰休者を再配置し、人員削減・効率増大をはかり、再就職プロジェクトを実施するという方針を実行し、再就職と社会保障システムの整備を確実に推し進めたことにある。ここ数年来、党中央、国務院は二回にわたって全国再就職対策会議を開催し、一連の政策と措置を相継いで制定、実行した。一時帰休者に対しては、再就職サービス・センターの設立を通じてその基本的生活を保障し、また社会保険料を代納し、再就職の実現を促進する。閉鎖した破産企業に対しては、なによりもまず職員・労働者を適切に再配置しなければならないのである。1998年以来、国有企業の一時帰休者は2700余万人に達し、そのうちの90%以上が再就職サービス・センターに入り、前後して1800余万人がさまざまなルートと方式を通じて再就職を果たした。それと同時に、「三つの保障ライン」を逐次充実させた。各クラスの政府は年々社会保障と再就職への資金投入を増やし、2002年に「二つの確保」と「最低生活保障」のために計上された中央財政資金は594億元に達し、1998年度の6・2倍となった。2001年より、遼寧省全域における都市部の社会保障システム整備のテスト作業が目に見えて成果をあげ、全国での逐次普及に向けて、経験を積み上げた。

 実践が立証しているように、国有企業の改革と再就職の促進、社会保障システム整備の強化に関する党中央、国務院の一連の方針・政策は正しいものであり、相互に関連し合った完全な体系でもある。全面的にそれらを貫徹、執行してこそはじめて国有企業改革の目標の達成が保証できるのである。

 (五)対外開放のレベルを全面的に向上させることを堅持し、国際経済・技術協力と競争に積極的に参与した

 経済のグローバル化が深く進展し、国際競争が日ましに激化する情勢のもとでは、世界の発展の潮流に順応し、対外開放の拡大を堅持してこそはじめて、国内外の二つの市場、二つの資源をよりよく利用し、自国を発展させ、強大にすることを速めることが可能となるのである。国際経済の厳しい環境に直面して、われわれは積極的に対処し、プラス面を生かして、マイナス面を避け、挑戦をチャンスに変え、対外開放の新しい局面を切り開いた。

 ここ数年来、内需拡大の方針を堅持すると同時に、輸出の拡大に関してもいささかもゆるがせにしなかった。一九九八年後半、アジア金融危機の影響を受けて、わが国の対外貿易の輸出にマイナスの伸びが見られたことがあった。このような状況の下で、われわれは人民元を切り下げないことを堅持し、輸出を奨励する一連の政策・措置を思い切ってとった。あくまで市場の多元化戦略と品質で勝負する戦略を実施し、新興市場の開拓に大いに力を入れ、輸出商品構造の改善に力を入れ、その質的向上とグレード・アップをはかった。対外経済貿易体制の改革を深化させ、対外貿易の経営主体の多元化を推進し、通関港の管理レベルと通関能力を高めた。効果的な措置をとったため、さまざまな困難を克服し、輸出には大幅な伸びが見られた。それと同時に、国内で至急必要とされる設備、技術と欠乏している原材料を大量に輸入することによって、経済の発展と技術の進歩を促進した。実践が立証しているように、人民元の為替レートを安定させ、あらゆる方策を講じて輸出の拡大をねらう政策決定と措置は正しいものである。

 われわれは条件の整った各種所有制の企業が海外へ進出し、国際市場を開拓し、国外で投資して企業を運営することを奨励し、設備、部品と労務輸出を促進した。国によってそれぞれ異なる投資、協力方式を取った。発展途上国、とくに周辺諸国に対しては経済技術面の援助を与え、資金付きの請け負いを繰り広げ、投資して経営を行い、無利子、低金利の貸付を提供した。こうすることによって、古くからの友好をうち固めるとともに、互恵を促し、ともに発展していくことにも役立ち、その意義は大きい。

 国際資本の移動の新たな特徴に基づいて、われわれはチャンスをつかみ、外資利用を積極的に拡大し、外資利用の質的向上に力をいれ、外資誘致を国内の産業構造調整、国有企業の再編・改造、西部大開発と結びつけた。この数年来、投資環境の改善に力をいれたため、交通、通信施設などのハード面での環境は大きく変容した。法制の整備に努め、政策の透明度を高め、良質のサービスを提供したため、ソフト面での環境もかなり改善された。これは外資への吸引力を増強する根本的かつ効果的な措置である。

 (六)科学技術・教育による国家振興戦略を実施することを堅持し、科学技術のイノベーション能力と国民の資質を高めた 。

 科学技術、教育を発展させることは、経済の振興と国の現代化を実現するうえで根幹となるものである。ここ数年、われわれは終始、科学技術・教育による国家振興戦略の実施を極めて重要な課題としてとらえ、主として資金投入の増大、改革の深化、政策の充実などの面で一連の措置を講じてきた。

 科学技術、教育への資金投入をかなり大幅に増やした。五年来、中央財政の科学技術への資金投入は累計2500億元に達し、それ以前の五年に比べて二倍以上に増えた。全国における研究、実験の開発経費は、1997年の509億元から2002年の1161億元に増え、国内総生産(GDP)に占めるウェートは0・64%から1・13%まで引き上げられた。中央財政は国家ハイテク研究発展計画、国家自然科学基金、国家創造・革新システム整備などに対する特別投資をかなり多く増やした。科学研究の条件が著しく改善した上、科学技術の革新を促した。2002年度全国における財政的教育経費の資金投入は3366億元で、1997年度の1・8倍となり、国内総生産(GDP)に占めるウェートは2・5%から3・3%まで高められた。1998年から、中央財政支出における教育経費の比率は年毎に一ポイント伸び、これだけで五年間489億元増えたことになる。中央財政は大量の資金を捻出して小中学校・高校教員の給与遅配や老朽校舎の改築などの問題を解決した。これと同時に、「奨学金、学資ローン、アルバイト先の斡旋、助成金、減額と免除」を旨とする就学援助政策システムを確立し、家計の困窮している学生が学業を継続できるよう取りはからった。

 科学技術、教育の体制改革を全面的に深化させ、科学技術・教育と経済・社会の発展との緊密な結合を積極的に推し進めた。1999年以来、前後して国務院諸部門所属及び省クラス所属の応用型科学研究機構に対して企業化へのメカニズム転換を図る改革を行い、条件の整った公益性のある科学研究機構に対しても様々な形の市場化改革を行い、科学技術成果の転化や産業化の効果的なメカニズムを初歩的に打ち立てた。企業化へのメカニズム転換を行った科学技術研究機構はすでに我が国のハイテク産業の新鋭となっている。改革を通して、企業は逐次技術革新の主体となりつつあり、国の科学研究機構、大学及び地方における科学技術力は絶えず増強された。「共同で建設、調整、提携、合併」などの形を取って、大学の管理体制に対し重要な改革を行い、中央と省の二つのクラスの政府管理、省を主とする新たな体制を確立し、従来のタテ割りやヨコ割りの分割、学校の規模が小さすぎ、専攻開設分野が狭すぎるといった局面をはじめて一新し、教育資源の最適配分を達成した。カリキュラムと試験による評価制度に対する改革を積極的に推し進め、これと同時に、農村における義務教育に対しては、国務院の指導のもとに、地方政府が責任を負い、段階ごとに管理を行い、県を主とする新体制を実行し、農村教育の改革と発展を力強く推し進めた。

 国の科学技術評価システムとインセンティブ制度を充実させ、技術と管理の収益配分への参加に関する政策を制定し、突出した貢献のある科学者、技術者と経営管理者を奨励した。科学研究機構の内部において、積極的に招聘任用制を推し進めた。若手の優れた大学教員を奨励した。国は何度も教師の給与基準を引き上げ、教師の勤務や生活の条件を改善した。ずば抜けた革新的人材の育成を奨励した。これらの措置は広範な科学者、技術者と教師の意欲を効果的に奮い立たせた。

 人材による祖国富強戦略を実施し、人材の育成、誘致と適性登用を重要な任務とした。全国における人材陣の整備計画綱要と西部地区における人材の開発十カ年計画を策定し、実施し、公務員、企業経営管理人材と専門技術人材陣の整備を強化し、人材の育成、導入と登用の制度と措置を充実させ、その才能が十分発揮され、人材を輩出する望ましい環境を創り出すことに努めた。幹部に関する人事制度改革を深化させ、公務員に対する試験的採用、競争による昇格、職務ローテーション制及び育成・トレーニング制度を推し進めた。政府特別手当てを受領している専門家の選考制度を充実させた。「留学をサポートし、帰国を奨励し、出入国を自由にする」といった政策の実施を堅持し、留学人員の創業パークを設置し、科学研究と起業を助成し、多くの海外留学人員の帰国を誘致した。

 ここ数年、われわれは「両手でつかみ、両手のいずれにも力を入れる」という方針を堅持し、社会主義精神文明の建設の強化に大いに力を入れ、全民族の思想・モラルの資質と科学文化の資質をたえず向上させ、現代化建設のために強大な精神的原動力と知的な支えを提供し、経済、社会のバランスの取れた発展をも力強く促した。

 (七)持続可能な発展の道を歩むことを堅持し、経済と人口、資源、環境のバランスの取れた発展を促進した 。

 計画出産を実行し、環境と資源を保護することは、われわれの基本的国策である。絶対に環境破壊と資源浪費を代償に一時的な経済的成長を求めてはならない。われわれは終始持続可能な発展戦略を非常に際立った位置に据え、大幅に投入を増やし、根本から取り組み、表層部分から手をつけると同時に根本的解決をはかった。

 一、生態環境の保全と整備に力を入れた。1998年の特大級の洪水に見舞われた後、「伐採や放牧を禁じて植林し、耕地を元の樹林にもどし、耕地を湖沼に復元させ、囲い堤の撤去による洪水の放流、救済目的の工事実施、移転住民のための町作り、主堤防の補強、河川湖沼の浚渫(しゅんせつ)」といった基本的対策を総括し、実施した。重点森林地域と長江、黄河の上・中流において天然林の保護プロジェクトを実施した。生態環境が脆弱な地域で段取りを追って耕地を元の樹林・草地にもどす大がかりな作業を行った。「耕地を元の樹林にもどし、伐採や放牧を禁じて緑化し、食糧による貧困救済、個人による請負」という方法を講じるとともに、「樹林所有権を核心とし、食糧提供がカギとなり、種苗を先立たせ、幹部を保証とする」といった経験を総括し繰り広げた。国は無償で農民に食糧、種苗と生活補助金を提供し、耕地を元の樹林・草地にもどす農民の意欲を大いに引き出した。これは生態環境の改善、貧困地域における農民の貧困脱却と富裕化の早期達成において重要な役割を果たした。長江流域においては囲い堤の撤去による洪水の放流、耕地を湖沼にもどす、移転した住民のための町作り等の政策を実行し、2900平方キロの水面を回復し、洪水調節の容積を130億立方メートル増やした。そのうち、?陽湖、洞庭湖においては湖沼の回復面積はそれぞれ880平方キロと600平方キロに達し、千年以上にわたって湖沼の干拓による農地造成や湖沼と土地の争奪が繰り返されてきたが、ついに耕地を元の湖沼へもどす大がかりな回復作業という画期的な転換を実現した。

 二、資源に対する保護と合理的な利用を強化した。土地、鉱産物、淡水、海洋と生物などの資源に対する管理を強化した。土地使用に関する総合的計画を策定し、実施し、厳格な土地用途管理制度を実施し、耕地を着実に保護した。断固として鉱産物資源管理の秩序を整頓し、規範化させ、むやみやたらな採掘を規制した。海域の利用・管理は法制化の軌道に入った。1999年から、重点河川の全流域に対して水資源の統一管制を実施した。タリム川、黒河など流域の総合対策をスタートさせた。「引黄済津」(天津市へ黄河の水を引いてくること)などの突貫導水プロジェクトを実施し、都市部の給水を基本的に保証した。

 三、環境汚染対策を強化した。力を集中して重点流域、区域、海域、都市における汚染対策に取り組んだ。環境関係のインフラ整備を強化し、都市部の汚水とゴミの集中処理比率を高めた。環境法制と環境基準を健全化させ、法律執行への取り組みを強め、クリーン・プロダクツと環境管理システムの認証を推し進めた。環境保全産業とリサイクル型経済の発展をサポートした。自然保護区、景勝地と観光地の資源保護と環境保全を強化した。環境重視のための教育をくりひろげ、国民の環境保全参与への自覚を強めた。

 四、計画出産の仕事を強化した。人口の数を抑制し、人口の質を高めることを堅持した。現行の計画出産政策を定着させ、低出産レベルを維持した。重点として農村部、とりわけ中・西部地区の農村における計画出産の仕事を確実にやり遂げ、移動人口に対する計画出産の管理を強化した。人口と計画出産の目標管理責任制を構築し、充実させ、計画出産といった基本的国策を確実に実施した。

 (八)社会の安定の維持に全力をあげ、改革と発展の望ましい環境作りを堅持した。

 われわれは安定を至上とする方針の貫徹を堅持し、改革、発展、安定の関係を立派に処理することに十分意を配り、改革が大きな進捗を遂げ、経済の発展を加速させるとともに、社会の安定を力強く維持した。一、改革への取り組み、発展のスピードと社会の受容度の統一を堅持した。すべての重要な改革方案の策定や施行に際しては、国の財政、企業と人々の受容力を十分に考え、方案をうち出すタイミング、実施の段取りと取り組みの度合いを把握し、実施過程で現れた新しい情況と新しい問題に応じて、適時に調整し充実を図った。重要な改革措置に対しては、まずテスト作業を行い、経験を総括した上で逐次推し進めることを堅持した。経済の安定した、かなりテンポの速い成長を維持することに努め、大きな起伏が生じることを避けた。二、終始人民大衆の身近な利益に関心を寄せ、とりわけ困窮している大衆の生産や生活面における実際問題を解決することに努めた。社会保障、再就職と農村における貧困扶助の仕事を立派にやり遂げるとともに、職員・労働者の給与遅配、農民の過重負担問題の解決に大きな力を入れた。金融リスクの潜在的問題を解消する過程で、国はかなりの額の財力を捻出し、民衆個人の利益にかかわる残された債務の問題の解決を図った。三、新たな情勢の下での人民内部の矛盾を正しく処理した。突発的な、多人数を巻き込むような事件を適切に処理し、矛盾と紛争を末端において解決し、芽のうちに摘み取ることに努めた。四、社会治安総合対策を強化した。法によってさまざまな重大刑事犯罪や経済犯罪を厳しく取り締まり、重点的に一部の地方における治安の混乱という突出した問題を根治した。末端において安全対策を深く推し進めた。違法犯罪を積極的に予防し減少させた。安全な生産運営を重要視し、強化し、安全な生産運営の責任制を健全化させた。五、国の安全を着実に維持した。国内外の敵対勢力による浸透、転覆と破壊の活動を厳重に防止し、法によって取り締まり、法に基づいて民族分裂勢力、暴力テロ勢力と宗教過激派勢力を断固取り締まる。六、一歩一歩司法関係経費の保障メカニズムを整備し、公安・検察・司法系統における仕事の展開に必要な条件を提供するよう努める。 
                                                                                                       
 (九)政府機能の転換を堅持し、廉潔で、政務に励み、実務的で、高効率の政府をつくることに努めた

 社会主義市場経済体制を確立し、それを完備させるには、政府と企業を切り離し、政府の機能を転換させ、仕事のやり方と作風を転換させなければならない。ここ数年来、われわれは政府そのものの建設を強める上で大きな進捗をとげた。なによりもまず政府機関に関する大きな改革に取り組み、主として一歩進んで総合的経済部門をマクロコントロール部門に再編し、専門的経済部門を調整、簡素化し、法の執行と監督・管理部門を強化した。1998年に国務院構成部門を40から29に削減し、内部に設置された機構を四分の一減らし、人員の総数を半分に削減した。2001年には、さらに九つの国の業種主管局を廃止し、市場における法の執行・監督・管理部門の機能と地位をいっそう向上させた。地方の各クラス政府機関においても相応の改革を行った。全国の行政編制による削減人数は合わせて115万人である。今回の改革を通じて、長年来計画経済体制の下で形成されてきた政府機関の枠組がさらに改められた。かなり難度の高い改革であったが、適切な措置を講じて、綿密な仕事を行い、改革は順調に進んだ。それと同時に、政府機関における生活・サービス部門の社会化の度合いが目に見えて高まってきた。政府と企業の分離は大きな一歩を踏み出した。中央、地方の党と政府機関をそれらの経営する経済実体および直轄の企業から分離させ、軍隊、武装警察部隊および公安・検察・司法機関は再びビジネス経営を行わないこととなった。これら多年にわたって積み重ねられてきた、人民大衆から強い反響のあった問題は解決され、これは重要かつ深遠な意義のあることである。

 社会主義市場経済の条件下における主な政府機能は経済の調節、市場の監督・管理、社会による管理と公共サービスである。政府がやるべきことは必ず立派にやり遂げる。やるべきでないことは決してやらない。政策決定、執行と監督機能をうまく調和させるべきである。政府機能を転換させるには、行政審査・認可制度の改革に取り組まなければならない。われわれは現行の審査・認可項目を整理し、国務院は1195件もの行政審査・認可項目を減らし、各クラス地方政府も一連の行政審査・認可項目を減らした。政府の職責を果たすには、必ず法によって行政をすすめ、法律の尊厳を守り、人民大衆の利益を保護しなければならない。国務院の各部門と各クラスの地方政府は逐次法によって行政をおこなう水準を高め、先頭に立って厳重に法の執行に取り組んだ。法によって行政をおこなう体制の改革を推し進め、相対的に集中した行政処罰権のテスト作業を繰り広げた。法の執行に対する監督を強化し、行政再審議を真剣に行った。政府活動の透明度を増やし、人民大衆とマスメディアの政府活動に対する監督をサポートした。民衆からの投書や苦情受付の仕事を高度に重視し、それを立派に進めた。政務電子化の建設を絶えず推し進め、信義誠実をむねとする職業モラルを鋭意提唱し、社会における信用システム確立に努めた。これらの活動は法の執行レベルと仕事の効率向上に対して重要な役割を果たした。

 今期政府は公務員陣育成と作風づくりに十分に気を配った。着任早々から政府機関・事業体職員に「廉潔で、政務に励み、実務的で、高効率であること」をめざす要請を提出した。みずからが人民の公僕であることを銘記し、誠心誠意人民のために奉仕し、職責を真剣に守り、真実を語ること、厳格に政務に取り組み、他人の機嫌を損ねることを恐れず、清廉で公正に政務に取り組み、腐敗を懲罰すること、勤勉に学び、骨身をおしまず仕事に励むことを強調した。これらは廉潔政治の建設を力強く促し、政務の効率を高め、政府と人民大衆との関係を密接なものにした。われわれは公務員と国有企業の指導者に対する教育と育成訓練を強め、党と国家の中心的任務と重点活動をめぐって、一連の専門テーマ研究クラスと育成訓練クラスを開設した。反腐敗闘争をたゆむことなく繰り広げ、部門と業種の不正な気風の是正に大いに力を入れ、法に則って一連の法律・規律に違反する腐敗分子を懲罰し、処分した。われわれは、まずは政府みずからの建設を絶えず強化することを通じてはじめて改革開放の現代化建設の新情勢によりよく適合し、各クラス政府が人民大衆の心から擁護し、満足を示す政府となることができると深く感じている。
代表のみなさん

 この五年来、わが国が勝ち取った諸方面の成果は確かに生易しいものではなかった。これらの成果は江沢民同志を中核とする第三世代の中央指導グループの正しい指導と政策決定のたまものであり、全国各民族人民が一体となって努力し、刻苦奮闘したたまものであり、海外の華僑同胞と海外の友人の支援、協力とも切り離せないものである。ここに、わたしは国務院を代表して、全国の労働者、農民、知識人、幹部、解放軍指揮員・戦闘員、警察部隊の将兵と公安幹部・警察官に対して崇高な敬意を表すものである。そして全国各民族人民、民主諸党派、各人民団体ならびにその他各界の人びとの政府に対する信頼と支持に対して、心より感謝の意を表すものである。また祖国の建設と統一に関心をよせ、それを支援してくれた香港特別行政区の同胞、澳門特別行政区の同胞と台湾同胞ならびに広範な華僑同胞、中国の現代化の建設事業に関心を寄せ、後押ししてくれているすべての各国友人に対して、心から感謝の意を表すものである。

 だが、われわれは当面わが国の経済と社会生活において、まだいくつかの際立った困難と問題が存在していることを冷静に見て取っている。それは主として次のような問題である。国内の有効需要の不足と供給構造が市場ニーズの変化に順応していないこと。農民と一部の都市部住民の所得収入の伸びが鈍化し、失業者数が増大し、一部の大衆の生活が依然としてかなり困難なものになっていること。収入の分配関係が今だに円滑に整えられるに至っていないこと。国有企業の改革の任務がなおかなり重いこと。市場経済秩序がさらなる整頓と規範化を必要としていること。労働安全に関わる重大事故が時折発生していること。一部地方の社会治安状況がよくないこと。一部地域では生態環境が悪化していること。一部の公務員が大衆から遊離し、形式主義、官僚主義の作風や虚偽・欺瞞、贅沢・浪費の行為がかなり深刻で、一部の腐敗現象が依然として際立っていること。これらの問題は、長年にわたって積み重ねられてきたものもあれば、体制の軌道転換と構造調整過程において完全には避けられない問題もあり、さらにはわれわれの仕事の中での欠点と至らなさとかかわりがあるものもある。今後引き続き措置を講じて、真剣にその解決をはかるべきである。

 二、今年度の政府活動についての提案。

 中国共産党第十六回全国代表大会は今世紀の最初の20年にわが国で小康社会を全面的に築き上げる奮闘目標を打ち出し、中国の特色のある社会主義事業の新たな局面を切り開くための方向を指し示した。2003年は中国共産党第十六回全国代表大会の精神を全面的に貫徹する最初の年であり、今年度の政府活動を立派に進めることは重要な意義をもつ。
中国共産党中央の今年度の活動についての全般的な要請は次の通りである。

 ケ小平理論と「三つの代表」という重要な思想を指針とし、中国共産党第十六回全国人民代表大会の精神を真剣に貫徹し、発展という課題を党の執政と国家振興の第一義的な重要任務として堅持し、国内外の環境の変化によってもたらされる困難とチャレンジに積極的に対処し、内需拡大の方針を堅持し、引き続き積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実施し、改革をさらに深化させ、対外開放レベルを全面的に引き上げ、経済構造の戦略的調整を速め、国民経済の持続的でテンポの速い、健全な発展を促し、経済発展のスピードと構造、品質、効率の相互統一を実現する。改革、発展、安定の関係を正しく処理し、民主・法制の整備、精神文明の建設と党の組織建設を着実に強化し、社会主義の物質文明、政治文明と精神文明のバランスのとれた発展を促す。こうした全般的な要求に基づき、第十期全国人民大会第一回会議では政府指導者の任期交代を合わせて考え、国務院の真剣な検討を経て、今年の政府活動について次のような建議を行う。

 (一)引き続き内需を拡大し、経済の安定と比較的速いテンポの成長を達成する。

 経済発展の良好な勢いを保つことは、諸般の仕事を立派に進める上での基盤である。国内外のさまざまな状況を総合的に分析することにより、今年の経済成長率の所期目標を七%前後と定めた。この目標は必要なものであり、努力すれば達成可能である。カギとなるポイントは構造の調整と最適化を重視して、経済成長の質と効率の向上に取り組まなければならないことである。内需拡大の方針を堅持し、引き続き積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実施し、消費需要と投資需要の経済成長に対する二重の牽引力を維持しなければならない。

 何よりもまず消費需要の拡大に力を入れること。当面の状況から見ると、投資需要の増大よりも消費需要の方がさらに重要である。引き続き都市部住民、わけても低所得層の収入を増やし、人民大衆の生活レベルの向上に努めなければならない。あらゆる方策を講じて農民の収入増に努め、農民の負担の軽減を貫く。貧困層の生産と生活問題の解決に着実に力を入れる。元の取り決めでは昨年の下半期に政府機関・事業体の職員の給与と定年引退・退職者の年金を増やす予定であったが、まず都市部における低所得層の生活難を優先的に解決し、各方面の利益関係にバランスを取ることを考慮して、この措置は繰り延べて今年実施されることになった。引き続き消費環境を改善し、消費政策を完備させ、消費分野を開拓する。

 投資のかなり速い伸びを維持すること。諸方面の要素を総合的に考慮して、今年は一四〇〇億元の長期建設国債を発行する予定である。国債資金運用の方向を調整し、それを何よりもまず継続プロジェクトと仕上げの工事に使う。いくつかの必要な新規建設プロジェクトも立件しなければならない。西部の開発、農村における生産・生活環境の改善、企業技術の改良、生態環境の建設及び科学・教育、文化、医療・衛生事業等の面でサポートの力を大きくする。社会投資と企業融資のルートを拡大し、民間の資金を国の奨励する産業と建設プロジェクトに投入するよう誘導する。低レベルの重複した建設を断固防ぎ止める。一部の地方で不動産投資の伸びがあまりにも過熱し、ハイグレードな不動産のむやみな開発という現象に対して、大いに警戒心を高め、盲目的な開発が招くリスクと損失を避けなければならない。

 引き続き金融リスクを防ぎ、それを解消するとともに、経済の発展に対する金融のサポート力を強化すること。銀行は優先的に国債プロジェクトの関連融資を提供し、売れ行きも収益もよい信用度の高い企業への融資を増大させ、農業と農村経済、中小企業とサービス業に対する融資サポートに力を入れ、消費者信用を規範化し、発展させる。金融サービスを改善し、金融の監督・管理を強める。証券、保険、通貨市場の発展を規範化する。

 財政・税務の仕事を立派に行うこと。引き続き収入増大・支出節減に努める。法に依拠して税金の徴収・管理を強化し、脱税、税金逃れ、税金ごまかしの行為を厳しく取り締り、徴収すべきものは残らず徴収する。各クラスの財政は支出構造を着実に調整し、重点支出を保証する。何よりもまず給与を期日通り全額給付することを確保し、引き続き社会保障支出を増加させ、農業、農村における義務教育と農村の医療・衛生への投入に力を入れ、中西部地区と貧困地域に対する移転支払に力を入れなければならない。
                          
 (二)農業および農村経済の全面的な発展を促進する。

 引き続き農業および農村経済を発展させることと農民の収入を増やすことを経済活動における重点の中の重点とする。都市農村における経済・社会の発展を統一的に企画し、「三農」の仕事を確実に推し進めなければならない。

 農業および農村経済の構造調整を速める。引き続き農業の地域的配置の調整および農業の産業化経営を推進し、牧畜業、水産養殖業および農産物加工業に大いに取り組む。耕地を元の樹林にもどすことに力を入れる。全国における草原生態保護整備計画の実施を急ぐ。農産物の品質安全システムおよび農業の社会化サービスシステムの整備を強化する。農村における土地請負政策を堅持し、充実させ、非農用地に対する管理と規制を立派に行う。引き続き農村の諸改革を深める。農村における租税・料金徴収制度改革のテストケースをめぐってその経験を総括し、政策の充実化をふまえた上で、全国的範囲において展開する。農民の負担を軽減させる諸般の政策・措置を真剣に実行する。食糧・綿花流通体制の改革をさらに深化させ、農民の利益を確実に保護する。

 農業基盤施設の整備および農業の科学技術に対する資金投入を増やす。節水灌漑、人間・家畜の飲み水、県・郷の道路、農村のエネルギー、農村における教育および医療衛生施設などの整備を速める。主要食糧生産地区に対する助成を大きくする。貧困扶助のための開発の仕事を確実に推し進める。集団的経済力を増強させる。県域経済の発展を推し進める。都市・町化の進展を加速させる。農村における余剰労働力の移転に対して協調と指導を強化し、農民が都市部で就労、就職する合法的権益を擁護する。

 (三)産業構造の調整および西部大開発を積極的に推進する。

 新しいパターンの工業化の道を歩むという要請に基づいて、産業構造の調整を加速させる。経済成長を押し上げる重要な牽引の役割を果たすハイテク産業を積極的に発展させる。情報化を大いに推し進め、情報化によって工業化を牽引する。一般産業の改造のために先進適用技術を幅広く採用し、設備製造業の振興に努める。鉄鋼、自動車、建材などの業種の発展計画と調整を立派に行い、盲目的な発展と無秩序な競争を防ぐ。立ち遅れた生産能力をさらに淘汰する。現代サービス業と観光業を積極的に発展させる。コミュニティーにおけるサービス業の発展を高度に重視する。

 西部大開発を着実に推し進める。重点を際立たせ、実効性に重きを置き、基礎をしっかりと打ち固めなければならない。引き続き生態環境の整備やインフラ建設を強化する。耕地の樹林への復元、天然林の保護および砂漠化防止を確実に推し進める。天然の草原において放牧を止め草地を回復するプロジェクトを実施し、関連法制の整備を強化する。重要プロジェクトの建設に力を入れ、工事の進度と品質を確保する。特色のある経済および優位性のある産業を積極的に発展させる。科学技術、教育の発展を加速する。東部、中部、西部地区の経済交流と協力を強化し、それぞれの強みを相互補完しあって、ともに発展することを促進する。すでに淘汰された、立ち遅れた工業設備、汚染源となる企業の西部への移転を防ぐ。旧工業基地が調整と改造を加速させることをサポートし、資源の採掘を主とする都市と地域がそのあとに続く産業を発展させることをサポートし、かつて革命根拠地であった地域および少数民族地域が発展を加速することをサポートする。

 (四)経済体制の改革を深化させ、対外開放を拡大する。

 公有制を主体とし、多種多様な所有制の経済がともに発展を遂げるという基本的経済制度を堅持し、それをさらに充実させ、いささかもゆるぐことなく公有制経済を打ち固め、発展させ、いささかもゆるぐことなく個人経営、私営などの非公有制経済の発展を奨励し、バックアップし、導く。現代企業制度を構築するという要請に基づいて、引き続き国有企業に対し規範化した公司制への改革および株式制への改造を推し進め、監督メカニズムを充実させる。基準に適った大企業の海外での上場を積極的にサポートする。本業が明確で、独自の知的財産権と有名ブランドを有し、強力な国際競争力を持つ大会社と大手企業グループの形成を加速する。軍需工業などの困難を抱えた業種に対し企業の調整、再編および苦境脱出の仕事をより立派に行う。引き続き電力、電信・電話、民間航空などの業種における改革を完成させる。トップダウン方式で整然と国有資産管理体制の改革を行う。国内の民間資本の市場参入分野を広げ、さまざまな市場主体が公正な競争を行う環境を作り出す。さまざまな所有制の中小企業、特に科学技術型と労働集約型の企業の発展をサポートする。金融体制の改革を穏当に実施する。引き続き財政・租税、投融資体制の改革を推進する。収入分配制度の改革を深化させ、分配関係を逐次すっきりさせる。

 市場経済秩序を整頓し規範化させることは長期的な、困難に満ちた任務であり、たゆむことなく行わなければならない。表層と根本からともに解決し、根本の整備に重点を置かなければならない。引き続き特別対策に取り組み、重点を際立たせ、偽物・粗悪製品の製造・販売などの違法犯罪行為を厳しく取り締まる。制度化と法制整備を強化し、厳しく法律を執行し、市場管理を逐次法制化、規範化の軌道にのせる。市場経済秩序をゆゆしく破壊する重大案件の取り調べや処分を急ぐ。社会信用システムの確立を加速する。労働の安全を高度に重視し、監督管理を着実に強め、人民の生命、財産の安全を守る。改革、整頓を通じて、社会主義市場経済の新秩序を早急に構築する。

 「国外からの導入」と「海外進出」の相互結合を堅持し、対外開放レベルを全面的に引き上げる。世界貿易機関(WTO)加盟の移行期における諸般の対応作業を立派に行い、真剣に権利を行使し、公約したことを守り、義務を履行する。輸出奨励の諸般の政策措置の安定化を図り、市場多元化の戦略を実施し、あくまでも品質で勝負することを貫き、商品とサービス貿易を拡大する。国内の有力ブランドを育成し、サポートし、国際競争力を引き上げる。輸入構造を最適化させる。対外貿易体制の改革を深化させる。引き続き外資を積極的かつ効果的に利用し、先進技術、現代的管理ノウハウおよび専門人材の導入に重きを置き、国内企業が多国籍企業とさまざまな提携を行うようサポートする。投資環境の改善に努め、外商誘致と資金導入の仕事を規範化させる。比較優位のある各種所有制の企業が合弁、独資、合同経営などの形で多国間経営を展開することを奨励し、これをバックアップし、それによって国内の商品、特に資本財の輸出を牽引する。多国間、二国間および地域間の経済協力を積極的に推し進める。

 (五)就業の機会の増加と社会保障の仕事をよりよく推し進める 。

 各クラス政府は就業環境を改善することと就職口を増やすことを重要な職責としなければならない。「働く者が自主的に職業を選択し、市場が就業を調節し、政府が就業を促進する」という方針を堅持し、あらゆる方策を講じて就業および再就職の促進に取り組む。国有企業の改革にあたって、人員削減による効率の向上と再就職の促進を結びつけることを堅持しなければならない。一時帰休者・失業者の再就職を促進する諸般の政策・措置を真剣に実行する。就職のルートを広げ、労働集約型産業を積極的に発展させ、就業機会の増加とかかわりのある第三次産業、中小企業および個人経営・私営経済の重要な役割を十分に発揮させる。労働市場を規範化し、発展させる。自助努力によって就職先を見つけたり、自主的に創業することを奨励し、弾力的で多様な就業形態を積極的に提唱し普及させる。職業育成・トレーニングおよび就職のためのサービスを大いに発展させる。大学や職業専門学校の卒業生の就職、起業に対する指導とサービスの仕事を強化する。

 引き続き「二つの確保」および都市部における「最低生活保障」の仕事を強化し、「三つの保障ライン」を結びつけることを上手に行う。都市部企業の職員・労働者の基本養老保険制度と医療保険制度を充実させ、引き続き諸般の社会保険カバー率を引き上げる。国有企業の一時帰休者の基本生活保障を失業保険と一本化させる施策を穏当に推し進める。「最低生活保障」の基準および保障対象、補助レベルを合理的に定め、確実に保障すべきものはすべて保障するようにする。困難を抱えた国有企業および閉鎖・倒産した企業の職員・労働者の基本生活問題を適切に解決する。多くのルートを通じて社会保障基金を調達し、効率的に管理する。低所得層に対する救済制度を確立し、それを充実させ、都市部における特別困難な家庭の住居や子供の就学、医療および暖房など面の問題の解決を重視する。農村における新しいタイプの合作医療制度のテスト作業を立派に行う。社会福祉、社会救済、優遇・扶助・再配置および社会相互扶助などの社会保障事業を発展させる。女性、児童の合法的権益を擁護する。高齢者向けの仕事をよりよく行う。身体障害者のための事業の発展をサポートする。

 (六)科学・教育による国の振興戦略と持続可能な発展戦略を真剣に実施する 。

 引き続き科学技術、教育に対する資金の投入を増やす。科学と技術の中長期にわたる国の発展計画の制定と実施を急ぐ。国家創造・革新システムの整備を促す。基礎研究、ハイテク研究を確実に強化し、科学技術のイノベーション力と競争力を増強させる。「国家ハイテク研究発展計画」と「国家重点基礎研究発展計画」および重要な科学技術特別プロジェクトの実施を急ぐ。カギとなる分野といくつかの科学技術発展の最前線におけるコア技術を掌握し、数多くの独自の知的財産権を獲得することに努める。科学技術の基盤条件の整備を強化する。引き続き科学技術体制の改革を深化させ、科学技術サービス体系を充実させ、知的財産権の保護を強化し、特許・発明を促進し、科学技術の成果の現実的生産力への転化を加速する。社会科学と自然科学を同様に重視することを堅持し、哲学、社会科学を発展、繁栄させる。教育体制の改革を深化させ、教育の革新を堅持し、資質教育を全面的に推進する。各クラス、各種教育の発展を加速し、教育の質を向上させる。農村における義務教育の県を主体とする管理体制を充実させる。引き続き学資ローンおよび国の奨学金設立の仕事を立派に行う。職業教育と育成・トレーニングを強化する。法によって民営の教育を規範化させ、積極的にサポートする。引き続き人材により国の富強をはかる戦略を実施し、さまざまな人材、特にハイレベルで至急に必要とされる人材を育成、誘致し、かれらが才能を十分に発揮し、事業をなしとげるための望ましい環境を作り出す。

 引き続き人口と計画出産の仕事をりっぱに行い、低い出産レベルを定着させる。都市農村の発展計画の仕事を強化する。さまざまな自然資源を合理的に開発し、着実に保護し、節約して使用しなければならない。海洋の開発を実施する。生態環境の保全と整備を強化し、環境保全産業の発展に大いに力を入れる。重点流域、区域、海域の汚染対策と都市環境の総合整備を強化する。防災・減災の仕事を上手に行わなければならない。

 (七)社会主義の民主法制の整備と精神文明の建設を強化する 。

 社会主義の民主政治を発展させ、社会主義の政治文明を築き上げる。末端における政権の建設と都市農村の末端における民主政治の建設を強化し、法によって国を治めることと徳によって国を治めることを結びつける。社会主義法制の整備を強化し、行政法規を充実させ、法によって行政のレベルを高め、全人民の法的資質を向上させる。先進的文化の前進の方向をしっかりと把握し、社会主義精神文明の建設を大いに強化する。公民のモラルづくり実施綱要を真剣に貫徹する。民族の精神を発揚し、育むこと。大衆の精神文明創りの活動を広く繰り広げる。文学・芸術、報道・出版、ラジオ・映画・テレビ等の諸事業を繁栄させることにさらに力を入れ、数多くの優れた作品を創出するよう努める。文化体制の改革を深化させ、文化事業と文化産業を積極的に発展させる。文化財と文化遺産の保護を強化する。国際文化交流を強化する。科学知識を普及し、迷信に反対し、文明的かつ健康的なライフスタイルを唱導する。ポルノ一掃や不法出版物取締りのキャンペーンをたゆむことなく繰り広げていく。インターネット・ウェブサイトの整備と管理を強化する。医療・衛生、スポーツ事業の改革と発展を積極的に推し進める。大衆の健康維持・増進の仕事の展開に力を入れ、たえず競技スポーツのレベルを高める。2008年の北京オリンピック大会と二〇一〇年の上海世界博覧会に向けての前段階の準備作業に真剣に取り組む。全力をあげて社会の安定を維持する。「刑事犯罪を厳しく取り締まる」方針を堅持し、取締りと防止を結び付け、予防を主とすることを堅持し、社会治安総合対策の諸措置を全面的に実行する。法に基づいて様々な違法犯罪行為を厳しく取り締まる。邪教組織の犯罪活動を厳重に防ぎ、処罰する。

 (八)着実に政府部門みずからの建設を強化する。

 改革開放と現代化の建設を大いに推進する新たな状況下において、さらに政府部門みずからの建設、特に政府部門の作風づくりを強化することは極めて重要である。

 行政管理体制の改革を深化させる。政府と企業の分離を堅持し、簡素化、統一、効率の原則に基づき、政府の職能をよりいっそう転換させ、政府機関の部門配置を調整し、部門別の職能と職責をはっきりさせ、行政審査・許認可を減らし、政府部門の管理レベルを高め、行為が規範化され、調和のとれた運営が進められ、公正かつ透明で、廉潔、高効率の行政管理体制を形成することに努める。党中央、国務院は政府機関の改革案を作成しており、今大会に提出して審議を求めることになっている。

 法に依拠した行政を堅持し、政務を厳粛に治める。公務員制度を充実し、資質の高い公務員陣を育て上げる。電子政務の整備を速める。引き続き腐敗反対の闘争をよりいっそう展開し、部門や業種の不正な気風の是正に力を入れ、法律に違反し規律を乱す各種案件を真剣に取り調べ、処理する。制度の整備を強化し、行政に対する監督と会計監査の監督を強化し、根源から腐敗を防ぎ止めることに努める。投書や苦情の受付の仕事を立派に行い、世論による監督と社会による監督を強化する。確実に活動の作風を転換し、形式主義や官僚主義に反対し、売名行為的な「イメージづくりのためのプロジェクト」はやらず、水増し報告やホラ吹き、強制命令等の劣悪な気風を是正し、贅沢や浪費に反対する。各クラスの政府公務員は末端に深く入り、大衆の中に深く入って大衆の声に耳を傾け、その苦しみに関心を寄せ、大衆の苦情や反響が強くかつ不満を抱いている問題を適時に解決しなければならない。新たな情勢下において、憂国意識を強め、治にありても乱を忘れることなく、謙虚かつ慎重で、おごることなく、あせることのない作風をひきつづき保たなければならず、刻苦奮闘の作風をひきつづき保たなければならない。

 代表のみなさん 

 各民族間の団結を強化し、祖国の統一と社会の安定を維持することは、全国各民族人民の共通の願いである。党の民族政策を全面的に貫徹し、民族区域自治制度を堅持し、充実させなければならない。少数民族の幹部の育成によりいっそう力を注ぐ。引き続き辺境地域を振興して、現地の人々を豊かにする行動を推進し、人口の比較的少ない民族への援助により大きな力をいれ、各民族の共同の繁栄と進歩を促進する。祖国を分裂させ、民族の団結を破壊する行為に断固として反対する。中国共産党の宗教信仰の自由の政策を全面的に貫徹し、法に基づいて宗教事務を管理し、宗教が社会主義社会に適合するよう積極的に導き、国外の宗教組織から独立し、宗教事務を自主的に管理するという原則を堅持する。華僑政策を真剣に貫徹、実施し、さらに華僑事務を立派に行う。

 国防と軍隊の建設を強化することは、国の安全と現代化建設の確かな保証である。政治面で合格し、軍事面でしっかりし、作風が立派で、規律が厳しく、保障が有力であるという全般的要請に基づいて、軍隊の革命化、現代化、正規化の建設を新しいレベルに引き上げることに努める。新しい時期において積極的防御という軍事戦略方針を貫徹し、軍事闘争の準備を強化する。国防建設と経済建設のバランスのとれた発展を堅持する。国防科学技術の研究と兵器装備の開発・製造を重視し、ハイテク条件下におけるわが軍の全般的な防衛作戦能力を強化する。後方支援の建設を強化する。積極的に国防科学技術工業の調整、改革と発展を推進する。各クラスの政府は国防と軍隊の建設を大いにバックアップし、全人民の国防意識の強化をはからなければならない。たえず国防予備力の建設を強化し、確実に国防動員の仕事に取り組む。軍隊擁護・軍人遺族・家族優遇、政府擁護・人民愛護の仕事の展開によりいっそう力を入れ、軍隊と政府、軍隊と人民の団結を打ち固める。

 香港、澳門の繁栄、安定と発展を維持することは、われわれの確固不動の目標である。「一国二制度」の方針をひきつづき貫徹、実行しなければならず、香港特別行政区、澳門特別行政区の基本法に厳格に則って事を運ぶ。全力をあげて二つの特別行政区行政長官と政府が基本法に基づいて行政に取り組むことをバックアップする。大陸部と香港、澳門との経済貿易、教育、科学技術、文化などの諸分野における交流と協力を積極的に促す。

 「平和統一、一国二制度」の基本方針や台湾問題に関する八項目の主張を全面的に貫き、一つの中国という原則を踏まえて、海峡両岸間の対話と話し合いの早期の回復をはかり、「台湾独立」、「二つの中国」、「一つの中国、一つの台湾」を作り出そうとするいかなる言動にも断固反対する。両岸の人的往来や経済、文化などの分野の交流と協力をいっそう拡大し、積極的に両岸間の直接「三通」の実現を推進させる。両岸関係の発展、祖国の平和的統一の推進について台湾の各党派及び各界の人々との意見交換を強める。海外華僑同胞が繰り広げている「台湾独立に反対し、統一を促進する」活動をひきつづき支持する。われわれはすべての中華民族の子孫がたゆむことなく奮闘することにより、祖国の完全なる統一は必ずや早期に実現できると確信している。

 平和と発展は依然として当面の時代のメーン・テーマである。世界の多極化と経済のグローバル化の趨勢は曲折を経ながらも発展をとげている。わが国が直面している国際環境は依然としてチャンスが挑戦より多いものである。しかしながら国際情勢の不確定要素もいくらか増えている。われわれは終始変わることなく独立自主の平和外交政策を実行する。引き続き発展途上諸国との連帯と協力を打ち固め、強化し、自国の正当な権益を守ろうとしている発展途上国をバックアップする。ひきつづき善隣友好を深化させ、地域間の協力を強化し、周辺諸国との交流と協力を新たなレベルへと推し進める。引き続き先進諸国との関係を改善し、発展させ、平和共存五原則をふまえて、共通の利益を広げ、不一致点を適切に解決する。引き続き多国間の外交活動に積極的に参与し、国際関係の民主化と発展モデルの多様化を提唱する。さまざまな形の覇権主義と強権政治に反対し、いかなる形のテロリズムにも反対する。中国人民は各国人民とともに世界の平和と発展の崇高な事業を推進していくことを願っている。

 代表のみなさん 

 中国共産党第十六回全国代表大会はわが国の新しい世紀の新たな段階において小康社会を全面的に建設する雄大な青写真や行動綱領を制定した。われわれの偉大な祖国はすでにより高い歴史の出発点に立ち、新たな輝かしい征途に向かって歩みはじめている。いかなる困難や危険も中国人民が勝利に向かって前進する歩みを阻むことはできない。祖国の未来を展望するならば、限りなく明るい前途が開けている。われわれは全国各民族人民が胡錦涛同志を総書記とする党中央の指導の下に、ケ小平理論の偉大な旗印を高く掲げ、「三つの代表」という重要な思想を全面的に貫徹し、心を一つにして、発奮し富強を求めるならば、必ずや中国の特色のある社会主義事業はたえず前へと推し進められ、勝利からより大きな勝利へと勇往邁進できると確信している。

 (この報告については、今会議で最終的に審議、採択され、新華社から発表されるものが基準となる)

2003年3月7日