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特集   万国博 愛知から上海へ
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 「愛・地球博」をテーマとして開催された愛知の万国博覧会は、多くの人々の感動を呼びつつ、閉幕を迎えた。最先端を行くロボットやマンモスの標本などを展示した企業や参加国のパビリオンが好評を博したが、中国館も「自然、都市、調和〜ライフアート」をテーマに多くの参観者を迎えた。

万博開催の準備が始まった上海市の全景(撮影・謝新発)
 そして5年後の2010年、次回の万博は、中国の上海で開催される。人口1700万人を擁し、経済成長の目覚しいこの大都市で開かれる万博のテーマは「Better City, Better Life」(都市――生活をさらに美しく)すでに会場予定地である黄浦江べりの老朽住宅群は、取り壊しが始まった。

 愛知から上海へ。愛知の経験を学び、中国で初めて開かれる万博をいっそうすばらしいものにしようと、上海の人々は意気込んでいる。

 

特集1
上海は愛知万博から何を学ぶか
 
――中国人記者が見たEXPO
林崇珍=文 馮進=写真

愛知万博の会場を巡回する新交通システムIMTSは、観衆の便利な足となっている

    「愛・地球博」は、一日平均約10万人の観客を集め、大きな成功を収めた。会場を訪れた人々の85%が、「全体的な印象が良かった」と答え、その中の80%が「もう一度来たい」と答えている。「愛知万博は成功した」というのが、一致した国際的な評価である。

    5年後の2010年には、上海で万博が開催されることが決まっているので、私は、日本に駐在する中国人記者として、愛知万博の成功の秘密を知ろうと、会場に足を運んだ。「上海が愛知から学ぶことはきっと多いに違いない」と考えたからである。

引き継がれる理念

    中国が出したパビリオン「中国館」は、愛知万博の長久手会場にある「グローバル・コモン1」(共同展覧区1)の東北角にある。赤い大きな建物で、遠くから、それとすぐわかる。館の外壁には、切り紙でつくられた干支や中国人の姓の文字を集めた「百家姓」が彫られ、中国らしさをアピールしている。

    館内には、「中華文明の旅」と題するマルチメディアの巨大レリーフが、中国五千年の歴史と近代都市の発展を伝え、伝統と現代、自然と都市の調和を表現している。また、国宝級文物八点や西安で出土した唐代の日本人留学生の「井真成」の墓誌の実物が展示され、30分ごとに中国民族音楽のショーが行われるなど、評判を呼んでいた。

  愛知万博の中国政府代表である高燕さんは「中国館の展示の狙いの一つは、上海万博のために経験を蓄積することにある。中国館も上海万博もともに『都市と自然』をテーマにしており、都市環境における人と自然との共生の道を探ろうとしている」と述べた。

    5月19日の中国館のナショナルデーを機会に、ここを訪れた呉儀副総理は、「愛知万博は『愛・地球博』というネーミングで『自然の叡智』をメーンテーマとし、設計・施工から組織・運営まですべて、地球や大自然に対する配慮を体現している。これは日本人民の知恵と創造力を表しています」と高く評価した。そのうえで、「愛知万博の進んだ理念と経験は、中国が上海で万博を立派に開催するためのお手本となるでしょう」と称えた。

    実際、中国館に入るとすぐ左側に「上海のインフォーメーション」のデスクがあり、「EXPO  2010 SHANHAI CHINA」と書かれている。ここには、上海万博の準備を担当している上海万博事務協調局の人が常駐し、2010年の上海万博の基本状況や準備の最新状況を観客に説明している。

    ここでボランティアとして働いている24歳の中国人留学生の毛竹晨さんは「日本の人々を含む世界の人々が、ここを通じて上海万博を理解してくれる窓口となると同時に、愛知万博の経験を学ぶ窓口となってほしい」と言っていた。

上海が愛知から学ぶもの

7月13日、日本の天皇、皇后両陛下が中国館を訪れ、中国の王毅大使の出迎えを受けた(撮影・林崇珍)

    それなら、具体的に上海万博は、愛知万博からどういう点を学ぶべきなのか。会場を巡りながら、考えたことを箇条書きにしてみよう。

 【自然への優しさ】

    愛知万博の二つの会場(長久手と瀬戸)は、丘陵地帯で、一面、樹木が生い茂っている。ここに万博を招致しようとしたとき、環境保護の立場から、招致に反対する市民もいた。

    しかし、万博会場建設のために、一本の木も伐採されることはなかった。会場の中心部の丘陵地帯には、木製の空中回廊「グローバル・ループ」が架けられ、生態環境を保護した。しかも、万博が終われば、この空中回廊は全部、撤去され、再生利用される。これは、環境を保護するとともにコストを節約する一石二鳥の計画である。

    愛知万博は、会場の選定、建設、リニアモーターカーや無人自動車IMTSの採用など多方面にわたって環境保護を十分、考慮している。自然と利益を秤にかけ、自然を選択したのだった。

 【笑顔】

    愛知万博会場内では、どこも人々の笑顔に溢れていた。万博の係員たちは笑顔で一人一人にお辞儀をしながら入場者を迎えた。作り物ではない笑顔は、観客の気分をリラックスさせた。

    笑顔は、その国の人々の資質と自信を表に現したものである。心からの笑顔は容易に人の心を和ませる。笑顔の訓練や礼儀を重視することは、上海万博を成功させるうえで、非常に重要である。

    北京オリンピック招致のために張芸謀監督が撮った短編映画のテーマも「笑顔」だった。北京・西単文化広場でローラースケートをする少年の笑顔から故宮の前で太極拳をするお爺さんの笑顔まで、笑顔が国際オリンピック委員会の多くの委員を感動させたのだった。

 【思いやり】

    日本で暮らしてもっとも印象深いのは、どんな場所でもさまざまな音声が聞こえてきて、道案内をしてくれることだ。しかし、それは時にはうるさく感じられる。

    愛知万博の会場には、場内放送のスピーカーは設置されなかった。迷子の場内アナウンスもない。万一、会場内で連れとはぐれたらどうするのか。そのときは、場内の係員に頼んで、ハンディートーキーなどの無線で探してもらえばよい。すぐに問題が解決する。

    もう一つ感心したのは、長久手会場と瀬戸会場を空中で結ぶ「モリゾー・ゴンドラ」は、路線の下に住む住民のプライバシーを守るため、住宅地の上空で、ゴンドラの窓が二分間ほど、曇りガラスに変わることだ。

    環境保護という理念は、大自然の保護ばかりではない。「以人為本」(人間本位)という理念も、上海万博は愛知万博から引き継がなければならない。

 【資源の再生利用】

北京オリンピックのシンボルマークの入ったシャツを観客に贈る呉儀副総理(中央右)

    愛知万博の会場には、70カ所以上のトイレが設置されている。その中の50カ所は、身障者が安心して使うことができる。トイレは簡単に壊すことのできるよう、木を組んでつくられている。流す水は循環式で、繰り返し使える。会場で使われる食器類は、すべて分解するプラスチックで作られている。入場券も再生紙を使用している。

    愛知万博のサブテーマは「循環型社会」であり、「少なく使い、再使用し、循環させる」というこの目標に向けて、さまざまな細かい規定を設けている。

 【ボランティア】

    愛知万博では、ガイドやさまざまなサービスを担当しているのは、主にボランティアである。彼らは統一した服装をしていて、主に会場の入口や空中回廊の入口、パビリオンとパビリオンの中間地点に配置されている。日本語と英語で書かれた方向指示の標識を掲げたり、ピーク時に観客を誘導したりするのもみなボランティアである。道に迷った観客がいれば、ボランティアに頼むと目的地まで連れていってくれる。

    ボランティアたちの熱心さと行動力には頭が下がる。ただ、残念なのは、英語を話せるボランティアが少ないことだ。上海万博では、ボランティアの語学能力の問題を、十分考えなければならない。

 【緊急措置】

    愛知万博期間中、外国人女性が会場西門で昏倒するという事故が発生した。その時、3分以内に、3台の臨時救急車が現場に到着した。そして医療チームが直ちに診察をし、救急措置を施した。8分後、正式な救急車が到着。10分後には倒れた女性を乗せて、病院に向かった。

    緊急事態の下でも、医療チームのメンバーは明確に役割分担をしている。とりわけ印象に残ったのは、救助作業の護衛に当たったガードマンたちが、団結力を発揮して、人垣の中に一筋の通路を開き、倒れた女性のプライバシー保護に努力したことである。

 【入場料に差をつける】

 愛知万博の夜の入場は、毎日午後5時から始まり、午後10時で終わる。夜の入場料は、昼の半額の2300円だ。

 入場料は、年齢によって金額が異なる。12歳から18歳までは中人、11歳以下は小人、65歳以上はシニアで、大人より安い。この他、身障者とその家族への特別割引、回数券などの優遇措置がある。こうしたきめ細かい入場料設定は、上海万博でも参考になる。(2005年9月号より)



 
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