干支にみる中国文化       文・魯忠民
亥猪
貪欲だが憎めない
 
 

 亥(い)時は、夜9時から11時である。ブタが熟睡して大きないびきをかき、全身を震わせて、もっとも肉がつく時間帯なので、亥時にブタが配された。

 日本の12支は、原型とは異なるイノシシが当てられている。中国人のブタの好き嫌いは、おもに家畜のイメージから来たものだ。ブタといえば一面では、きたない、愚かだ、不器用、貪欲、無精などと形容される。古代中国の「六畜」の中で、ウシは田を耕し、ウマは車を引き、トリは夜明けを告げ、イヌは門を見張ることができるが、ブタだけは食いしん坊の怠け者である。しかし、内蒙古自治区のオンニュド旗にある紅山文化の遺跡で発見された玉彫の「中華第一竜」は、なんとブタと竜が合体したもので「玉猪竜」と称される。専門家の考証によれば、ブタもかつては古代人が崇めていたトーテムであった。

 日本でよく言われる「猪突猛進」は、イノシシのようにまっしぐらに突進する精神を表している。また、中国の民間芸術によく見られる題材や絵柄として、「肥えたブタが金銀財宝を載せて、門を押し入る」というものがある。「肥猪拱門」と言われて、豊年を予兆するものだ。家畜のブタは全身これ宝であり、肥えたブタは農家の富のシンボルなのだ。

 ブタとウシ、ヒツジを合わせて「三牲」と呼ぶ。つまり人々が天地を祭り、鬼神を拝むときのいけにえである。ブタはまた子孫繁栄の象徴でもあり、陝西省北部の女性がつけるスカートの帯には、2つの頭をもつブタが刺繍されている。それは男女の交配を暗示している。女性の腹巻きに刺繍されるのは、ブタまたは魚、ザクロなどの図案で、これも子孫繁栄、家族が増えるという願望を表している。中国の古典小説『西遊記』の猪八戒は、ブタと人間、神様のイメージを合わせたもので、中国人によく知られる愛すべきキャラクターだ。民間剪紙(切り紙)のブタの形は、丸くて大きく、とてもかわいい。

 

 
 
 
 
 
 
 
   
 
 
 
 

 

本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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