中国共産党100周年習近平総書記演説に寄せて―

「革命の長途にある中国」という認識の大切さを考えさせられた習近平総書記演説

 

文:木村知義

NHKで長らくメインキャスターをつとめていた木村知義氏は、71日に行われた中国共産党成立100周年記念大会の生中継を視聴したのち、習近平総書記の演説内容を精読して研究した。自らを中国とは社会制度が異なる日本に住んでいると語るが、習総書記の演説内容には深く共感し、新たな知見を得ることができたと言う。

そして木村氏は、近年の日本のメディアにおける否定的な論調について心が痛むと語り、その心情を寄稿してくれた。木村氏の後輩に相当する多くのメディア関係者に向け、中国をより深く研究し、客観的に理解すべきと提言している。

 

中国共産党成立100周年大会で演説する習近平総書記

 

「今日この日は、中国共産党の歴史と中華民族の歴史において、非常に重要で厳かな日です」と語り始めた習近平総書記。あらためて演説を読み返していく時、中国共産党とともに中国人民が歩んだ100年という時の重みが胸に迫る。中国の人々が、そして革命に一身を捧げた数えきれない先人たちが中国共産党の下で幾多の困難に立ち向かい、それに打ち克って現在に至ったこと、すなわち中国人民の抵抗と革命へのたたかいが新たな現代史の扉を開き圧政に苦しむ世界の人々の心を揺り動かした世界史的な意義について深い感慨を呼び起こされるのだった。

しかし、新聞やテレビなど日本のメディアで伝えられるニュースは、私の感慨とはほど遠いものであった。「『他国の圧迫許さぬ』台湾統一に意欲」という見出しはまだしも「強権堅持、解放軍を増強」「説教受けない 危うい道」あげくの果てに「人間にたとえれば、自信過剰と不安症を併発している状態に近い。その分、冷静さを欠いた行動に出る危険も高まる」とは一体なんという言説だろうか、これがジャーナリストの言葉だろうかと唖然とするばかりだった。

 

 

こうした浅薄で歪んだ中国認識の根源には何があるのだろうか。考えるべき問題は多岐にわたるが、ただ一つだけに絞って挙げるなら、中国革命への認識の欠如によるものだと言えるのではないだろうか。とりわけ、民衆が中国共産党の下に立ち上がり革命闘争に勝利して新中国を打ち建てたとはいえ、そこで革命が終わったのではなく、壮大な歴史的使命、目標に向けていまもなお長い道のりの途上にあって闘い続けている中国という存在への無知によるものではないかと思うのである。

いうまでもなく、革命とはそれまでの支配階級を打倒し、旧社会の制度、仕組みを新しくし、人民が主人公になる新たな社会を建設するというとてつもなく大変な社会変革の事業である。このことをどれだけ深く認識できるのか。そして、なによりも、今なおその途上にあるということの意味をどれだけ認識できているのかである。

さらに言えば、私にそれを語る十分な資格はないとはいえ、社会変革とはその実践に身を投じることによってはじめて実体を伴って認識できるものだろう。そうした実践に寄り添って物事を考える努力と想像力なしに、単なる局外者が付け焼刃の知識で批評して事足れりというものではない。

 

エドガースノーの『中国の赤い星』

 

物心ついたころ読んで感動し、そこで伝えられる中国革命の姿に、中国と世界への問題意識に目をひらくきっかけとなったエドガースノーの「中国の赤い星」は、局外者としてのジャーナリストの書いたものでありながら読む者の魂を揺り動かす力を持っていた。スノーは、事実に謙虚に向き合い、自身が見ているものが現実を的確にとらえているのかを鋭く自身に問いかけながら伝える営みを重ねていた。さらに、革命を闘う人間への深い洞察があった。その根底には、厳しい自己省察があった。現在の既存のマスメディアには押しなべてそこが根本的に欠如していることを痛切に感じる。

では、中国が壮大な革命の長途にあるという認識がどんな意味を持つのだろうか。

習近平総書記は「9度にわたる呼びかけ」で繰り返し、繰り返し、これからの歩みを進めるにあたってどうあらねばならないかを語っている。ここに、これからの中国が歩む道が凝縮されている。それはとりもなおさず、その途上で直面することになる困難や課題について語り、勇気を奮って乗り越えていこうと呼びかけていることにほかならないと理解できる。現実は日々動いている、ゆえにそれに立ち向かうのは未知の領域との闘いとならざるをえない。試行錯誤の途上では「間違い」もあれば「力不足」にも直面するだろう。しかしそれに臆することなく勇気を奮って立ち向かおうと呼びかけたのだ。だからこそ「歴史に鑑み」という言葉が重い意味を持つ。さまざまな試行錯誤で、「誤り」に遭遇、直面した時に、まさに時を置かずに改め、乗り越えてきた経験の積み重ねが未来に向けての力になるということだ。

 

 

現在に至る中国が大きな成果を上げたことで何かが終わるのではなく、マルクスが提起した人類究極の目標に向けて今もなお歩み続けている、途上にある中国なのだという認識がなければ、習総書記の演説から何も見えてこない。琴線に触れるものもないだろう。

新中国の樹立により革命の第一段階を上り、豊かな中国を築き、さらに高い段階の社会主義中国を創造する道に歩みを進める、すなわち人類史的な目標に向けて革命の途上にある中国という認識と時間概念を欠くと浅薄かつ恣意的な「批評」をして終わることになる。

さらに注意を払わなければならないのは、中国を見る際の基準が「欧米」の価値を普遍とするところから一歩も出ることができないことにある。そうした「眼差し」からは本来見ておかなければならない、あるいは知っておかなければならない中国は見えてこない。メディアが「世界の規範に反して中国が独自のルールを作ろうとしている」と語る時の「世界」とは既存の「欧米」世界にしかすぎないことは、まったく意識されないままである。

世界が根底から変わっていく歴史的転換の時代にあって、認識を新たなものにするためには言葉もまた新しくしなければならない。そのことへの問題意識に無知なままで世界を見ようとする、あるいは中国を見ようとすることに本質的な無理があることを知らなければならない。

 

 

演説の終末近くで習総書記が特に青年たちに対して呼びかけていることは重要な意味を持っているのではないだろうか。あの日、演説する習総書記の眼下に広がる天安門広場に参集していた数えきれない青年たちは、おそらく中国がすでにある程度の発展を実現した時代に生を享けた若者たちだろうと想像できる。未来をつくるのは君たちなのだ。だから今目にしている成果に安住することなく、難しい課題に果断に挑戦して中国革命の志を継いでいってほしい、君たちこそが中国の希望なのだという、若者たちから見れば「前の世代」からの熱い期待をこめた呼びかけだったと私は受けとめた。(画像はネットから転載)

 

 

NHKメインキャスターの木村知義氏

 

人民中国インターネット版 2021830

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