頤和園の長廊画I 写真・文 魯忠民

 
 

   
 

「画竜点睛」

  中国古代の成語故事の1つだ。南朝の梁の時代(502〜557年)に、張僧ヨウという画家がいた。人物画、動物画に長けており、とりわけ竜の絵画においては、右に出るものがいなかった。

  梁の武帝が金陵(現在の南京市あたり)に「安楽寺」を建立したあと、画家を招いて、寺院の壁に竜を4匹、描かせた。それは生き生きとした勢いにあふれ、いまにも動き出しそうだったが、目だけが描かれていなかった。ある人が「どうして目を入れないのか?」と聞くと、張僧ヨは答えた。「もし目を入れたら、まもなく飛び立ってしまうからだ」と。人々は信じられず、画家を「ほら吹き」だと言った。

  やむをえず、張僧ヨが2匹の竜に目を入れたところ、一天にわかにかき曇り、雷鳴とともに激しい雨が降りだした。すると寺の壁が崩壊し、爛々と目を光らせた2匹の竜が、天高く飛び立っていった。ただ、目を入れられなかった2匹の竜だけが、寺の壁に残ったのである。(2005年10月号より)

 
   
   
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北京の頤和園は、中国清代の離宮である。庭園にある長廊は、全長728メートル、世界でも最長のギャラリーと言われている。その梁の上には人物や山水、花鳥、建築など各種の彩色画が8000以上ある。なかでも人物画は中国の古典文学、歴史物語、神話伝説などから材を取って、描かれている。本誌では今月号から長廊の彩色画を1つずつ取り上げて、絵画に描かれた物語をご紹介していきたい。

 

   
 

 
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