国内を走る新型高速列車 陰で支える90年代生まれ

 

「復興号」の運転室で車載情報システムの点検をする劉さん

 

完全に独自の知的財産権を備えた中国基準動力分散式高速列車としてようやく姿を現した「復興号」は世界の注目を集める「高速鉄道の星」となった。「復興号」は以前の「和諧号」と比べて設計寿命が向上し、車体空間が大きく、試験速度は時速400に達し、走行抵抗は7.5%以上軽減し、走行距離100ごとの1人当たりのエネルギー消費量は17%軽減し、車内の騒音がやや低下した。

広大かつ複雑なシステムプロジェクトとして、「復興号」には設計や試験から運行や点検修理まで数え切れない人々の知恵と汗が注がれており、その中には多くの一般的な科学技術者がいる。「復興号」を陰で支えた「一般人」グループには「北京鉄路局北京南動車運用所」の「90後(1990年代生まれ)」の大学生班もあった。今回は「復興号」を点検修理する「高速鉄道の医者」にスポットを当てる。

 

細かい点検を経て、何も問題ないことが確認された車両のみが運行するのだ

 

減る作業量、増す責任

赤いラインの入った「復興号」がレールに沿ってゆっくりと点検修理レーンに入ると北京南動車運用所の劉玉冰さんは同僚と一緒に忙しい仕事に取り掛かる。劉さんが所属する1級点検修理班は「90後」の大学生によって構成され、それぞれが番号を持ち作業を明確に分担している。「私たちは集団で行動するのでチームワークが非常に重要です。少しのミスも出してはなりません」と劉さん。

北京高速列車部門党委員会補佐員の任偉霞さんは「劉さんがいる1級点検修理場の『90後』大学生班のメンバーは総合的な資質がしっかりしていて、成長が速く、責任感があります。現在、『復興号』の1級点検修理は彼らに担当させています」と評価した。

「復興号」シリーズは毎回6000あるいは48時間の運行後に必ず「1級点検修理」を受ける。これは列車の安全で安定的な運行を保証する欠かせない業務だ。1級点検修理はまず車内装置の検査から始まり、続いて車体の両側を確認し、それから車体の下部と上部を見る。「復興号」は「和諧号」と構造が大きく異なっており、点検作業員にはとても高度な技術が要求される。特に、ブレーキ試験操作のいくつかの項目には秒単位の操作精度が要求され、少しの不注意があれば試験はパスできない。これは従来の高速鉄道のブレーキ試験にはなかったことだ。

大学生班の韓朔風さんはこう語る。「実際、『和諧号』と比べて『復興号』の作業量はとても減りました。以前の高速列車は底部に1万を超えるボルトがあったためその作業量はとてつもなく大きかったです。『復興号』の底部にはスライド式を採用しているので、外部に露出しているボルトが非常に少なくなりました。車体の幅も広くなり、ドアの点検修理も楽になりました。空調施設も下部から上部に移り、吸ったごみやほこりの量も減りました。他にも、『復興号』にはまだ多くの設計上の工夫が凝らされています」

しかし、作業量の軽減は作業員のプレッシャーまで減らすわけではない。メンバーの王鉄柱さんはこのように語る。「実際、プレッシャーは増えました。『復興号』の点検修理は『専人専修』という特徴があって、専門の人間が専門的に修理を行います。新型車両ですので、多くの問題が今まで経験したことのない新しいものばかりです。鉄路総公司は『復興号』点検修理業務のために就業前研修のプログラムを組んでいますが、それでも実践の中で経験を積み重ねていかなくてはなりません。『復興号』の点検修理保障業務に参加できて、みんな大変光栄に感じています。それが無意識にプレッシャーになっているのでしょう」

 

快適な旅を守る無名の若者

車体下部の点検修理も劉さんの仕事だ。作業者はボルトやベアリングを一つずつ手で触って検査するという決まりがある。地下通路の風通しは悪く、頭上では車両の設備が放熱しており、点検修理は極度の蒸し暑さの中で行われる。しかも車体は地下通路から離れているので、車体下の部品にずれがないか徹底的に確認するために劉さんは地下通路に入って常に首を上げたまま作業を行わなければならず、額ににじむ大粒の汗がいつも目に入る。このような仕事を劉さんは1日数十回繰り返す。

大学生班は1日3交替制で勤務し、毎日52車両を点検する。「復興号」以外に他の高速列車の点検業務もある。車両の上部から下部まで、さらに車内の座席、照明、空調、湯沸かし器まで全てチェックする必要がある。パイプの接続箇所が緩んでいないか、ボルトに破損がないのかを逐一チェックし、ある部位の点検には適切な記録を取らなければいけない。無事な運行と安全第一のために、彼ら「90後」の若者たちはまるで「刺しゅう」のように細部まで念入りに列車の点検を行うのだ。

メンバーの李成磊さんはこう語る。「われわれの仕事は繰り返し決められた順序に従って行うという特徴があります。より精度を上げたいとするなら、頭と手をさらに動かすしかありません。車両と人には擦り合わせてお互い慣れていく過程があります。例えば、新しく来た『復興号』には時間をかけて彼の性格や個性をしっかり把握します。われわれの点検は数時間しかかかりませんが、数千万人に上る乗客を乗せて数千に及ぶ距離の安全な運行を保証しなければなりません。このことを考えるたびに、自分が作業を繰り返す中でより確実で速く行える経験を積まねばと心に決めています」

 

 

地下通路の点検から出てきた劉さんの青い作業着は汗に濡れて紺色になり、眼鏡のレンズは曇っていた。彼は油まみれになった手を拭きながら笑ってこう語った。「毎日深夜0時から3時は人々が眠っている時間帯ですが、われわれにとって一番忙しい時間帯です。祝日や休日だとさらに忙しくなります。特に春節(旧正月)旅行のピーク時には一晩で80車両以上点検しなければいけないので、車体の中で年を越す人も少なくありません。しかし終わってしまえば誰も愚痴を言いません。仕事とは責任を負うものです。この数年で中国の高速鉄道は目覚ましい発展を遂げています。現場で働く作業者として誇りに思いますし、わずかな気の緩みも許されないと自覚しています」(谷業凱=文 馮進=写真)

人民中国インターネット版

 

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