特集3     
趣味からビジネスに発展
 
子どもの目を釘付けにする携帯アニメ

 温夢飛さん(23歳)はまだ若いが、ベテランのフラッシャー(フラッシュを作る人)だ。初めてフラッシュアニメに触れたのは高校3年生のときで、そのときは単なる趣味の域を出なかった。自作のアニメをネット上で流し、それを多くの人から認めてもらえると、まるで自分が有名人になったかのような達成感があった。そのうえ、たくさんの「同志」たちとも知り合えた。当時はまだ、自分が後にフラッシュでお金を稼ぎ、事業を興こすようになるとは思ってもみなかった。

 2003年3月、温さんは3人の友人と一緒に「80s teamスタジオ」を作り、余暇を利用して、広告会社のためにフラッシュの宣伝サイトを制作するようになった。もしこれが上手く軌道に乗ったら、将来は会社を立ち上げ、もっと多くの関連業務を請負いたいと考えている。フラッシュアニメの制作は単なる興味だけでは長く続かず、ビジネス利益があってこそ、より発展できるのだと温さんは言う。

 フラッシャーたちがただの「遊び道具」をビジネスの方向に転換させることで、ネット上で生まれたフラッシュアニメはさらに広い領域へと浸透し始めている。

勢いづく携帯アニメ

「閃客帝国」の創設者・高大勇さん

 携帯電話用のアニメは、フラッシュアニメが今後発展するための重要な市場だ。

 前述の「閃客帝国」は、かなりはやくからフラッシュの携帯アニメの開発に着手した会社である。このサイトはもともと、高大勇さんの個人サイトで、フラッシャーたちの技術交流のために利用されていた。その目的が達成されたあと、フラッシャーたちのビジネス価値の実現を助ける役割を果たしている。

 「閃客帝国」の仕事環境は非常に簡素だ。創設者の高さんのオフィスにも、物が山積みになったパソコンデスクと背もたれがとれた回転椅子、古い一人掛けのソファーしかない。しかしこれが、高さんが抱いている同社の事業発展への自信に影響することはまったくない。

フラッシュアニメを制作するプロのフラッシャー

 現在、中国移動(チャイナモバイル)や中国聯通(チャイナユニコム)などの通信キャリアは、携帯アニメ、特にフラッシュ形式のアニメの普及に力を入れている。中国の携帯電話はこれまで、一部の画像や少しだけ動きがある簡単なアニメしかダウンロードできなかった。ストーリー性のアニメはダウンロードするのにとても時間がかかったため、見ようとする人は少なかった。

 しかしフラッシュアニメはサイズが小さいため、ダウンロードのスピードが速く、路上や地下鉄の中など、いつでもどこでもダウンロードして見ることができる。そのため、一般の携帯ユーザーだけでなく、通信キャリアも携帯用のフラッシュアニメに期待を抱いている。通信キャリアは自ら出資してフラッシュアニメコンテストを開催しており、フラッシャーたちに携帯用のフラッシュアニメを作るように要求している。

 「閃客帝国」は、有名なフラッシュアニメの版権を数多く持っている。また、携帯アニメを専門に作るフラッシャーたちとも契約している。ユーザーがこれらの作品をダウンロードすれば、サイトと制作者も通信キャリアからロイヤルティーを受け取ることができるというしくみだ。

映画への応用は?

『小破孩』シリーズのグッズ(写真・上海拾荒動画設計公司提供)

 フラッシュアニメは銀幕上でも利用できるのだろうか? これは多くの人が考えていることで、フラッシャーたちも積極的に実現を試みている。

 若手映画監督の賈樟柯は、05年のドキュメンタリー映画『世界』の中で、フラッシュアニメのカットを効果的に使った。当時、これはさまざまな議論を巻き起こした。また、有名なフラッシュアニメ『阿貴』シリーズや『小破孩』(いたずらっ子)シリーズは、劇場版の制作を計画している。

 温夢飛さんによると、フラッシュの技術を用いた劇場版アニメはまだ前例がないが、簡単な技術革新をすれば実現は難しくないという。フラッシュアニメと伝統的なアニメの融合は、日に日に進んでいるのだ。

『小破孩』シリーズのグッズは大変人気が高い。フラッシュアニメのグッズ産業の潜在力は巨大だ(写真・上海拾荒動画設計公司)

 電影学院アニメ学院の陳廖宇教授によると、今のフラッシャーの多くは伝統的なアニメ学科の出身だという。これまで、伝統的なアニメはお高くとまっていて、フラッシュアニメをお遊びに過ぎないと見下していた。しかし現在、この考え方は大きく変わった。フラッシュアニメの影響力は非常に大きく、これを無視することはできないと気づいたからだ。

 伝統的なアニメの分野にいた人々がフラッシュアニメの制作を始めた。これと同時に、当初はフラッシュを単なる遊び道具としか考えていなかった人々の作品が、どんどん先進的で優れたものになり、彼らはフラッシュを利用して劇場版アニメを作りたいと考えるようになった。

 05年半ば、レコード会社の中唱・芸能公司は所属の歌手・華少翌の新曲『解夏』のプロモーションのために、人気のフラッシュアニメ制作グループ「其か通」にミュージックビデオの制作を依頼した。このフラッシュアニメは、伝統的なアニメの制作方法をたくさん用いたため、きわめて精巧な出来だった。

メーカーなどはフラッシュアニメを利用して製品を宣伝する

 私たちが通常見るフラッシュアニメは、ほとんどがパソコン上で直接描かれたものだ。そのため、人物や背景の描き方は雑で、プロットも単純である。それに比べ、『解夏』の画面は美しく繊細で、プロットも凝っている。しかし、この精巧な作りのフラッシュアニメは反響が小さかった。

 陳教授は、フラッシュアニメに伝統的なアニメの手法を用いるのは悪いことではないが、身の回りの生活をすばやく反映させ、簡単に伝えるという特徴を体現するのは難しくなってしまうと考える。伝統的なアニメと比べると、フラッシュアニメはニュースを伝えたり意見を発表したりするのに向いているのかもしれない。

 これからフラッシュアニメはどこへ向かうのか。伝統アニメと上手く融合するのか、それともそれに取って代わるのか。今後のなりゆきに注目したい。(2006年4月号より)

 
『解夏』(写真・「閃客帝国」)

 
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