頤和園の長廊画(23) 写真・文 魯忠民
   
 

王羲之は鵞鳥が好き

 東晋(317〜420年)の著名な書道家王羲之(321〜379年)は幼い頃から鵞鳥(ガチョウ)が大好きだった。

 会稽(今日の浙江省紹興あたりに相当)のある老婦人が飼っている一羽の大きな白い鵞鳥は、耳に心地よい澄んだ鳴き声をしていた。王羲之は大金でそれを買い取ろうとしたが、老婦人に断られてしまった。そこで、彼は親類と友人を連れてその声を聴きに行った。ところが老婦人は彼がやってくると聞いて、料理して彼らをもてなそうとわざわざ鵞鳥を殺してしまった。王羲之は大いに興ざめして、長い間嘆き続けた。

 その後今度は山陰(今日の浙江省紹興あたりに相当)のある道士がいい鵞鳥を飼っていると聞きつけた王羲之は、大急ぎで見に行った。白い鵞鳥は思った通りことごとくまるでこの世の物とは思えないほどのもので、羲之は非常に気に入って、すぐに何羽か売ってくれるよう道士に頼みこんだ。道士は言った。「わが道観のために『道徳経』の一篇を書いて下されば、この鵞鳥の群れごと全部差し上げましょう」。羲之は快諾し、たちまちその写書を書き上げると、白い鵞鳥を一羽ずつ籠に入れて、大喜びで帰っていった。(2006年11月号より)

 
   
   
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 北京の頤和園は、中国清代の離宮である。庭園にある長廊は、全長728メートル、世界でも最長のギャラリーと言われている。その梁の上には人物や山水、花鳥、建築など各種の彩色画が8000以上ある。なかでも人物画は中国の古典文学、歴史物語、神話伝説などから材を取って、描かれている。本誌では今月号から長廊の彩色画を1つずつ取り上げて、絵画に描かれた物語をご紹介していきたい。

 

   
 

 
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