特集 じわりと変わる日本語教育 
資料

 中日合作の北京日本学研究センター
  
 
日本学研究センターの大ホールには、日本の大平正芳・元首相が生前使っていた品々が展示された「大平コーナー」がある

 北京日本学研究センターは1985年9月、中国教育部と日本の国際交流基金が共同で創設した、中日合作の、中国で最初の日本研究の研究・教育機関である。センターには、修士、博士の大学院生の課程と、職業に就きながら学ぶ大学院生の課程が開設されている。

 このセンターは、「中日合作で創建され、協力して人材を養成する」という面での典型的なモデルケースである。まず行政管理機構から見ると、センターには指導委員会と実施委員会、工作委員会が設けられ、そのメンバーは同数の中日双方の代表によって構成されている。

 双方は共同で、センターの運営の方針と政策を決定し、共同でセンターの行政や教育などの面の管理に参与し、中日双方の教師は共同で教育活動を展開する。現在、中国側の責任者は徐一平教授で、中国日本語教学研究会の副会長、山形大学で博士号を取得している。日本側は竹内信夫主任教授と尾崎孝宏副主任教授が責任者となっている。

 このセンターを語るとき、すでに亡くなった日本の二人の首相を思い起こさずにはいられない。それは大平正芳、小渕恵三の両氏である。

 北京日本学研究センターの前身は、「大平学校」である。1979年12月、大平首相が中国を訪問したとき、中国の大学の日本語教師を養成するため、北京に「全国日本語教師養成訓練クラス」を設立した。大平首相の功績を称えてこれを「大平学校」と呼ぶ。「大平学校」は5年間開設され、全国で600人以上の日本語教師を育成した。

 センターの建物は、小渕首相が1999年7月に訪中したとき、建設が促進され、日本政府が資金を提供して2003年3月、竣工した。

北京日本学研究センターのホームページ:http://202.204.141.11

日本語教育の先駆――北京大学日本語学部

中国で最初に日本語の専攻の学科を開設した北京大学の構内

 北京大学の日本語・日本文学専攻は、1946年に設立された。中国の大学で最初に日本語専攻を開設した大学であり、また最初に日本語・日本文学の修士課程を置いたところでもある。1986年には、中国初の日本語・日本文学の博士課程を開設した。

 現在、北京大学の日本語学部は、教育と研究の両方を重視する道を堅持し、教師は教育者でもあり研究者でもあることを強調している。学生の養成・訓練の方針は、卒業生が言語の技能をしっかり身につけるとともに、知識水準と文化的素養を全面的に高めることが要求されている。

 教育の質と学習の効果を保証するために、日本語学部の本科生は毎年、1クラス15人の学生しか採用せず、小クラスの授業で、心を込めて丁寧につくりあげるというやり方が堅持されている。「聞く、話す、読む、書く、訳す」の全面的発達や、精読、講読、会話、ヒアリングの力が少しでも欠けていてはならず、基礎がしっかりしていることが強調されている。

 同時にまた、日本の社会、経済、文化などを内容とする課程が開設され、学生たちが全ての面から多角的に日本を理解し、総合的な力を高めるようにしている。

 この他、国際学術団体との交流活動を展開している。毎年一人の日本の学者を招いて北京大学で一週間、講義してもらうほか、「日本を読み解く」などの内容のシンポジウムを何回も挙行し、日本やその他の国から国際的に有名な学者たちがこれに招かれている。

 日本語学部の学部長は彭広陸・文学博士で、北京大学の日本文化研究所副所長も努めている。

 北京大学ホームページ:http://www.pku.edu.cn

実用重視の北京外大

北京外大の日本語学部では、中日両国の専門家を招いて講演会がよく開かれる。この日は、日本滞在十五年の劉徳有氏が、中日の文化の違いについて講演した

 北京外大の日本語学部の前身は、外交学院の本科の日本語専攻であり、1956年に開設され、1981年に学部に昇格した。1986年には日本語・日本文学の修士課程が設立され、1993年に日本語の博士の学位を授与できる資格を獲得した。

 日本語学部の学部長は汪玉林氏で、1981〜83年と1993〜95年の2回、日本に行き、大東文化大学で研修した。現在、中国教育部の高等教育機関の外国語教学指導委員会日本語組副組長を兼任している。

 北京外大日本語学部: E-mail: bwryxb@mail.bfsu.edu.cn

二つの外国語学習を重視 人民大学

日本学研究センターの図書館には、中日友好協会の孫平化・元会長が日本の政治家との友好往来を記念する品々を収蔵した「孫平化コーナー」がある

 中国人民大学の日本語教育は、1937年に創建された陝北公学(中学)に始まる。1993年、日本語学部が開設され、1996年に日本語・日本文学の修士課程が開設された。

 人民大学の日本語教育の特徴は、二つの外国語(英語、日本語)と対外経済貿易の教育を本科生の必修科目にしていることだ。このため、大学1、2年では「聞く、話す、読む、書く、訳す」などの基礎科目が開設され、3、4年では日本の経済、貿易、金融、経済貿易交渉、通信文などの科目が開設され、意識的に学生たちを指導して、経済貿易を勉強するようにしている。

 また、模擬教室を開いて教育を行い、学生たちが模擬交渉を行ったり、手紙や電報の文章を書く練習をしたりする。これによって学生たちは、実際に交渉の場に臨んでいるように感じることができる。

 この他、人民大学が文学、史学、哲学、経済、政治、法律の学部を持つ総合的な大学であるという優位性を利用し、学生たちがそれぞれの専攻をしっかり学ぶよう奨励するとともに、自分の好きな他の専門科目も自由に選択できるようにしている。そして各学部の講座や選択科目を聴きに行くことを奨励し、それによって学生たちが広い知識を持ち、視野を広め、総合的な能力を全面的に高めるようにしている。

 日本語学部の学部長は于素秋氏で、1987年に日本語比較文学で修士号を取得、1999年に山形大学大学院で情報言語の博士号を取得した。現在、日本人文社会科学研究センターの秘書長を兼任している。(2004年8月号より)

 人民大学ホームページ:http://www.ruc.edu.cn