座談会 新農村建設
「豊かになる」道を模索する農民たち
                                                  張春侠=写真

美しい自然のなかにある紅岩村には毎年多くの観光客が訪れる

 中国では今、「新農村建設」という言葉が盛んに使われている。2005年10月に政府が「社会主義の新農村を建設する」という発展戦略を打ち出して以来、今年3月に開催された第10期全国人民代表大会(全人代)第4回全体会議の『政府活動報告』の中でも、温家宝総理は「新農村建設」の推進を強調した。

 「新農村建設」とはいったい何なのか?
 中国の農村は今どのような状況にあるのか?
 どうして「新農村建設」を進めなければならないのか?

 今年3月末、私たちは雲南省と広西チワン族自治区へ赴き、数多くの農村を取材した。そこで見聞きし、感じた中国の農村の現況を報告する。


特集1
道路建設が発展の第一歩

  張春侠(以下、張と簡略) 今年は「新農村建設」という言葉が非常に流行しています。みなさんは中国の農村についてどのように感じていますか。

  林良旗(以下、林と簡略) 私たちは現在、都市住民ですが、農村とは多かれ少なかれ関係があります。私は農村の生まれで、稲穂とともに育ったのです。そこで、農村や農民に対しては特別に親しい気持ちを抱いています。

  原絢子(以下、原と簡略) 私は長野県の出身で、父方の実家は農業を営んでいます。中国にやってきてからはずっと都市で生活していますので、中国の農村の実情には非常に興味があります。

原絢子(29)
本誌日本人スタッフ
 
張春侠(31)
本誌記者
 
林良旗(60)
中国外文局副編集長

2泊3日が6時間に

  林さんはかつて、雲南省で働いていらしたんですよね?

  はい。1970年に大学を卒業してから、雲南省の思茅で仕事をしていました。そして78年に北京にやって来た。

 ――思茅市は雲南省南西部に位置し、人口は253万、面積は4万5000平方キロ。ハニ族、イ族、ラフ族など少数民族が多く居住し、総人口に占める割合は60%。古くから茶を栽培しており、野生古茶樹の群落が8万ムー近くある。

  その後、雲南に戻ったことはありますか。
 
 林 いいえ。

 張 今回、約30年ぶりに戻って、「里帰り」した気分じゃないですか。

 林 非常に親しみを感じた。

 張 一番大きく変化したことは何ですか。

昆明から思茅までは広い高速道路が通っており、非常に便利だ(写真・董寧)

 林 交通だな。これには本当に驚かされた。「天地がひっくり返るような変化」といっても過言ではない。省都の昆明から思茅までは600キロ近くありますが、当時はすべて山道で、長距離バスで2泊3日の道のりだった。まずは楊武まで1日かかり、そこで1泊して、2日目は墨江まで走って再び1泊するのです。そして3日目の午後4時にようやく思茅に到着です。

 張 それはすごいですね。私たちは今回、途中の休憩時間を除いたら、たった6時間で思茅に着きましたよ。しかも道中はすべて高速道路やトンネルで。それでも腰や背中が痛くなりましたけど……。当時の苦労は想像もできないですね。

 林 そりゃー、大変だった。当時、蒙自という地区ではジャガイモを栽培していたのだが、ラバで山奥から街まで売りに行かなきゃならない。その際、ずっと揺れ続けているので、街に着いたときには皮が全部むけ、もう売れなくなってしまったという話もあるくらいだよ。ジャガイモ加工工場に売れば、皮をむく必要がないから都合いいと冗談を言う人もいたがね(笑い)。

 原 交通が不便だったら、栽培した農産物はどうしていたんですか。

 林 そのまま畑で腐っていた。だから穀物以外は栽培せず、非常に貧しかった。住居も土レンガの壁にカヤぶき屋根。部屋の中には何もなく暗くて、農民たちもみな痩せこけていましたね。

まずは道路を建設

思茅市はプーアル茶の重要な産地。大規模な茶畑が周囲に広がる。写真後方に見えるのが思茅市

 原 今回、昆明から思茅までの道は悪くなかったですね。でも、プーアル県の困鹿山古茶樹群落の古茶園までの道は、高速道路からそんなに離れていないのに、舗装されておらず、しかも道幅が狭かった。車の中でずっと揺られていましたよ。あちこちで砂埃があがり、前が見えなくなることもしょっちゅうでした。もちろん窓は開けられず、それでも車の中は砂埃がいっぱいでむせました。

 林 そうなることを、私はプーアル県に着いたときから予想していた。あのとき、私たちは普通のマイクロバスから四駆に乗り換えましたね。そうそう日本のトヨタでした。だからきっと道が悪いのだなと思ったわけです。まさかあそこまで酷いとは思わなかったが……。

 張 本当につらかった! 車の中では両手で手すりにしがみついていても、体が飛び跳ね、頭を天井にぶつけました。内臓が全部飛び出てしまうかと思ったくらいです。30キロの道のりが1時間半もかかり、私は最後に車を降りてから吐いてしまいました。でも、運転手さんによると、車で行けるだけいいとのことでしたよ。かつてあの辺りは道路という道路がなかったそうです。

 林 雲南省は、幹線道路は整えられてきたが、村々へ続く道、特に山間部の道路の整備はまだまだだ。今後、すべての村に道路を建設するよう努めなければ、農民たちは貧困から脱却できない。

 原 道路の建設が先ですか。それともまずは豊かになること?

 林 中国には「豊かになりたかったらまず道路を作れ」という言葉がある。道路を建設し、農産物を流通させてこそ、農民たちは豊かになれるのです。

 原 道路の建設は誰が行うのですか。中央政府?

 林 中央と地方、そして村がともに力を合わせて建設する。中国ではまだ、145の郷(県または県以下の区の指導を受ける行政区域)と5万124の村に道路が通っていない。そこで「第11次5カ年規画」の期間(2006〜2010年)、国家は千億元を投資して、農村の道路事情を全面的に向上させるとしている。

 「新農村建設」の重要な事柄の一つは、農村の水、電気、道路などインフラ建設を強化し、農民たちが収入を増やせるよう環境を整え、都市部との格差を縮小させることなのです。

 


新農村建設

思茅市の中心には、「倒生根」という大きなガジュマルの奇木がある。800年以上の歴史を持ち、1本の主幹から出た4本の根が通常とは逆に上から下に向かって生え、それが地下にもぐりこんでいて、まるで5本の木が連なっているよう。最も太い幹は、5〜6人抱えの太さだ。

  社会主義の新農村建設とは、中国が「工業は農業に報いる、都市は農村を支援する」という新しい段階に入った中で提出された戦略で、国家は、農業、農村、農民に対する全面的な支持を強化し、「生産を発展させ、生活にゆとりをもたせ、気風を文明的にし、村の様子を整え、管理を民主化する」という具体的な目標を掲げている。

  新農村建設の核心は農民を豊かにすること。それと同時に教育や衛生などの面の公共施設を整え、農民の生活の質、文化的素質、道徳と教養、科学技術の知識などを高める。その上で、農村と都市、東部と西部、人と自然の調和を実現させ、新しい調和のとれた社会を建設するとしている。

困鹿山古茶樹群落

  プーアル県の県城(県人民政府が置かれている町)から30キロ余り。標高2000メートル以上、同県で保存が比較的よい、栽培価値のある古茶園の一つ。

  総面積は1万122ムーで、園内には樹齢千年以上の古木が400株ある。そのうち、幹周りが2.5〜2.9メートルあるものが3株、2メートル前後のものが20株、1メートル前後のものが100株。

  専門家によると、ここのプーアル茶は「大葉茶」と呼ばれ、古いプーアル茶の原産地の一つである。葉の大きさが、大、中、小さまざまなタイプの木があり、プーアル茶の天然博物館ともいえる。(2006年7月号より)


 

 
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