中日友好が青年の力を呼び起こす

賈秋雅=文

 

「中日両国は一衣帯水の隣国です。両国の友好の根幹は民間にあり、両国人民の友好の未来は青年世代に託されています」。先ごろG20大阪サミットに出席した習近平国家主席は、日本を訪問する前にPanda杯全日本青年作文コンクール受賞者の中島大地さんの手紙に返信し、その中で両国の若者が中日関係の美しい明日を切り開くために積極的に取り組んでほしいという希望を述べた。

Panda杯全日本青年作文コンクールは中国外文局傘下の人民中国雑誌社、駐日本中国大使館、日本科学協会が2014年から共催している日本語の作文コンクールだ。「わたしと中国」をテーマにした作文を募集し、中日青年交流を促進し、日本の若者に中国をより理性的客観的かつ包括的に理解してもらうのが目的。筆者は人民中国雑誌社の一員として、同社の幹部や社員と一緒にコンクールの計画から実施まで一連の業務に携わっている。

 

「習主席の返信が来たんです」。電話越しに聞こえる中島さんの声から興奮が伝わってきた。「まさか返事が来るとは思いませんでした。本当にうれしいです」。このニュースが報道された626日の午後、筆者の微信(LINEのようなチャットアプリ)は「習主席が日本の若者に返信を出す」というニュースで埋め尽くされた。Panda杯の微信グループチャットでは、中国を訪れたことがあるPanda杯の歴代受賞者、Panda杯を共催している日本科学協会の協力者の方々、現地で受賞者をもてなしてくれた中国各地の友人たちが報告し合い、中島さんの喜びを分かち合った。今回のサプライズはPanda杯の参加者と協力者を激励するだけではなく、中日の美しい未来を望む両国の若者に勇気を与えるものだ。

 

中国へ発つ前に駐日本中国大使館で行われた授賞式に参加する受賞者たち

 民間交流が大きな力を発揮

『人民中国』日本語版は1953年に創刊されて以来、中日の民間の相互理解と友好交流の促進に絶えず力を注いできた。その意思は中日関係がどのように変化しても、変わることはない。最近では雑誌を中日各層の人的文化的交流活動を行う場所としており、中日のハイレベルな民間交流を行う「北京-東京フォーラム」や、青少年を中心とするPanda杯全日本青年作文コンクールなどを開いている。

Panda杯を創設した2014年、中日関係は低迷期にあった。両国民、特に若者に中日友好に対する自信を植え付け、関係改善を推し進めるのが、共催者である駐日本中国大使館、人民中国雑誌社、日本科学協会の狙いと願いだった。

 

中国外文局で行われた授賞式に参加する受賞者たち。式典後、劉徳有氏(後列中央)が中日交流に関する自身のエピソードを語った。写真はその後の記念撮影

 Panda杯の特徴は日本語で応募ができるという点です。中国語はできないけど中国のことをもっと知りたいという日本の若者に絶好の機会を提供しています」と中島さんは語った。主催側は若者に気軽な参加を呼び掛けている一方、特色あふれる訪中交流の緻密な計画を立てている。

 

受賞者は北京ダックに舌鼓を打った後、人民中国雑誌社の陳文戈社長に寄せ書きした色紙をプレゼントした

 創設から5年間で日本の若者は北京、上海、南京、揚州、曲阜、成都などを訪れた。訪中団は行く先々で中国の一般的な生活風景に溶け込み、日に日に発展する中国の変化を感じてきた。また、戦争の歴史から傷痕や痛みに触れ、友好の歴史からパワーを得てきた。訪中団は中国各地の若者と一緒に観光し、鑑真や魯迅や周恩来総理ら中日友好に尽力した古今の人々と時空を超えて言葉を交わした。さらに、元文化部副部長の劉徳有氏や森ビル特別顧問の星屋秀幸氏ら先輩方が中日友好に従事した長年の経験を参考にし、自らの行動に生かした。

 

上海の内山書店跡地で、魯迅と日本人の友情を説明する人民中国雑誌社の王衆一総編集長

 筆者たちは親しみを込めて、中国を訪れる日本の若者たちのことを「小さいパンダ」と呼んでいる。中国から帰って来た彼らが大学や企業で同級生や同僚に訪中の感想を語ることで、より多くの若者がPanda杯に興味を持ち、コンクールに参加するようになる。訪中の翌年に中国に留学した「小さいパンダ」もいる。彼らもまた中国各地からやって来てPanda杯に参加し、新たな「小さいパンダ」たちと交流を行う。参加者でありながら推進者である彼らは、より多くの日本の若者たちにPanda杯を普及する役割を担っている。

 

侵華日軍南京大屠殺遭難同胞紀念館の平和の象徴である「紫金草の少女」像の前で記念撮影

 6回の開催を迎えたコンクールの応募者数は延べ2500人を超え、中国に訪れたのは数百人を数える。Panda杯という小さなイベントは、ますます大きなエネルギーを放ち続けるだろう。

 

天津の周恩来鄧穎超記念館で訪中団に説明する筆者

 興味が交流への第一歩

「意識やきっかけがなければ、本当の真実は何も見えてこないのだ。それはつまり、『透明(メディア)の壁』が立っているにすぎない。向こうが見えているかのように見えて、手を伸ばせば壁があって触れることができなくなっている。意識しなければ、壁の存在にすら気付かない」。

 

受賞者の竹村幸太郎さんに自身と中国の40年近い物語を記録した自伝を贈る星屋秀幸氏

 大学生の田中歩佳さんは、2018年度のPanda杯受賞作品の中で「透明の壁」という言葉を使い、日本の若者が中国に出会った時の戸惑いを表した。コンクールが始まってから、多くの応募者の作品から同じような困惑が伝わってきた。中島さんは、日本の若者が中国を知る上で最大の障壁になっているのは「無関心」だと考える。

中国への「関心」を引き起こすにはどうすればいいか。昨年の受賞者でフリーライターの大森貴久さんは次のように考える。「中国に興味を持ったきっかけは思い出せないが、子どもの頃に近所の友達と遊ぶのに理由なんかなかったのと同じく、隣国である中国に関心を持つことに理由なんかいらない」。Panda杯がきっかけで初めて海外に出た高校生の種田涼音さんは、顔を突き合わせた交流をすることで、国籍の違いは何の隔たりにもならず、両国の若者には共通する多くの趣味や悩みがあることに気付いた。大森さんが言った通り、交流には多くの理由を必要とせず、交流への第一歩を踏み出すことこそ大事なのかもしれない。

 

 

若者同士の中日交流

 日本の若者の勇気ある第一歩を中国の若者は誠意をもって受け入れている。Panda杯受賞者訪中団が中国に出発する前、人民中国は青年交流に参加する中国人ボランティアを微信で募集したが、わずか10人の枠に300人近くの応募が殺到した。中国の若者も、日本の若者に劣らず交流に意欲的だ。北京外国語大学に在籍する崔鯤さんは、「この機会に日本語を勉強し、中国に対する日本の若者の考え方も知りたい」と交流する目的を話した。

 

南京城壁で歴史の傷痕や修復の記憶に触れる

 中島さんは、中国に行くことは中国を知るまたとない機会だと話す。書物から多くの知識を学ぶことができるとはいえ、実際に中国で学び、中国人と触れ合う中で知識を得ることは、中国を理解する上で最も意味がある。2度受賞している後藤翔さんは、中国から帰って来るたびに、自分なりに理解した中国や中日関係をより多くの日本人に伝えたいという意識がますます強くなっていると語った。

コンクールに投稿された文章や訪中の感想に目を通すと、中国とのエピソードは各人さまざまだが、一つの共通点があることに気付く。それは、皆が「善意」のまなざしで中国を優しく観察していることだ。日本女子大学に在籍する日暮美音さんは、中国にいる時に感じた人々の「善意」に対して、「私も自分なりの善意を中国にお返しし、これからも中国のことを熱心に学びたい」と話した。善意のまなざしで見ることで善意のお返しをもらい、より多くの善意の付き合いを生み出す。

「隣人と良い関係を結ぶ」という「善意」と「実際に行動して知識を得る」という「誠意」があれば、日本の若者はきっと「透明の壁」を乗り越えられるだろう。

 

成都の金沙遺跡博物館の「太陽神鳥」前で、パンダのぬいぐるみを持つ訪中団一行

 今年の受賞者は82日に中国を訪れ、北京で中国国際園芸博覧会を見学し、西安では栄華を誇った唐の時代の遺跡に触れる予定だ。中国の若者と一緒に、北京では胡同を巡り、故宮を観光し、西安では現在と過去のシルクロードが交わる場所に立ち、空海や阿倍仲麻呂の足跡と友好の精神をたどる。

若者には希望があり、交流には未来がある。習主席が中島さんへの返信の中で指摘したように、Panda杯がこれからも中日両国の青年の相互交流を深め、相互理解を進め、長きにわたる友情を育み、両国関係のより良い明日を切り開くために積極的な貢献を果たすイベントであることを願う。

 

人民中国インターネット版 2019年7月3日

 

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