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海峡を越えて心と心をつなぐ

アモイの中山路の商店街では、台湾風味のスナックが売られている

海峡の幅が平均270キロしかない台湾海峡。しかし歴史的な原因で、中国大陸と台湾との間には、越えがたい溝が横たわり、長い間両岸の人々の交流を妨げてきた。だが1980年代末から、両岸の「堅い氷」が融け始め、人々の往来は次第に盛んになってきた。とくに2001年から始まった「三通」が重要な役割を果した。とりわけ両岸の直接航行は、大陸と台湾との道程を縮めただけでなく、両岸の人々の心と心を近づけている。

アモイから船で金門島へ

暖かい風が吹き、草花が咲き誇る初春のアモイ。四川省から旅行に来た若い女性が、アモイの港に停泊中の遊覧船「普陀之星」号に乗船した。船べりに立つ林怡さんはアモイに来た目的について「二つある」と言った。「一つは有名なアモイのコロンス島(鼓浪嶼)の景色を楽しむこと。もう一つは海の上から金門島を眺めること」

台湾当局の管轄下にある金門島は、アモイからわずか10キロ足らず。ここはかつて台湾を「象徴」する島でもあり、また台湾を探る「窓」でもあった。いまでは毎年、多くの大陸の観光客が海の上から、その島影をはるかに眺める。

出航してから40分、「普陀之星」号は金門島から約500メートル離れた海上に停泊した。100人余りの観光客は船首に鈴なりとなって、カメラを構えて記念写真を撮った。淡い霧のベールに覆われ、木々が青々と茂る金門島には、トーチカのような軍事施設がぼんやり見えた。

一方、アモイの国際郵便埠頭の出発ロビーに座っている陳さんも落ち着かない。間もなく陳さんは、ここから船で金門島まで行き、そこで台北行きの飛行機に乗り換えて、8日間の台湾旅行を始めようとしているのだ。「台湾に行くなんて、昔は考えたこともなかったよ。そんなことをしたら、敵に投降するんじゃないかと疑われてしまうよ」と、63歳になる陳さんは言った。「今は正々堂々と台湾へ旅行に行ける。本当に時代が変わったんだね」。台湾で一番したいことは、阿里山に登り、日月潭を観ることだという。

廈門康輝旅行社は、昨年七月から台湾ツアーを始めたが、半年ほどで3003百名余りの大陸の観光客を台湾へ送り出した。とくに昨年12月に「大三通」が実現すると、「台湾ツアー8日間」の価格がそれまでの9000元から一気に5000元前後に下がった。このため大陸のサラリーマン層が台湾観光に行きやすくなった。

今年は大陸からの観光客は36万人に達するとの見込みだという。旅行社の林志民総経理によると、「台湾本島周遊」のほかに「ホエール・ウォッチング」や「温泉めぐり」「台湾グルメツアー」などが計画されているという。

頻繁になった両岸の往来

「小三通」が始まってから、アモイの埠頭で、アモイから金門島までの船のチケットと金門島から台湾島内への飛行機のチケットを通しで買うことができるようになった

「今度台北に来たら、必ず私のところへ寄ってくださいね」。アモイの五同埠頭で、台湾から来た国栄楽団の呉栄燦団長は、見送りに来たアモイ市の係の人をきつく抱きしめながら、心を込めて言った。

福建省政府の招きを受け、呉団長は台湾中華国楽学会の訪問団に加わり、大陸にやって来た。わずか5日間で、訪問団のメンバーは、随行した大陸の係の人たちと友情の絆を結ぶことができた。

かつて金門島で兵士だった呉さんにとって、感慨はひとしおだった。「1970年代に金門島で歩哨に立ったとき、アモイと金門島の双方が砲撃しあい、砲弾が私の頭の上をビュンビュンと飛び交ったことをいまでも覚えています。いま、こうした身分でアモイに来られるなんて、思ってもいませんでした。そのうえ皆さんが、まるで家族のように私を遇してくれる。いま、両岸の交通がこんなに便利になったのだから、これからは何回も大陸に来たいと思います」

金門島まで直行する船が出るアモイの国際郵便埠頭では、32歳の王秋芬さんが双子の娘たちをつれて、金門島へ行くための手続きをしていた。王さんは福建省漳州市の出身で、8年前、台湾の高雄市でビジネスをする台湾の人と結婚し、二人は金門島に居を構えた。今年の春節(旧正月)、王さんは娘たちをつれて大陸の両親のもとに里帰りした。いま春節の休みも終わったので、家へ帰るところだった。

金門島と大陸を往復するたびに、両岸の港で提示しなければならない当局の発給した通行証明書は9枚にものぼるが、王さんはそれでも「満足しています」と言った。「船やバスを待つ時間を除いて、3時間で両親に会えるんです。暇さえあれば、いつでも漳州に帰れるようになりました」

統計によると、王さんのような台湾にいる「大陸花嫁」は、少なくとも24万人いる。両岸の直航便の開通によって、彼女たちの里帰りは便利になった。

現在、大陸と台湾は、アモイと金門島をつなぐ海上大橋の建設を検討している。それが完成すると、王さんは車で帰省することができ、故郷がいっそう近くなる。(沈暁寧=文 馮進=写真)

 

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