教育の町からスマートシティーへ

 17年の中国10大科学技術ニュースのうち、合肥と関わりのあるものは三つあった。中国科学技術大学の潘建偉教授が率いるチームの、量子コンピューターと量子通信がその一つで、特に量子通信技術とその産業化は世界の先頭を走っている。

 BOEのような業界トップの企業が集まって構築する戦略的新興産業は合肥の経済成長を促す新たなエンジンとなりつつあるが、これも現地の豊富な科学技術イノベーションの資源と密接に関わっている。BOEの副総裁で、合肥地域総経理の張羽氏が取材に対し次のように紹介した。同社は中国科学技術大学などの大学と共同で、技術的難題のクリアとプロジェクトの開発を行っており、研究開発の投入額は業界平均水準の4倍に達し、昨年だけでも8000以上の特許を申請し、そのほとんどが発明特許だった。

 中国科学技術大学は先端科学とハイテクの教育研究をメインとし、中国でも有数の名門校だ。現在、合肥には56の大学があり、研究者が70万人以上おり、中国の四大教育拠点の一つに数えられている。17年1月、合肥総合的国家科学センターが承認を受けて設立され、合肥は上海に次ぐ中国2番目の総合的国家級科学中心地になった。

 豊かな人材資源を頼りに、合肥は大学や研究院との協力モデルの模索に乗り出し、相次いで中国科学技術大学先端技術研究院、合肥工業大学スマート製造研究院など十数カ所のハイテク研究プラットフォームを構築した。産業科学研究実用の協同効果は科学技術の成果の速やかなビジネス化につながった。昨年は、休日を除いて、平均で1日に1社の国家級ハイテク企業が誕生していた。

 科大訊飛(アイフライテック)社は、国際的な音声認識市場で、グーグルなどの大手業者と肩を並べるスマート音声人工知能専門の会社だ。1999年に中国科学技術大学博士課程在籍中の劉慶峰さんによって創設された。同社の人工知能体験コーナーで、筆者はさまざまなシチュエーションにおけるロボットの活躍を体験した。これらのロボットは聞き取り、話し、考えることができ、すでに銀行、病院、サービス業などで活用されている。「訊飛聴見」は同時通訳システムで、大型会議の際に、現場の発言をリアルタイムで文字化できる。また「訊飛翻訳機」は、日本語を含む33カ国語と中国語間の双方向翻訳に対応し、写真からでも文字を読み取り自動翻訳する機能もある。海外旅行の際、街頭の看板やレストランのメニュー、商品ラベルの写真を撮れば、すぐに翻訳され、外国語が分からなくても心配はない。スマホアプリの分野でいえば、「訊飛入力法」という中国語入力アプリの利用者数は累計で6億人を超えている。スマホに向かってしゃべると、スクリーンにリアルタイムで文字が表示され、正確率は98%以上を誇り、四川方言、広東方言など24種類の中国の方言認識にも対応している。

 

アプリ「訊飛聴見」では、リアルタイムの音声入力と日本語翻訳ができる(写真王漢平/人民中国)

 中国最大のスマート音声技術業者のアイフライテックを中心に、合肥は合肥ハイテク区スマート音声産業集積発展基地(中国ボイスバレー)を設立し、スマート音声産業拠点を構築した。今年8月31日の時点で、アイフライテックの「訊飛開放」というプラットフォームは、80万以上の開発者に向けて技術的サポートを提供している。

 最近、合肥は日本の川崎市、英国のケンブリッジ市と共に国際標準化機構(ISO)によって世界十大スマートコミュニティー試験都市に選ばれた。昨年12月、合肥では切符を売る係員が同乗する路線バスは廃止され、「インターネット+交通」のスタイルが全面的に展開され、スマホでQRコードを読み取るだけで乗車できるようになった。ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの先端情報技術を生かして、都市のスマート管理運営を実現し、合肥での仕事生活環境はますます良くなるだろう。

 美しい湖に臨み豊かな水に囲まれた合肥は、科学技術のイノベーションによって発展の奇跡を作り出している。合肥はすでに180以上の国地域と経済貿易関係を結んでいる。建設中の江淮運河が淮河、巣湖、長江をつなぎ、さらに長江を通じて国際水路につながると、長江デルタ都市群と中西部地域の発展における合肥の役割はいっそう重要になっていくはずだ。中国の基礎科学の発展を促すけん引役となる、国家科学センターの完成後、合肥はますます国際的影響力を持つ「イノベーションの町」になるだろう。

(写真提供合肥市政府新聞弁公室)

 

中国の五大淡水湖の一つで面積が770平方にも及ぶ巣湖

 
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