「デジタル」で「エコ」な自貿区

 

 

 

中国の南北を分かつ境界線となっている淮河は、蚌埠市内を流れており、このために蚌埠は中国の南北にまたがる地域となっている。長年、蚌埠は「鉄道が引っ張ってきた都市」と呼ばれていた。1911年、天津から南京の浦口までの鉄道が完成し、列車は蚌埠で淮河を越え、停車駅が設けられた。交通の便利さにより、南北を行き交う貨物は蚌埠で集散することになり、蚌埠の商業貿易はこの頃から急速に発展した。当時の蚌埠の人々は自慢げに、「上海にあるものは、蚌埠にみんなある」と言ったが、ここからも交通の中枢(5)としての蚌埠がいかに繁栄していたかが良く分かるだろう。今日でも、蚌埠は中国の商品化食糧の重要な中継輸送地であり続けている。

新中国成立後、蚌埠で製造・生産された工作機械や空気圧縮機、ディーゼルエンジン、トラクター、ポンプは全国的に名を知られていたばかりか、海外にも輸出され、中国が工業化に向かうために重要な役割を果たした。現在の蚌埠はすでに従来の工業都市から新素材、新エネルギーを発展させる新興産業拠点へと転換していて、シリコンベース・バイオベース材料(6)の研究開発を行っている大企業が30社近く置かれている。ここは世界最先端の初めて国産化された超薄型ガラス産業チェーンがあるだけでなく、タッチパネル用超薄型ガラスの生産において世界記録を更新し続けていて、さらに中国初で最大規模のポリ乳酸(PLA)(7)の全産業チェーンの生産ラインが完成している。「イノベーション都市、素材の都市、製造に強い都市」が蚌埠の新たな都市の「名刺」となっている。

安徽自貿区の設立により、1991平方㌔の蚌埠自貿エリアはシリコンベース材料、バイオベース材料、新エネルギーなどの産業を重点的に発展させ、世界クラスのシリコンベース・バイオベース製造センター、安徽省北部地域の科学技術イノベーションと開発・発展のけん引エリアをつくり上げる場所として位置付けられた。

蚌埠市内にある創新大廈9階に、地元政府のさまざまな部門から集められた十五、六人の職員による蚌埠自貿エリア専門班が置かれており、蚌埠自貿エリアの発展のための政策・措置を研究・制定している。同班の卞家濤副主任によると、同自貿エリアは「デジタル自由貿易」と「エコ自由貿易」を二大特色とする予定だ。「デジタル自由貿易」とは、行政事務・ビジネスのデジタル化総合サービスセンターの設立により、企業の発展需要を正確に満足させ、企業の発展における問題を即時に解決し、企業の建設プロジェクトの審査の便宜を図り、エリア内の企業のために良好な経営環境をつくり上げるというものだ。「エコ自由貿易」とは、シリコンベース・バイオベース材料などのハイテクエコ産業を重点的に発展させるというものだ。

蚌埠自貿エリアの計画の中で、企業に対する優遇政策は何よりも魅力的だ。中でも全国の他の地域に先行する自貿区の優遇政策は蚌埠自貿エリアにおいて全て適用され、その上で蚌埠には企業投資・貿易・科学技術成果の実用化の面でさらに現地の優遇制度がある。かつ、蚌埠自貿エリアに登録した企業は、その他の地域での経営においても自貿区で提供されている便宜を受けることができる。「こうした利益シェアのメカニズムは蚌埠自貿エリアのイノベーション精神を示すものです。その目的は蚌埠自貿エリアにさらに淮河沿岸と安徽省北部地域の経済発展を後押しする役割を発揮させるためであり、相対的に遅れたこのエリアに住む人々にも、もっと早く豊かな生活を送ってもらいたいと思うからです」と卞副主任は語る。

蚌埠は、「砂を孕んで真珠となる」と言われるイシガイ科の真珠貝が豊富に採れ、昔から真珠の生産地であり、「真珠城」という美称もある。安徽自貿区の設立と発展に伴って、蚌埠は必ずやより輝かしい産業の「真珠」を育んでいくに違いない。

人民中国インターネット版 20213

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