干支にみる中国文化       文・魯忠民
卯兎
月宮に住む唯一の動物
 
 

 卯(う)の刻は明け方の5〜7時で、月明かりがまだ残るころである。人々は神話の月宮(月の中の宮殿)にいる唯一の動物「玉兎」を思い起こすので、12支の卯とウサギがその時間に配された。

 人々がイメージするウサギは「善良、平和、温順、謹慎、気弱」である。そのため、卯年の人も「平和と善良、慈愛、純潔を愛する人だ」と考えられている。子どもたちの世界では、ウサギとオオカミは善悪の代表だ。また、玉兎が月宮に長く住んでいることから、ウサギが長寿のシンボルになったようである。

 旧暦8月15日の中秋節は、中国人が月を愛でる大切な日だ。言い伝えによれば、月の中には「広寒宮」という宮殿があり、嫦娥(じょうが)という古代伝説上の仙女が一人さみしく住んでいる。そばには玉兎がいるだけだ。

 北方地方の中秋節では、泥人形の「兎児爺(トウアルイエ)」を月に供えるのが広まっている。それは鎧かぶとを身につけ、錦の長衣をはおり、獅子やトラにまたがり、威風堂々としている。ウサギの割れた唇と、天を向いた長い耳は、滑稽でまた愛らしい。陝西省北部の剪紙(切り紙)で、もっともよく使われるウサギの図案が「鷹抓兎」(タカがウサギを捕まえる)と「蛇盤兎」(ヘビがウサギに巻きつく)だ。民俗習慣において、ウサギは女性の、タカとヘビは男性のシンボルである。いずれにしても、その図案は「生殖崇拝」の寓意を含んでおり、後の世代が繁栄し、幸せに暮らせるようにと願っているのだ。

 

 
 
 
 
 
 
 
   
 
 
 
 

 

本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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