中島大地:私が日中交流に関わる理由

   私は、いま「freebird」という学生団体に所属して、日中学生の交流活動に関わっています。その学生団体では、月に一回、中国語教室や中国料理体験イベント、川越横浜などの町を巡るイベントなどを開催して日中学生の交流を行っています。また2014年夏休みには、上海で11日間の日中学生交流合宿「ChinaTrip」を開催しました。その際には日本の関東、関西、中国の北京、上海から総勢40名の学生が集まり、交流しました。

  今回は、私がその活動に関わる理由を記します。

  もともと私は、王維の漢詩が好きでした。しかし、中国に対してそこまで関心を持っていませんでした。理解もしていませんでした。しかし、大学1年生の夏休み、天津に1カ月間留学した時、中国に対して興味を持ち始めました。そして、莫言、余華などの現代文学や、周傑倫、五月天などの流行音楽や、張芸謀、賈樟柯などの映画を手に取るようになりました。その後、偶然、友人に誘われて、日中交流に関わり始めました。

  交流の中では、本当にたくさんのことを学びました。

  まず強く感じたのは、中国から来た人たちの優しさです。交流の中で、偶然早稲田大学に通う中国人留学生と知り合いました。そして、雑司ヶ谷にある彼の家で手作りの中国料理をいただきました。その時、彼と、流行している中国音楽のことから、アメリカ映画の面白さ、これからの彼の人生計画、中国の将来まで語り合いました。彼は、私のために言葉を尽くして様々なことを説明してくれました。その時、私は優しさを感じて、同時に、私自身の中国に対する理解の浅さを理解しました。その後、たまたまバイトで中国人の社会人と知り合い、中国語を教わり始めました。そして、20131231日、暇を持て余していたという彼に火鍋を御馳走になり、カラオケで中国語の歌を歌いながら年を越しました。その時も、優しさを強く感じました。

  その後、私は出来る限り、中国から来た人たちの輪の中に溶け込み、その感覚を理解しようと努力しました。

  交流の中では、「中国」という言葉で、安易に中国をひとくくりにしてはいけない、と強く感じました。中国は、言うまでもなく、非常に広大です。そして、各々の地域には各々の言語があり、各々の文化があります。北京と上海と福建と広東は、様々な点において全く異なります。たとえば、言葉も一つではありません。私は、台湾に興味を持って、授業で福建語を学んでいますが、福建語は標準語とは発音の点で大きく異なります。広東人の友達から、少し広東語を教わりましたが、広東語も標準語とは大きく異なります。

  同時に、「中国人」という言葉で安易に中国人をまとめてはいけないということも深く理解しました。極めて当然のことです。しかし、いま、その当然のことが当然ではありません。よく日本のマスメディアでは「中国人は・・・である」というように、中国人をひとまとめにした文章が見られます。しかし、本当はそのような文章は無意味です。日本に悪い人もいれば良い人もいるのと同じように、中国にも様々な人がいます。

  最も大切なのは、個人を見ることです。何人かどうか、ということに囚われず、一人一人の目の前にいる人と向き合おうとすれば、自然と、分かり合うことができます。

  これまで関わってきた交流イベントは、本当に楽しいものでした。しかし、イベントを運営する中では日中交流の難しさも実感しました。とくに大きな問題だったのは、日中交流に対する日本人学生側の無関心です。中国といっても、興味がわかないという人がほとんどでした。あるいは「面白くなさそう」「よく分からない」という意見もよく聞きました。

  日本のマスメディアは、よく、中国の負の側面に言及します。とくに、政治や環境などの面で問題を抱えているということを強調します。あるいは、経済的な話題の中で、中国のことを事務的に取り上げます。だから、中国に対するマイナスなイメージや無関心が蔓延するのだと思います。

  しかし、隣国なのだから、決してお互いを無視し合うことはできません。

  国家の単位では交流が硬直していたとしても、個人の単位からより良い日中関係を築いていこうとすることが大切です。その際には、親しみやすい文化の話題から日中交流をはかっていけばよいのではないか、と私は考えています。たとえば、いっしょに料理をつくり、食べたら仲良くなることができます。あるいは、カラオケに行き、中国や日本の歌をいっしょに歌えば仲良くなることができます。楽しくて気軽な交流こそが全ての入口です。

  ただ、本当に細かい点にまで気を配り合い、様々な問題をともに深く考えていくためには、相手の言葉を理解することが必要になります。交流の上では、言語の差異が大きな壁だという意見も多く聞きます。日本語を学ぶ中国人留学生は大勢いますが、中国語をある程度理解することができる日本人は多くありません。大きな不均衡が存在しています。その言葉の問題を解決するのは容易ではありません。

  言語習得の上でまず大切なのは、相手のことを理解しようとする気持ちです。その気持ちを生み出すのは、偶然が生み出すかけがえのない人との出会いです。出会いは簡単につくりだすことができるものでもありません。しかし、だからこそ、出会いを作り出そうとすることは大切であり、必要です。これから 日中交流をさらに広げていくために、私は、周囲に出会いを生み出すために努力していきたいです。

 

 

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